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青山ブックセンター倒産!~出版業界おわりのはじまり~

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<写真:新文化ニュースより>

青山ブックセンターが営業中止 おしゃれな店づくり定評<asahi.comより>

東京、神奈川に7店舗をもち、芸術、文化関係の出版物などに重点を置いた個性的な品ぞろえで知られる書店「青山ブックセンター」(本店・東京都渋谷区)が、16日限りで営業を中止した。取引先の出版取次会社の栗田出版販売がこの日、東京地裁に同書店のグループ3社の破産申し立てをしたため、営業の継続を断念したとみられる。

先週末、青山ブックセンターが倒産した。六本木に仕事に行った時の時間つぶしやら、飲んで最終電車に乗りそびれた際などによく立ち寄ったものだった。デザイン系のユニークな出版物やアート本、洋書などが充実していて、お気に入りの書店のひとつだっただけに残念だ。しかし、思い返して見ると、実際に本をこの店から買った憶えがあまりない。こんなことになるなら、もっと貢献しておけば良かったと内心後悔した。

「世界の中心で愛を叫ぶ」や「バカの壁」が300万部を越えるミリオンセラーになり、新刊書が書店の店頭に溢れかえっていても、世は「出版不況」の真っ只中にあるという。ここの所、酷暑が続いていることもあるだろうが、ビジネス街の書店では平日の昼間であってもかなりの客の姿をみかけた。都心やロードサイドでは次々と大型の書店がオープンしている。こうした状況を見ると「出版不況」とは一体何を指していうのだろうか?と疑問に思えてくる。

しかし、数字を見れば明らかなように、出版界の売上は、96年の2兆6563億円(出版科学研究所調べ)をピークに前年を下回るようになり、毎年、約3%づつ縮小し続けている。前回の記事でも紹介したように、売上の減少が出版社を新刊の発行に走らせ、それが異常な新刊点数の増加と返本率の上昇を招き、さらに自分の首を絞めるという悪循環に陥っている。

供給者主導の市場システムが問題

こうした状況の背景にある根本原因は、極めて明白である。出版社も流通も高度成長時代に作り上げられた供給者主導型の市場システムにしがみついていることに最大の問題が存在する。出版界の「良識派(守旧派?)」と呼ばれるような方々と話していて感じるのは、「本は文化を担うものであって、その良し悪しはその国の文化そのものを左右する。本は、単なる商品とは違うのだ」という強い自負と思い入れである。
その考え自体はりっぱだと思うが、残念ながら明らかに間違っている。ビジネスとして見た場合はもちろんだが、彼らがいうところの「国民文化」の担い手としても、売れない本には価値がない。
確かに、この世にはほとんど読者はいないが、100年後の世界で評価される、恐るべき孤独な「書物」も存在する。しかし、「この国の文化をリードする」というレベルで語られる「本」とは売れてナンボ、読者の手に届いて初めて価値が発生すると考えるべきだ。実際、こうしたしごく当たり前の市場主義が素直に受け入れられずに歪められているところに、日本の出版市場の最大の不幸がある。待ってくれ!当社は、売れない文芸書、学術書だって国民文化のため出版しつづけてきたーと主張する出版社もあるだろうが、実はこうした構造は、これまでは、「雑誌」と「コミック」が大量に売れていたから成り立っていたに過ぎない。出版界の稼ぎ頭が、ゲームやケータイ、インターネットなどサブカルチャーの新しい器に移行してしまったために余裕がなくなり、さまざまな問題が噴出してきているというのが今の構図である。

再販制度の問題

そして、こうした日本の歪んだ出版市場の象徴的な問題が「再販制度」である。世の中で売れない商品は、値下げをするのが当たり前である。その常識が通用しないから、出版業界全体の返本率は、なんと4割近くまで達しようとしている。その結果、毎年、倉庫にも入りきらなくなった膨大な量の売れ残りの本が断裁処分に回されていることは一般にはあまり知られていない。
 こうした状況の中で、倒産した青山ブックセンターのように個性的な店作りや品揃えを貫徹しようとしても、結局は大きな壁にぶち当たる。冒険的な品揃えに挑戦しようにも、そのリスクをヘッジする手段が極めて限られてしまうからだ。万人受けしない本を取り扱って、仮に売れ残ってもバーゲンで売り切ることができる、または、他に先駆けてベストセラー本を発掘すれば、先行者利益を獲得できる。こうした前提となる競争条件が無ければ、書店としてリスクを冒す意味がなくなってしまう。結果として、日本全国、同じような顔をした本屋ばかりになってしまった。
再販制度を擁護する根拠として、定価販売を守ることで弱小出版社が価格競争に巻き込まれることを避け、出版文化の多様性を担保できるという議論がある。しかし、実際にはこうした議論はとうに破綻していて、個性的な出版社や個性的な書店の経営は日を追って苦しくなっている。

効率重視にシフトした取り次ぎ各社

この場合、問題の元凶になっているのは、トーハン、日販に代表される取り次ぎである。売れる商品を効率的に配本することが、彼らの唯一といってもいい経営理念になってしまった。雑誌やコミックが売れて、余裕があったときは、良い本なら面倒みましょうと擁護者として機能したのだが、長引く出版不況で背に腹は代えられなくなり、その経営姿勢は効率主義の方向に大きくシフトしてしまった。
今年の決算発表で、トーハン、日販は両社とも売上減にもかかわらず、増益を確保したことは案外知られていない。このことが意味するのは、両社がいよいよ本格的に売れ筋商品の絞り込みを始めたということである。効率の悪い商品は排除する・・・問屋商売として当然のことをやっているまでということになるだろう。しかし、同じような書店ばかりが並ぶ現在の日本の出版市場において、こうした効率主義に基づくオペレーションが展開されることは、そのまま日本の書店全体、出版市場全体のコンビニ化が進行することを意味する。青山ブックセンター的書店は切り捨てられ、個性の強い出版社は売り場を失っていく。行き着く先は、佐野眞一氏が指摘する「出版の死」である。

残念なことだが、青山ブックセンターの倒産の影で、確実に出版業のおわりがはじまっている。

(カトラー)

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Comments

私は六本木より表参道の方を時々利用していました。判り難いが広い店内で少々変わった取揃えの書籍を楽しんでいました。

おっしゃるように出版・書籍業界は何らかの変革が必要でしょうね。トーハン、日販が増益というのは驚きです。確かに出版される書籍が多過ぎます。あれでは儲けの構造が難しいですね。

しかし趣味の人々も多いからな・・・と言いつつ自分でも名前を売る為には本を書くのが一番かとも思っています。

Posted by: maida01 | 2004.07.22 at 09:41 AM

遅くなりましたがTBありがとうございます。

本が売れていない、というのは、本屋歩きを趣味にしている者として、とても実感が出来る事実です。立ち読みする人で店内はあふれても、レジはがらがら。しかも、その立ち読みですら雑誌やマンガどまり、「本」が売られているコーナーには人すらいません。
店内の、「いま、売れています」という平積みされた本だけが、書籍の売り上げを支えているようなものなのですね。

それにしても、トーハンや日販が増益というのには驚きました。書店はどんどん潰れているというのに。なるほど、利益になるもの「だけ」に絞っていけば、損は少なくてすむのも道理ですものね。

売り場面積こそ広いものの、同じような顔をした書店ばかりが増えていくのも、わかるような気がします。でも、それでいいんでしょうか。書店に足を運んでも、気づかぬうちに選択肢を狭められていくわけですよね。「本読み」としては、さびしい限りです。

Posted by: はみ | 2004.07.25 at 02:19 AM

トラックバックおよび解説ありがとうございます。
どうしたら書籍販売業界に変革をもたらせるでしょうか?amazonだけではない選択肢が必要です。立ち読み・読み捨ても可能な週刊誌とそうでないものの区別が必要じゃないかと思っています。

Posted by: ぶん | 2004.07.26 at 02:01 AM

コメントをありがとうございます。
「再販制度」の問題が、日本の出版市場の歪みを象徴していると述べましたが、再販制度を撤廃さえすれば、現在の出版市場が良くなるかといえば、むしろ逆で、中小出版社や中小書店のかなりの部分が潰れてしまうでしょう。今のままでは駄目だということは、皆わかっているのに処方箋が見えにくくなっているのが悩ましい所だと思います。
音楽コンテンツの流通では、ネット配信やipodなどが爆発的な広がりを見せており、既存の業界にとっては厳しい問題も抱えつつ、次のビジョンがぼんやりですが見えつつあります。書籍の流通の変革は、まだ入り口にも立っていない状況でしょう。
でも、いずれにしても今のシステムは持たなくなっているので、この数年で大きな変化が現れてくると思います。しかし、変化の波は弱い所をまず襲っていくので、第2、第3の青山ブックセンターが出てしまうことが心配されますね。
大規模な書店は別にして、そこそこの規模しかない場合、書店が本だけを売って成り立つ時代は終わったのかも知れません。スタバと組み合わせる、アニメファンだけを相手にしたコンテンツショップ、本を買ったら足裏マッサージしてくれるなんていうのも良いかも知れない。いずれにしろ「本屋」という枠組みをはずして考えて見ることも必要かも知れません。

Posted by: katoler | 2004.07.26 at 06:17 PM

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