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「日光」は世界ブランドとして再生すべし

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日光の元気がない。日光だけでなく、高度成長期には団体客で溢れかえった全国の温泉場に閑古鳥が鳴いており、地方経済の凋落ぶりを象徴する風景になっている。木村剛氏の「週刊!木村剛」でもこうした状況について取り上げたJUKE BLOGさんの記事が紹介されていた。


私がこのブログをはじめた今年の3月に、那須温泉の地域活性化を手伝っているKRINGLEの村井君に誘われて「那須高原まったり温泉バスツアー」という企画に飛び入り参加したことがあった。シティリビングというOL向けのフリーペーパーとタイアップして、毎週金曜日の夜に東京からOLを乗せたツアーバスを運行させて、彼女たちを送り込み、那須温泉の良さを知ってもらおうという企画だ。偶然のイタズラによって、望外にも彼女たちと混浴させていただくチャンスにめぐり会うなど、カトラーとしては大変印象深い経験をさせてもらったが、もう一つ強く印象に残ったのが、那須温泉の旅館経営者の人々が一致協力してこの企画に関わり、奮闘努力されていた姿だ。

那須温泉も他の温泉場同様、国内の観光客の減少に悩んできた。しかし、さまざまな試行錯誤の中からこうしたメディアとタイアップした独自企画や、「鹿の湯」という那須温泉のルーツともいうべき源泉の「ブランディング」に取り組むといった新しい気運が生まれつつある。しかし、村井君によれば、同じ栃木県下の温泉街だが、日光や鬼怒川では、再生戦略が未だ描けずにいるとのことだ。正確に言うと、地域としてまとまった再生戦略を描く意欲、または人材がいないことが一番の問題らしい。

世界遺産認定は千載一遇のチャンス

日光には、今、再生に向けた千載一遇のチャンスが巡って来ていると思う。
ひとつには、東照宮をはじめとする日光の社寺が世界遺産に認定されたということだ。認定を受けたのは確か5年前と記憶するが、その後、このことによって地元が活性化に向かった、もしくは活性化のために地元として具体的に動いたという話を聞かない。世界遺産に認定されても温泉の宴会客は増えないぐらいにしか思っていないのかも知れないが、そうだとすればトンデモなくもったいない話である。しょーもない記念イベントなんかはたぶんやったのだろうが、先ず何よりも世界遺産というものが「世界ブランド」であることを忘れてもらっては困る。日光は、世界からお客を集める努力を本気になってやったことがあるのだろうか?

チャンスが巡って来ているといったのには、もうひとつ理由がある。小泉内閣が提唱し、国策として推進されている「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の開始である。このキャンペーンが始まった2003年を「訪日ツーリズム元年」と位置付け、戦略的に外国人旅行者の訪日を促進するという。まさに、日光の「世界遺産」認定は、こうした流れの中でも大きな目玉として位置づけられるべき事柄である。

ところが実態はどうだろうか?日光市のホームページには、確かに誇らしげに世界遺産に認定された事が掲げられているのだが、海外の人々がどのように日光を訪れたら良いのか、どこに泊まれば良いのか?そうした実際的な事柄には一言も触れられていない。観光協会のホームページにしても同様だ。本心では、外国人客などには来て欲しくないのかも知れない。もし、そうした躊躇を持ちながら、一方で地元の活性化や再生ということを口にしているのなら、大いに疑問を呈さざるを得ない。

澤の屋に学ぶこと

谷中に「澤の屋」という旅館がある。
小さな旅館だが、外国の人々には大変な知名度を持っている。もともとはどこにでもある普通の旅館だったが、周辺にビジネスホテルなどが増加してお客が激減し、経営が立ち行かなくなった。そこでご主人は、澤の屋を外国人向けの旅館として打ち出すことを決断する。といっても、外国人向けに設備をホテル仕様にしたり、特別のサービスを用意したわけではない。外国人客を受け入れることを表明し、海外からの客を心をつくしてもてなすこと(ホスピタリティ)を徹底しただけなのだ。

私たちだってそうだが、海外に出かけた際にその国や土地の宿に泊まって見たいという気持ちはある。しかし、そうした宿泊施設が、どこにあり、どう手配したらよいのか、言葉の問題や料金はどうなっているのか、など色々不安があるために見送ってしまう。海外の人々も同じだ。澤の屋のような日本風の旅館に泊まって見たいという気持ちはあるはずだ、料金が安ければなおさらのこと、こうした点に澤の屋のご主人は気がつき、英文のホームページを立ち上げ外国人客の受け入れを始めたのだ。もちろん色々な文化的なギャップからくる行き違いやトラブル、たくさんの笑い話が生まれたようだが、今では宿泊客の90%が外国人で、外国人向けのガイドブックなどにも必ず紹介される「有名旅館」になっている。

澤の屋のご主人が、自分のホームページでエッセーを紹介している。これが大変おもしろくてためになる。

「情報が一番のサービス」

外国のお客さんは、実にいろいろな質問をしてきます。
「関東大震災の資料はどこにありますか。」
「柔道の嘉納治五郎の墓はどこですか。」
「歌舞伎の一幕見をしたいのですが。」
「相撲の練習風景が見れますか。」に始まって、
「日本人と碁を打ちたいのですが。」
「空手道場で練習してみたいのですが。」
「両替の利率の良い銀行はどこですか。」と続きます。

 なかには
 「主人は寿司、私はうどんを食べたいのですが、一諸に注文できるレストランがありますか」などという、ほほえましいものもあります。
 最初はトラベルフオンの電話番号を教えていましたが、同じ質問を、いろいろな人が尋ねてきます。そこで、自分でも情報の整理をはじめましたら、いつの間にか、スクラップが六冊にもなりました。
そうしたら、外国のお客さんに「この旅館の一番のサ-ビスは、情報が揃っていることだ。」といわれました。

私は宿にとって一番重要なのはホスピタリティだと思っている。サービスという言葉には、設備の善し悪しなども含まれるが、ホスピタリティとはむしろ心の問題である。この点についても素晴らしいことを述べておられる。
日光の観光産業の関係者の皆さんにもぜひこの文章を読んでいただき、日光を世界ブランドとして打ち出していくための弾みと励みにしてもらいたい。
客室数12室、そのうちバス・トイレがついた部屋は2部屋しかない小さな旅館の主人が、今や世界の人々から慕われる有名旅館のオーナーになっているのだ。日光の皆さんにやってできないはずはない。

「ホスピタリティは疲れない」

日本のお客さまの減少で、外国のお客さまを受け入れて二十年になります。
毎日、忙しい日を送っていますが、そんんなに疲れないことに気がつきました。
 そんな時、立教の大学院の幸田さんが、私どもが外国のお客さまからいただいた礼状を分析してくれました。礼状の「サンキユー、フオー」のあとに続く言葉が何んであるか調べたら「ホスピタリテイ」と「カインドネス」が多く、「サービス」という言葉がほとんどなかったそうです。
 外国のお客さまに満足してもらえなかったら廃業と覚悟していまいしたので一生懸命に対応してきました。でもそれがサービスでなくホスピタリテイと受け取られていたとは、私には思いがけないことでした。
 立教の前田先生の、サービスは奴隷が語源で、主人を満足させる滅私奉公で、あらゆる要求に応じる上下関係からなり立っている。ホスピタリテイは病院のホスピタルからきているので、看護婦さんが患者さんをもてなすような待遇で立場は対等ですという話を思い出しました。
 外国のお客さまは、宿泊料の中に人的サービスは入っていないと考えているようで、そんなに無理なことは求められません。「貴方は、たまたま宿の主人、私はここに泊りに来た客で立場は対等」と威張ることもありません。
 特に、欧米の人はほめ上手です。「グッド」「パーフエクトリー」など、たくさんのほめ言葉を言ってくれます。そして「また来るよ」と言って何回も来てくださったり、友達を紹介してくれます。まるでお客さまに喜ばされて商売をさせてもらっているようです。

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Comments

はじめまして。JUKEです。
東京からほとんどの活動を日光に移してだいぶたちます。
ご指摘のように世界遺産認定がほとんど表面上は効果をもたらしていない現状です。

私もまだまだよそもの扱いで声を出しても届かないさびしい現状もありますが、地元でもっとも大きなホテル王とはコーヒーを飲みながら良く話し有っています。

ずっと私が主張しているのは海外からの観光客の集客戦略の増強です。

日光は現在では日本でのかってのブランドイメージを失ってしましましたが、私が見るところじわじわと海外からの観光客が増加しているのを肌で感じます。

しかし金屋ホテルにはインターネット接続のPCが無いという事が1例ですが受け入れる日光サイドにはその準備が出来ていません。

まったくもったいないの一言です。

日光では1年中なんらかの観光イベントが行われているのですが、私でさえそのほとんどの情報が伝わって来ないのが現状です。

ばらばらでイベントをやみくもに連発するんでまとまりがない、、、うまく表現できないんですがベクトルが一方向に集約されてないというのかな??

全体をどの方向に持ってゆくのかがはっきりと示されていないので結局変われないというところです。

Posted by: JUKE_NIKKO | 2004.05.24 at 01:19 PM

JUKEさんコメントありがとうございます。それと、「週刊!木村剛」でのBLOG of The weekの受賞、おめでとうございます!

私は長年、東武伊勢崎線沿線に住んで、「けごん」や「きぬ」といった東武の特急電車を見て育ったもので、日光には特別な親しみを感じています。一度、鬼怒川温泉に家族旅行をしたことがあるのですが、ここは家族で来る所じゃないねと娘たちに言われたりして、その後はなかなか足が向かず、個人的には寂しい気がしています。

金谷ホテルなどは素晴らしいホテルなので、おっしゃる通り、こうした所が核となって、海外客の誘致戦略を進めるべきでしょう。澤の屋さんの例でもわかるように、設備を改修する必要などないのです。要は、やる気ともてなしの心(ホスピタリティ)が問題だと思います。
記事中に登場する、村井さんはこうした海外客の誘致なども積極的に手掛けています。今、マレーシアに行っていますが、帰ってきたらコメントしてもらいましょう。

カトラー

Posted by: katoler | 2004.05.24 at 07:16 PM

カトラーさん、ご紹介ありがとうございます。
読者のみんさん、はじめまして。
PRマーケティングコンサルタントをしております、クリングルの村井と申します。
栃木の温泉地域は、まもなく、産業再生機構やRCCが大鉈をふりはじめます。基本的に、観光にかかわる多くの産業が、『家業』であるということが、改善が進まない理由の根源であると考えています。言い換えれば、跡継ぎではあるが、経営者としての資質を必ず持つとはかぎらないということです。
先日、観光にかかわる旅館や企業のオーナーが集まる会に招かれました。そこに参加して思ったことは、『なんてレイジーな人々なんだろう・・・。』ということです。
どんなにイベントや広告を打っても、地域を購買してもらえることとは別だということがまったく理解されていません。
その割に、東京で花や牛乳を配ったりすることにはお金を使うんですよね。毎日「 うーん・・・。」 という感じです。ターゲットを設定し、何が必要なのか、何が独自性なのかをしっかりと考えて、各自の戦略や、イベントを計画してもらいたいですね。特にイベントに関しては、費用対効果の分析はまったくされていないといっていいほどです。

那須地域はまだまだですが、ちょっと戦略チックなものを構築しています。インバウンドに対しても、注力する地域を選定するために、しっかりと現地調査を行いました。私がシャングリラホテルのPRをお手伝いしていることもあり、アジア地域のトラベル事情に精通していたということもありますが、シンガポールと関係強化することになりました。栃木県の観光協会は、中国や台湾に視察に行き、中国市場を他業種同様ねらっているようですが、台湾のエージェントは、非常に危険。チャイニーズオーナーのシャングリラグループでさえ、3週間前にフルデポジットしないと、予約は破棄されるしくみになっています。それぐらい、危険なんです。なのに、日本のあちこちの観光地が、台湾や中国に営業しているんです・・。那須は、インバウンドの経験もないので、市場が大きいが、リスクが大きい台湾、中国市場ではなく、国民の海外旅行経験率が高く、高額な旅行商品の販売が可能で、ビジネス的契約関係がしっかりできる規制の国『シンガポール』を選定したわけです。前那須観光協会長の五十嵐さんが、英語が堪能ということもあり、自ら、自腹でシンガポールに営業にでかけ、JALグループのクリエイティブツアーとの提携にこぎつけました。シンガポールの新聞に特集記事を掲載してもらったり、オリジナルツアーパンフレットを作ってもらったりと、経費を使わず、シンガポール国内でのプロモーションに成功しています。今年から団体がきはじめていますよ。

初登場なのに、だらだらと書いてしまいすみません・・・。
これからもよろしくお願いします。

Posted by: murai | 2004.06.02 at 02:44 PM

村井様,はじめまして池田と申します。
この春に旅館業専門のコンサルを立ち上げた者です。
旅館運営全般、特に人材教育、営業、改善を得意としています。
一年前の投稿を読みまして、村井様の専門分野の解析に共感を覚えました。
今、観光業をリードしてきた熱海、鬼怒川、飯坂の凋落に落胆しています。
特に鬼怒川、塩原地区は産再機、整回機により再生を図ろうとしていますが甚だ心もとない気がしてなりません。
つい先日あさやのリニューアルプレビューパーテーが放送され、社長が陣頭指揮を執っている様子が流れていました。大規模旅館ほど組織を活用しなければ業務遂行がスムーズに行かなくなるのに、その場限りの対応では先が見えてきました。
叉、私の住んでいる千葉にリニューアルオープン広告掲載があったのは約10日前で内容は意味不明、枠が小さい、案の定、後日の情報では当日は六割のいりこみだったとか。
社長が陣頭指揮を執るよりは人材教育が先ではとおもいました。広告についても戦略戦術が全く感じられません。通常リニューアルオープンの場合は、人も金もあらゆるところつぎ込んで突っ走り、お祭り感覚でもりあげ集客を図り経営の基礎を作らなければならないのですが。
村井様は専門の立場からみていかがでしょうか。ご意見を賜れれば幸いです。

Posted by: 池田旅館総合研究所 池田敏春 | 2005.07.08 at 02:46 PM

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