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地殻変動を始めたネット広告

大きな地殻変動は、常に小さな局面の変化から始まる。
木村剛氏が自身のblog「週刊!木村剛」で広告ビジネスの変化の兆しを検索リスティング広告の登場に見ているのは、慧眼である。

日本においても、2002年位からいわゆる「キーワード広告」と呼ばれる広告商品のサービスが始まっていると聞くが、これは例えば、ユーザーが「住宅」というキーワードで検索をかけると、「住宅」の検索結果の周囲にそのキーワードに関連したテキスト広告が表示されるというものである。これは、ユーザーが興味のあるキーワードと関連性のある広告が表示されるため、従来のバナー広告よりもクリック率が高いと言われている。
<週刊!木村剛より>

この種の広告手法が日本に登場したのは、アメリカのovertureが日本法人を設立してサービスを開始した2002年。この日本法人は設立後わずか10ヶ月で黒字化するなど急成長しているが、残念ながら日本法人としての売上は公表されていない。電通の「日本の広告費」のレポートにしてもインターネット広告費が前年比で140%まで伸びたということは報告されているが、その内訳についてはブラックボックスである。

米国のジュピターリサーチが米国のインターネット広告マーケットの状況についてレポートしている。2003年の有料リスティング広告市場は50%成長し、総額16億ドル規模に達すると予測している。
米国全体のインターネット広告費が63~64億ドル程度(2003年)と見られているから、その25%を占めたことになる。
日本でペイドサーチについての数字を公表しているのは、Yahoo! Japanのみだが、Yahoo!の第四半期売上の18.1%を占めたと報告されている。こうした数字と業界関係者の話などを総合して、カトラーとしての推測数字をあえて公開すれば、

①日本におけるペイドサーチ(検索キーワード広告)が、2003年のインターネット広告費に占めた割合は10~15%程度になると推測される。
②2004年は、この種の広告が日本でもさらに伸長を見せ、2割以上を占めることになるだろう。

そう見る理由は二つある。
第一には、木村氏も指摘するように、ペイドサーチは広告出稿側の広告費投下の常識を変えたからだ。
駅の看板広告からテレビのゴールデン枠まで、広告ビジネスの常識は、スペース(広告枠)を押さえるというスペースブローカー・モデルで成り立っている。バナー広告などインターネット広告に分類されるものでさえ、まず広告料を支払ってスペースを押さえるという点では、本質的なビジネスモデルは駅の看板広告と変わらない。
ペイドサーチが本質的に異なるのは、クリックに応じて課金するというクリック課金型モデルによって成り立っている点だ。これまでもクリック課金型モデルや成果報酬型モデルを採用するケースはあったが、一部の新興のネットメディアに限られ、全体の流れになることはなかった。大手検索サイトやメディア系のニュースサイトなどはこうした成果報酬モデルを拒否していたのだが、Yahoo! やGoogleが参入したことで流れが変わった。米国でも早晩、ペイドサーチがインターネット広告費全体に占める割合は5割を超えるだろう。その瞬間、インターネットには「クリック課金や成果報酬型」で広告費を投下することの方が「標準化」する。
第二には、blogの成長である。ネットレイティング社が最近公表したレポートでは、blogの読者は2003年後半から急増し、340万人に達したと見られている。わたしの過去のレポート「blogの山は宝の山?」でも取り上げたように、米国のblogサイトの草分け的存在BROGGERをGoogleが買収した理由の一つは、現在サービスを開始しているAd Senesと呼ばれるコンテンツ・マッチ型のキーワード広告を配信するねらいが存在する。個人のblogやホームページの内容を自動的に読み取り、その内容とマッチした商品のキーワード広告を配信する。カトラーのこのサイトでもAd Senseを貼っているが、その内容とのマッチングの精度はなかなかのものだ。広告料の一部がblogの開設者に入る仕組みになっていることからコンテンツ・マッチ型のキーワード広告を掲出するサイトも拡大するだろう。つまり、日本のブログユーザー・読者が急増することはそのままキーワード広告のビジネス機会が拡大することを意味する。

こうした新手の広告手法が台頭していることの意味を「とるに足りない現象」と過小評価している向きが案外多い(特に業界内)ことも承知している。もちろん大新聞や大テレビの広告がそのことによって世の中から無くなってしまうことなどはあり得ない。
重要なのは、メディア企業や大手広告会社など一部の人々に握られていた特権がインターネットによって風穴があけられ、個人が自由に情報を発信したり、広告が掲載できるようになったという事実だ。その風穴から流れ込んでくる新しい空気に、可能性を感じるか怖れを感じるかは、それぞれが置かれた立場でさまざまだろう。

地殻変動につながる変化は間違いなく始まっている。

(カトラー)

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