足立区東和銀座商店街の試み
<足立区・東和銀座商店街>
日本のトップエグゼクティブたちが集まるオフィス街「丸の内」のことを取り上げたなら、ぜひとも言及しておかねばならない街がある。他でもない我が地元、足立区の東和銀座商店街である。土曜日に加藤敏春さんが主宰するエコミュニティ・ネットワークのフォーラムがあり参加したのだが、ゲストスピーカーとして東和銀座商店街の理事長、田中武夫さんが参加していて、直接話を聞く機会を得た。
商店街の凋落が叫ばれて久しいが、東和銀座商店街は今や、不況に苦しむ全国の商店街の注目の的になっている。実際に出向いてみると、東和銀座は、どこにでもあるような商店街で特別のことがあるようにも思えない。ところがそこに全国から視察が相次いでいる。そのわけは、ここが商店街のメンバーが協力してアムールトーワという株式会社をつくり、さまざまな地域向けのビジネス(コミュニティビジネス)に取り組み、成果を上げているからだ。
<株式会社「アモールトーワ」の事業内容>高齢者向け弁当宅配
学校給食づくり 小学校7校、中学校1校
直営の鮮魚店、パン屋
総合病院内の売店・レストラン経営
駅のショッピングモール内に自然食品店経営
株式会社だが、NPОと言っていいくらい、利益は地域に還元する経営方針。*設立の時点でNPOが認められていなかった
年間の売上げは、約4億円で利益も出ている。
これによって約130人の雇用も実現している。
東和銀座商店街の理事長、田中武夫さんの話によれば、最初に手がけたのは都立病院内でのレストラン経営だったそうだ。窓口になった行政の役人も商店街の中にさえ「本当にできるのか?」と疑問視する声が大きかった。しかし、田中さんの呼びかけに応じて商店街メンバーが出資金を持ち寄って株主となり、株主に配当はしない、商店街メンバー以外の株主は認めないという独特のルールを決めて、非営利目的の株式会社が出来上がった。今ならNPOを設立するところだろう。この株式会社アムールトーワが母体となって、その後さまざまな地域の仕事をてがけるようになったのだ。
独り住まいのご老人にお弁当を宅配する仕事を行政からの依頼もあり、引き受けた時には大赤字を覚悟していたが、そうした地域住民のための仕事を引き受ける仕事ぶりを見ていた近所の主婦たちが、日頃の仕出し弁当をアムールトーワに依頼するようになり、2年間で弁当宅配事業は黒字になったという。
商店街の魚屋やパン屋が経営不振から閉店してしまった時には、アムールトーワとして直営店を作り、歯抜けを防いだ。
「私たちの街の仕事は、私たちがやるべきだ。そうすれば利益は後からついてくる」
という田中さんの名言と信念を支えているのは、地域の人々の支持である。
足立区も捨てたモンじゃない。こうしたビジネスが全国の商店街に広がれば、「丸の内」のように地価が上がるようなことはないかも知れないが、地域のくらしは元気になるだろう。
(カトラー)
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