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【源泉、かけ流しブームの功罪】

 那須温泉には有名な鹿の湯がある。那須温泉の発祥の地でもあり、開湯したのは1300年前にさかのぼる。昔、傷を負った鹿がこの湯で傷を癒したことからこの名がつけられたという。とろりと白濁した湯は、PHが2.5もある強い酸性硫黄泉だ。鹿の湯には古びた木造の湯治場が建てられ、共同浴場として開放されていて、この湯を求めて全国から温泉ファンが集まってくる。
 私と村井君はこの鹿の湯を訪ね、鹿の湯を管理する室井さんに色々話を聞くことができた。
驚いたことに鹿の湯を訪れる客数は、この5年で5倍になり、年間15万人にのぼるという。小さな掘っ立て小屋といってもよいような湯治場に15万人という数はあまりに不自然でイメージが湧かなかったが、室井さんいわく「夏のピークシーズンには1日で1000人ものお客様が来られ、浴場は芋洗い状態になります」。

「ひなびた温泉場」と「芋洗い状態」、そのアンバランスに益々頭が混乱したが、これは最近の「源泉、かけ流しブーム」に影響されているという。「源泉、かけ流し」とは、湧き出した温泉に人の手を加えず、機械的な手段で循環使用などもせずにかけ流すことをいう。そんなことは温泉としてあたり前のように聞こえるかもしれないが、実は多くの温泉場で湯量が十分でなかったり、経済的な理由から湯を機械で循環させたり、地下水を加えて沸かし直したりすることが当たり前になっている。源泉をそのまま手を加えずかけ流すというのは、那須温泉のように豊かな湯量がある温泉場でなければできない相談なのである。
こうした問題を指摘し、源泉、かけ流しブームのきっかけとなったのが、松田忠徳氏の著作「これは温泉ではない」。今でも温泉関係の書籍ではAmazonなどではNo.1の売れ行きだ。
ごく最近の話題では、道後温泉が(もともと源泉、かけ流し)レジオネラ菌の繁殖を防ぐためとして県の条例に従って塩素を温泉に投入し、温泉ファンの失望をかった。この背景にあるのも源泉ブームによって大勢の人が殺到し、湯質を維持できなくなったという現実だ。鹿の湯の場合は殺菌力が強いため、今のところそうした問題は発生していない。

村井君、室井さん、そして今回のツアー企画の中心メンバーのひとり、那須高原ホテル「松川屋」の二代目、廣川専務と「鹿の湯」の今後についての話になった。実はこの鹿の湯を管理する会社は、ここから引き湯している周辺の14軒の旅館が株主となり、さまざまな問題を相談しながら決めているという。最近の客数の増加はうれしい事なのだが、反面でブームに乗っている怖さもある。なにしろ舒明天皇が開湯した1300年の歴史のある温泉だ。この5年のブームに舞い上がる気持ちはさらさら無い。

鹿の湯はホームページを開設していない。「そろそろ作っても良いのではないか」という私の問いに廣川さんの答えが印象的だった「秘湯は秘湯のままの方が良い気がして、あえてHPを開設していません」。
この情報過多の時代、あえて情報を出さないというのもマーケティング的にいえば正しい選択かもしれない。ただ、鹿の湯のサポーターからの情報はもっと発信すべきであろう。鹿の湯の価値を周りの人やファンが語ることで鹿の湯自体のブランドを構築していくことができるはず。その場合はこの湯の恩恵で長年、商売を続けてこられた14軒の旅館が中心となるべきだ。

                                          (カトラー)

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コメント

マーケティング言論とか「源泉、かけ流しブーム」うんぬんの前に著作権法を勉強してください。「鹿の湯」の写真は無断使用です。即刻、削除をお願いします。
「温泉の旅」管理人より

投稿: MA | 2006.11.12 00:17

MA様、ご要請に従って写真画像を削除させていただきました。リンクさせていただいたサイトの写真を紹介させていただいたつもりでしたが、ご不興をかったことをお詫びいたします。問題があれば、リンクもはずすようにいたします。

投稿: katoler | 2006.11.12 09:02

http://gongfu.com.ua - Visit us or die!

投稿: Alievopiero | 2010.02.26 05:03

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» 源泉かけ流しブームのデメリット [源泉かけながしネット]
源泉かけ流しという言葉がポピュラーになっていく反面、そのデメリットも確実に出てくる。 カトラーさんのkatolerのマーケティング言論より、trackbackさ... [続きを読む]

受信: 2004.05.15 23:35

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