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懲りない人々、シリコンバレーの魂

 私が初めてシリコンバレーに行ったのは、2000年の12月のことだった。その時期は、ちょうど米国のインターネット・バブルの熱狂が頂点にまで達し、甘い砂糖菓子が崩れるように自壊過程に入ったことが鮮明になり始めていた頃に当たる。
ベンチャーキャピタリストやITインダストリーの面々のコミュニティーで一世を風靡した雑誌「Red Herring」のパブリッシャーだったTony Perkinsが「インターネットバブル」という本を著し、インターネット関連株は全部売り払えと警告を発していたが、その後のバブルの崩壊の激しさは、彼の見通しをも上回り、Red Herring自体も休刊に追い込まれる結果となった。

新日本監査法人が主催した「ベンチャー企業のための株式公開セミナー」でBlueshift Global Patnersの渡辺千賀さんの講演があるというので参加した。2000年にシリコンバレーに渡り、日本の大企業とシリコンバレーのベンチャーを橋渡しするBlueshift Global Patnersというコンサル会社を立ち上げ、活躍されている渡辺さんのことは、渡辺さんのブログを通じて知っているだけだが、素晴らしい水準の記事を毎回アップされていて、楽しみにしている。渡辺さんのブログには、ちょっと見、夏木マリ風の写真もアップされているが、実物はさらにチャーミングで、カトラーとしてはすっかりファンになってしまった。今回の講演も、シリコンバレーの新しい状況が活き々と語られ、大変参考になった。

ベンチャー投資の復調が鮮明に

日本もそうした傾向を追随しつつあるが、米国のネットビジネスの世界ではEC関連企業が完全に復調し、それに伴ってベンチャー投資もバブル前の水準を上回るようになっているという。こうした状況をとらえて「バブルの痛手から立ち直った」などと日本のメディアなら表現するのだろうが、渡辺さんの話の中で特に印象に残ったのは、シリコンバレーの人々の姿勢は、バブル崩壊の前後で実は何も変わっていないという指摘だ。

巨額の投資が若いベンチャー経営者のビジネスアイデアに集まり、事業自体は赤字であるにも関わらず、派手なPR活動を展開して、長年、上場を夢見て、果たせずにいる経営者たちを尻目に、易々とIPOを遂げてしまうーそんなシリコンバレー的なIPOを果たしたベンチャーに、オールドエコノミーの人々からは舌打ちが聞こえ、バブルが飛んだ時には一斉に「それ見たことか」式の論評が加えられたものだ。日本でも土地バブルが飛んだ後には、悪者探しや自虐的ともいえるような日本(自己)バッシングが始まり、その後10年にわたって経済は停滞してしまったわけだが、それに比してシリコンバレーの回復力には驚くべきものがある。

 数々の伝説を生み出したシリコンバレー的な大胆な投資についても、過去に比べれば、多少変化しているものの基本的には健在で、Jazz Pharmaceuticals というバイオベンチャーなどは、たんにビジネスプランが存在するだけで実績は何も無いという状態にもかかわらず、300億円($250million)もの資金が集まったという。もっともIT系のベンチャーでは、事業実績が無かったり赤字の状態で資金集めをするというのは、もう無理のようだが、シリコンバレーの伝説は脈々と受け継がれているのだ。
 渡辺さんによれば、シリコンバレーの人々は、厳しい時期の最中にあっても全くめげるということを知らず、「うまくいかなかったのはたまたま運がなかっただけ」という、良い意味でのわりきと明るさがあるという。シリコンバレーには一定以上の能力やスキルをもった人材が集まり、切磋琢磨しているわけで、そうした中から見事成功を勝ち取っていく人々が、なかなか成功できない他の人々と何が本質的に違うかといえば、能力やパッションのような大きな差ではなく、結局は「運」ということになる。だから、諦めずにポジティブに動き続けることが重要で「懲りない人々」が、結局は勝つ。こうした話は、人生の明暗がはっきりと分かれるシリコンバレーという舞台だからこそ生まれてくるビジネス観かもしれない。

倒産の憂き目にあい、自殺するようなベンチャー経営者が未だに後を絶たない日本のことを考えると、思わずため息をついてしまった。


(カトラー)

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Comments

お越しいただきありがとうございました。
夏木マリですかぁ、でへへ、という感じですが、今後ともよろしくお願いします。

「シリコンバレーの人々は、厳しい時期の最中にあっても全くめげるということを知らず」
に関しましては、本当はめげているけど、体力で押し切る、というのが正しいかも。。。How are youと聞かれたら、死にそうであっても、いったんFineとかGreatとか答える国ですので。顔で笑って心で泣いて、という感じもちょっとあります。

そういえば、延期中と当日申し上げたSalesforce、今日無事に上場しましたね。

では

Posted by: chika | 2004.06.24 at 02:10 PM

はじめまして。本日カトラーさんのblogをはじめて拝見しました。私の書いておりますblogでも「大企業がイノベーションの担い手になりうるか?」という議論から日本、アメリカの起業事情の話になっており、起業のためのインフラが整っていない日本の状況が一因かと考えてます。
私もシリコンバレーに2000年に行きベンチャー数社と会ったことがあるんですが、良くもこんなビジネスモデルで会社立ち上げたな・・・と思える会社も含めて極めて明るく元気だったのを覚えてます。

Posted by: manutd04 | 2004.07.22 at 05:51 PM

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Tracked on 2007.04.08 at 11:10 PM

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