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GoogleのGmailとプライバシー問題あるいは個人認証ビジネスの可能性

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Googleが米国でサービス開始をアナウンスしたGmailに対して、プライバシー上の問題を指摘する声が上がった。
Gmailは、無料のWebメールサービスだが、既にキーワード広告のAdsense(アドセンス)で実用化しているコンテキスト解析の技術を活用して、登録ユーザーのメール内容を自動的に解析して、それにマッチした広告メッセージを配信するというものだ。Gmailの登録ユーザーは、この広告配信サービスを承諾すれば、1ギガバイトのメール用の専用データスペースが無償で提供される。

米国のプライバシー保護団体が噛みついたのは、個人のメール内容をスキャニングするということが、プライバシー情報の流出や不正な使用につながる可能性があると考えたからだ。Googleは、こうした反応に当初とまどいを見せていたが、コンテキストのスキャニングと解析は、自動的に行われるもので、いかなる個人データの蓄積も行わないこと、また、広告主など、第3者にGmailユーザーの登録データを提供することなどもありえないと反論した。

そもそも、現状はβ版を約1000人に限定してテストしている段階で、Gmailが一体どのようなサービスなのかわからない状態にある。しかし、このβ版のテストプログラムに参加したITコラムニストなどオピニオンリーダーからは、Googleににっとっては好意的な、むしろ擁護する形でのコメントが出始めている。
Washington post が配信するTechNews.comの有名なコラムニストLeslie Walkerのコメントなどがそうした擁護論の代表的なものだろう。

カトラーとしても、この話を聞いた時には、明らかにプライバシー保護団体の過剰反応に思えた。コンテキストの解析プロセスには、人の目が入ることはなく、瞬時に処理され、しかも解析プロセスのデータは蓄積されることはない。ロボット技術によってスキャニングされるということで、多少気持ち悪い気はするが、そもそも、そうしたことが嫌ならサービスに参加しなければ良いと考えられた。

しかし、何日かしてSF的妄想が頭をもたげてきた。
ひょっとすると近未来のプライバシー問題というのは、こうしたGmailのような洗練されたITサービスに取り込まれること、それ自体によって生じてくるのかもしれない・・と思いはじめたのだ。

個人情報やプライバシー保護の問題は、日増しに大きなプレッシャーになってきている。Gmailを問題にする前に、カード会社に蓄積された個人情報やAmazonなどECサイトなどを利用した事によって吸い取られている個人の購買履歴データや嗜好に関する情報などを野放図に利用させていることの方が、よほど問題だという指摘もある。同窓会名簿などが出回って、しつこい勧誘電話などがかかってきて嫌な思いをした経験が誰でもあると思うが、こうした問題に対して、これまで日本人は比較的寛容であったといえよう。しかし、ヤフーBBをはじめ、頻発する個人情報の流出問題などをきっかけに、鈍感だった日本の人々もさすがに声を上げ始めている。デジタル社会では、いったん流出した個人の生データは複製され、際限なくばらまかれてしまう。いったんそうした事件が起きると、その影響範囲はとんでもなく大きくなることに皆が気づき始めているのだ。

こうした事件が結果としてもたらすのは、個人の生データの徹底した秘匿である。デジタル社会の危険性を理解した人々は、住基データからAmazonや楽天での買い物に至るまで、個人データの提供を拒み始めるかも知れない。しかし、問題は、現代のような情報社会では、個人データを秘匿したままでは、ネットワークの恩恵を得られないという点にある。

広がる個人認証ビジネスの可能性

そこで、ビジネスとして大きな可能性があると思われるのが、「個人認証ビジネス」である。
平たくいえば、個人の発意による「国民背番号番号制」である。徹底的なセキュリティー管理と情報管理を行うことを前提に、企業もしくは団体が、個人の認証を行い、コード(番号が嫌ならペンネームでも良い)を発行する。そのサービスに参加した個人は、そのコードネームを使って、ネットワーク上の全ての登録、決済などを行うことができ、しかも個人の生データは、完全に守ることができる。この場合、個々のEC事業者やカード会社などは、この個人認証データベースに必要な個人データを照会することになる。そんな面倒なことをわざわざする事業者側がいるのかといえば、彼らにとってもこうした一元管理された外部の個人情報データベースを利用する大きなメリットがあるのだ。というのも、個人情報の管理コストは年々増大するばかりで、そうしたコスト負担が問題になってきているからだ。
さらに問題なのは、いったん管理に失敗して情報が流出した場合、そこで生じる賠償責任やコストによって、企業の存続さえ危うくさせるリスクが生じることだ。ヤフーBBのケースでは、情報が流出した顧客に対して、500円の郵便為替を「お詫びのしるし」に送ることでお茶を濁そうとしているが、一部ではそうしたソフトバンク側の対応に納得せず、訴訟を準備している動きも出ている。
仮に500円ではなくて、1万円を払えというような判決でも出たら、ソフトバンクグループ自体の存続に関わってくるだろう。企業側もこうした巨大なリスクにもう耐えられなくなっている。

Googleは、インターネット上の全てのWebページをスキャニングし、一方でGmailのサービス開始によって膨大な個人情報を蓄積しようとしている。この蓄積された個人情報とネット上の全ての情報を得意のロボット解析技術によって仲介していくとすれば、近い将来、Googleは個人認証ビジネスの展開にとって最もアドバーンテジのある位置に立つことになるかもしれない。
もっとSF風に言えば、近未来世界では、我々はGoogleという知性体に、我々の個人情報をゆだねれば、日常的な物事の全てがスムーズに進む世界だって想定可能だ。
蓄積されたラブレターを解析して、タイミング良く結婚式場の案内情報が届き、電子政府に離婚届けをメールすれば、次の結婚相手の候補写真が待ってましたとばかりにパソコンモニターに現れる。年をとって癌に倒れ、余命が3ヶ月だと家族が親族の誰かに連絡すれば、葬儀屋が玄関口に見積もりにやってきて粛々と準備が進む・・そんな便利な世界が、目の前まで来ている。

木村剛氏の「週刊!木村剛」に、自分のプライバシーをマスコミや家族に対しても一切公開しないベンチャー経営者の話が紹介されている。「ここまでするものか?」と最初は怪訝に思ったが、プライバシーというものを自分が自分であることを手触りをもって実感できる情報と定義すれば、そうした私という人間の生の情報は、ネット社会のマトリックス世界に取り込まれることでどんどん稀薄になってしまうような気もする。ちょうど、写真を撮られると魂まで抜き取られてしまうと考えた未開の人々のように。

本物のプライバシーを守るという発想に立つなら、ネットも電波も届かない山奥で隠遁生活でも送らないといけないのかも知れない。そう考えると、つくづく嫌な時代になったものだと思ってしまう。

(カトラー)

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