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個人投資家の時代?丸石自転車事件の波紋

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丸の内のスタバで昼休み時、ひとりでお茶をしていたら、隣の席に居たOLの二人組が「株取引」の話をはじめた。ネットトレードで先輩格のOLが、もう一人にネット証券会社の各社の違いについて講釈をしている。先輩格の方は、昨年末のボーナス時期から、ネットトレードを始め、どれだけ儲けたかは「ウフフ」といってはぐらかしていたけれど、仲間うちでちょっと話題になるくらいの線までいっているらしい。

日本の証券市場における個人投資家層の拡大の必要性が叫ばれて久しい。90年代のバブル経済の時代には、右肩上がりの株価を背景に、個人もバブル経済の余録にあずかろうと市場に参加したことがあったが、結局はバブルが飛んで、手痛いしっぺ返しを受けた。「バブルが飛んだから損をした」と個人投資家の多くは思っているが、実はそうではない。その場合も外国人投資家に象徴される「プロ」連中は、しっかりと売り抜いて儲けていた。日本の証券市場で繰り返されてきたのは、事情のわかったプロの連中が、甘い期待に吸い寄せられ、遅れてのこのこやってきた個人投資家層をカモにして、逃げ切ってしまうというおきまりのパターンだ。

株価の回復傾向とブロードバンドの普及を背景に、現在、個人投資家が再び証券市場に戻りつつある。色々なタイプのネット証券会社がさながらブティックのようにサービスの競争をはじめ、「デイトレーダー」と呼ばれるネットを駆使するスキルを持った個人投資家層が拡大している。「週刊!木村剛」でも紹介されているように、規制緩和も後押しして本格的な個人投資家の時代が到来しつつあるという論調も生まれている。しかし、カトラーとしてはこうした風潮にデジャブ(既視幻想)感を持たざるを得ない。

丸石自転車事件が持つ意味

 丸石自転車前社長ら逮捕 架空増資の虚偽登記容疑(Yahoo!ニュースより)

丸石自転車(東京都千代田区)の架空増資事件で、警視庁組織犯罪対策4課は1日、実体のない増資を行い虚偽の法人登記をしたとして、電磁的公正証書原本不実記録などの容疑で、同社の前社長で丸石ホールディングス取締役、八木芳雄(やぎ・よしお)容疑者(52)=埼玉県春日部市藤塚=ら5人を逮捕した。  丸石自転車をめぐっては、同社名義の手形がブローカーや暴力団関係者に大量に渡ったとされ、組対4課は事件の中心人物とみられる八木容疑者を追及し、同社の不透明な資金調達の実態について全容解明を進める。

つい最近、ネット投資家の間で話題を呼んでいたのが「丸石自転車」という銘柄である。業績不振が続いていた二部上場の自転車メーカーだが、昨年、増資し、今年の6月には丸石HDという持ち株会社に移行するということがアナウンスされていた。この持ち株会社への移行を巡ってさまざまな憶測が流れ、仕手株として「丸石祭り」と呼ばれるほど大きな商いが成立していた。問題だったのは、再上場直前になって、昨年の増資が実際は、架空のものであったことが露見し、経営トップに突然逮捕状が出てしまったことだ。多くの個人投資家たちは唐突な事態の展開に唖然としたことであろう。
新聞や一般メディアは、この事件について丸石自転車のトップの逮捕の時点で取り上げているだけだが、実は、この事件の本質が、丸石自転車のトップの逮捕も含めてあらかじめ仕組まれた、大きな「詐欺行為・株価操作」ではなかったかという点だ。ネット上には丸石自転車株に投資した個人投資家たちの「見通しを誤った」「予想できない展開にやられた」式の反省の弁が並んでいるが、誤解を恐れずにあえて言わせてもらえば、彼らは騙された可能性がある。

この丸石自転車という会社は、自転車メーカーとしては歴史のある老舗企業だが、逮捕された社長が経営権を握るにあたっては色々な経緯があったことが指摘されている。一部では、暴力団関係者との関わりなども取りざたされていた。持ち株会社への移行、再上場という、オフィシャルにアナウンスされたシナリオが「経営トップの逮捕」という事件によって頓挫するというもうひとつのメタ「シナリオ」を描いた連中がいるというのが、今回の丸石自転車事件の本質だと見ている。
誰がもうひとつのシナリオを描いたのかは、誰が今回の件で大儲けをしたのかを解析していけばおのずと明らかになるだろう。当局が経営トップの逮捕の逮捕に踏み切った背景には、こうしたもう一つのシナリオ=詐欺行為の立件まで意図しているのでは?と期待したいところだが、果たして立件は可能だろうか。

最大の問題は、こうしたいわく因縁のある企業の再上場を認めるアナウンスがされたこと自体にある。昨年の増資が架空のものであったとすれば、監査役や監査会社は一体何をしていたのか?
さらにいえば、こうした丸石自転車からの一方的な申請を真に受けて、持ち株会社の再上場を認める判断をした東証や証券等監視委員会のチェック体制のありかたそのものが問われることになる。

日本の証券市場の問題点として、「個人投資家層が未成熟なことである」といった指摘をよく聞く。その指摘は明らかに間違っている。むしろ、個人投資家層の拡大・成長を阻んできた情報流通の非対称性、訳知りの連中が結局勝つことになる市場の構造そのもの、また、そうした構造そのものを許してきた東証や行政のあり方が本質的な問題なのだ。まず、川上を正すことが先決である。市場がフェアになれば、黙っていても個人投資家はついてくる。

その意味で、今回の丸石自転車の事件に対する東証や当局の今後の対応の如何によって、現在の個人投資家の回帰現象をホンモノの「個人投資ブーム」にまで拡大できるかどうかが決まるといっても過言ではない。

(カトラー)

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Comments

すごい…難しい内容でついていけれないかと思ったのですがやはり文才のある方は違いますね♪知識のない自分にもかなり理解できたと思います。
株に今後手を出してみようかと思ってたのですが、やはりそれなりの知識は必要ですね…勉強勉強(´ヘ`;)
やはり世の中うまいことして儲けてる方はいっぱいいるのでしょうね…

Posted by: ひろムー | 2004.06.22 at 03:58 PM

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