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日本の住宅の玄関ドアに問題あり

miwa_piking.jpg

前回の記事に引き続き、セキュリティの話題。

ピッキング被害の本当の原因

ピッキング被害が社会問題化しているが、その真の原因についてはあまり知られていない。
実は、日本の住宅の玄関ドアの7~8割は美和ロックという企業の鍵で占められている。さながら、パソコンのWindowsのようなものである。同じ構造の鍵が多いということは、その鍵を破ろうとする泥棒も必然的に多くなる。Windowsがハッカーたちに狙われるのと同じ理由だ。

どうして1社の鍵がこんなに寡占的に市場を占めることになったのか、不思議に思って調べてみた。わかったことは、この高シェアは美和ロックのマーケティングが優れていたためではなかった。確かに専業メーカーとして美和ロックは優れた技術力や販売網を持っているが、それだけではこれだけの高シェアを説明できない。
呆れたことに、この突出した高シェアの理由とは、ユーザーが自分の家のドアにどんな鍵を付けるか全く無頓着であったからというものだった。自分の家のドアの鍵がどこのメーカーのものか意識していた、もしくは取り付ける鍵の種類やブランドを自分で指定していた日本人はどれほどいただろうか?そこまで鍵にこだわる施主はまず皆無といってもよいだろう。ユーザーから特に指定がないので、建設会社や工務店の設計家は、美和ロックの鍵を図面に書き込んだ。彼らも鍵に頭を使うことなど面倒なことと考えたのだ。結果、日本の家の扉には、みんな美和ロックの鍵が取り付けられ、ピッキング犯にとっては大変仕事がやりやすい環境を提供してしまった。

誤解してほしくないのは、ピッキング被害の増大の責任が、美和ロックという企業にあるといっているのではないことだ。根本の原因は、美和ロックの鍵を寡占的にさせたことの背景に存在した、施工者や住宅ユーザーのセキュリティに対する無関心である。

ドアの蝶番(ちょうつがい)、外開きの問題

door.bmp

日本の家の玄関回りには、もう一つセキュリティ上の大きな問題がある。ドアの開き方である。
思い返してほしいのだが、日本のほとんどの住宅の玄関ドアは、外に向かって開く外開きになっている。実は、これは欧米の場合と逆だ。なぜ逆なのかといえば、日本の住宅では玄関スペースが狭い。また、靴を脱ぐ習慣なので、ドアを開けた所の玄関の土間には脱がれた靴が並んでいるわけで、もしそのドアが欧米のように内開きだとすると邪魔になってしまうからだ。
外開きのドアが防犯上なぜ問題かといえば、ドアの蝶番が外部に露出してしまうからだ。こうしたドアが取り付けられた日本の住宅の玄関は、外からこの蝶番を壊してしまえば、ほぼ100%侵入することが可能になってしまう。鍵をターゲットにしたピッキングの方が、目立たず楽なわけだから、蝶番を壊すような乱暴な手口の泥棒は今のところあまり見ないようだが、ピッキング防止対応の鍵が普及すれば、こうした乱暴なやり方が逆に増えてくる可能性だってある。

侵入者をシャットアウトするはずの扉が、このようにセキュリティー上は穴だらけの代物というのは、かなり問題と思われるが、それで成り立ってきたという所もナントモ日本的である。

開けやすい錠前に、壊しやすい蝶番、日本では泥棒に対してのバリアフリーが、まず普及してしまったようだ。

この項続く


(カトラー)

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コメント

こんにちわ、はじめまして。ひろムーと申します。
とても有名なサイト様のところなのでコメントを書くの
がドキドキ以上にガクブルなのですが、前回、今回と
セキュリティーについてのお話にとても共感いたしました
のでつらつらと…
約2年くらい前に学校のプレゼンテーションで
セキュリティーについて発表したのですが、やはり
同じような問題点にぶつかりました。
そこで一般的にピッキングが難しいとされる鍵についても
調べたところそんなに大差なく簡単に解除されてしまう物
が多いことを知りびっくりしたのを覚えております。
ピッキングはプロがやれば10秒もかからないらしいですね(汗
結局進入を防ぐには複数の処置をしないと安全とは言えない
という結論でした…

セキュリティーが高まれば、犯罪手口も巧妙になってしまい、
技術だけではイタチゴッコな関係は崩れないのでしょうね☆

おっしゃられる通り一人一人の意識を変えていかないと
いけないとこのヘタレなりに感じさせていただきました☆

本来家の間隔が狭い日本ですし、意識が変われば近所の方々
が気づきお互いに協力しあえる関係ができていくはずです
よね…それが他力本願というものになるのかな…?

よくわからない文になってしまい申し訳ございません(汗
不適切であれば削除お願い致します、お邪魔致しました☆

投稿: ひろムー | 2004.06.12 15:48

ひろムーさんコメントありがとうございます。
鍵なんかしなくても安心して暮らせた日本は、海外の人々から見ると本当に羨ましがられていたのですが、このごろはどうもおかしくなって、どこにでもある「フツーの国」になってしまいそうですね。
ビジネス的にいえば、セキュリティの市場は今後、大きなビジネスチャンスがあるとか言われて、色々な話が私のところにも入ってきていますが、結局、日本のイイトコがどんどん失われていくことなのねと思うと複雑な心境です。
今日もテレビで畑のメロンやサクランボが盗まれたというニュースが流れていました。昔から泥棒はいましたが、とっていいものと悪いものの区別はもう少しわきまえていたような気がします。
田舎までこのようなことになってしまうと、ちょっと救いがなくなります。畑には鍵はかけられません。監視カメラでも設置しようということになるのでしょうか。それはそれでカメラメーカーにとってのビジネスチャンスかも知れませんが・・・要は日本人の心が問題なのでしょう。

こうした安全の崩壊は、残念ながら今後も進むことは間違いありません。でも、100%悲観的に考えず、こうした事の中にも前向きにとらえる要素があるとすれば、何とかしようよ!と人々が協力しあう可能性が逆に生まれることだと思います。セキュリティの問題によって生じた皆の危機意識が、地域の人々のつながりを再生させることだったあると考えるのはちょっと甘いかな?

投稿: カトラー | 2004.06.13 01:28

お返事ありがとうございます☆
>結局、日本のイイトコがどんどん失われていくことなのね
コメントを読ませていただいて気付きましたが、そういえば
昔はカギをしなくてもよかったんですよね。

>とっていいものと悪いものの区別は
>もう少しわきまえていたような気がします。
ちょっと話が大きなものになってしまうのかもしれませんが
そういったことが殺人などにも通じているのかなとも感じま
した。。。絶対に奪ってはいけないものがやはり人の命だと
思っておりますので、今の日本でのいい、悪いの考えが根底
から変化してしまっているのかと感じました。

当たり前のことなのですが、世の中「変っていくべきもの」
「変ってはいけないもの」があると思います。
その後者が今、大きく変っていっているのですね…

>何とかしようよ!と人々が協力しあう可能性が
>逆に生まれることだと思います。
>地域の人々のつながりを再生させることだったあると
>考えるのはちょっと甘いかな?
いえ、やはり可能性は高まると自分も思います。
ただ、個人的にはこの現在の仕事の多忙さがゆとりを奪い、
地域とのつながりを阻んでいるようにも感じます。
現在毎月残業150時間程度の日々が続いておりますが
やはり近所の方と話をする機会がまったくありません(苦笑
以前ゆとり教育を唱える声が多数ありましたが、
大人にゆとりがいるのでしょうか?(汗

こんなことを書いてしまうと偽善っぽくなってしまうのかも
しれないのですが、ちゃんとした信頼関係が築ける社会にな
るといいですね。

コメントのお返事が嬉しかったため
また長々と申し訳ございません…(汗

最後になってしまいましたが自分のBLOGの方に
リンクを貼らせていただいてよろしいでしょうか?

投稿: ひろムー | 2004.06.14 10:59

ひろムーさん
再コメントありがとうございます。
ネット上のリンクは基本的にフリーと考えていますのでご随意にどうぞ。今後ともよろしく!

投稿: カトラー | 2004.06.15 13:25

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