日本の個人投資家のマインドを変えることができるか?
木村剛氏が、新たに投資情報月刊誌「フィナンシャル・ジャパン」を創刊させることを発表した。
木村氏が主宰するブログ「週刊!木村剛」からオピニオン誌「月刊!木村剛」を創刊させたのに続いての雑誌創刊である。
金融大国といわれる日本に本格的な投資情報誌が存在しなかったのは、いかにも不思議なことだが、それは、この国のお金持ちといわれる人々の資産形成のありかたに原因している。
不動産偏重だったこの国の投資マインド
10年ほど前、京橋や神田に数棟のビルを持つ、ある不動産会社のオーナーに呼ばれて、そのオーナが主宰する会合に参加したことがある。
上等の鰻重が置かれたテーブルに10人ほどのビルオーナーたちが座っていて、あるテーマについて議論が進んでいた。
聞くと、それぞれのビルオーナーたちは、銀行に多額の借金を抱えており、メンバー全体の借金を合計すると2500億円を越えるという。その借金の金額にも驚いたが、もっと驚かされたのは、彼らが議論しようとしていたのが、借金を抱えているビルオーナー、不動産会社が共同してひとつの会社をつくるという新会社設立プランであったことだ。
当時、銀行がバブル時代に貸し込んでいた資金の回収に走りはじめており、担保物件を競売に掛けるなどの強硬手段も辞さずという態度を打ち出してきていた。このままでは潰されかねないから、借金を全部まとめた会社を作ってしまえ!そうすれば恐くて潰せないはず・・とスゴイことを考えていたのだ。
「どう思います?」と私を呼んだビルオーナーの問いかけに、思わず喉がつまりそうになったが、
「なかなか良いアイデアだと思いますが、商法上問題が出てくるんじゃないですか」とだけ言って、うまい鰻重だったけれど、半分ほど残して早々に引き上げさせていただいた。
結果としてその新会社が日の目をみることはなかったが、事ほど左様に、日本の金持ちと呼ばれる人々は土地成金、不動産成金が多い。事業で成功した経営者であっても結局、不動産に投資した。ダイエー、そごう、セゾングループ、リクルートなどしかりで、皆、不動産による錬金術に目がくらんだ。それは、不動産投資が最も安全かつ投資リターンが高いと考えられたからだ。金を貸す銀行もそう考え、結果として巨大なバブルが生み出された。
みんなが「安全、必ず儲かる」と考えていることほど危ないことはない。真の投資家であれば、そのように考えたはずだが、田植えでもするように、銀行家、企業家、個人までも、横並びになって「土地」にお金を投資していき、挙げ句の果てに、枕を並べて討ち死にしてしまったわけだ。
風は変わりつつある
そして10年後、ようやく不良債権の処理に目途がたち、その大きな影の立役者となった木村剛氏が、こうした投資情報誌を創刊することは、運命的な巡り合わせとも言えるのではないか。
バブル崩壊の遺した教訓とは、私の考えでは「結局、日本人は知的に貧しかった」ということにつきると思っている。
他人とは違った見方をどれだけできるか、その中で自分がとれるリスクをどれだけ正確に計算できるのか、要は他人と違った生き方がどれだけできるかが、投資家の最低条件だからだ。
日本の新聞に代表されるように、メディアによって流布されるている情報は、受け手にとって「人(他人)が知っていると思われることを自分も知る」ことができることに大きな価値があった。こうした、世の中の人々が横並びでものごとを考え、投資する環境では、ニッチな投資情報誌などは成立しようが無かったといえよう。しかし、さまざまな金融テクノロジーや金融商品、そしてそうしたものを駆使して投資家をサポートするような専門家が登場し、時代は変わりつつある。
投資は田植えではない。風を感じ、その風にのって果敢に可能性に向かってチャレンジする狩猟的なセンスを必要とする。そうしたヴィヴィッドな情報を発信する情報誌として、「フィナンシャル・ジャパン」が成長し、日本人の投資マインドそのものを変えるようなパワーを持つことを期待したい。
(カトラー)
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
初めまして,早速,このページを読ませていただきました。
僕も今の経済などの情勢は,かなりおかしいと思います。
なので,いろんな人たちがその事を感じて,活動されています。
だけど,まだまだ現実として見えてこなくて,
いきづまっているし,それをする能力も技術もない・・・
だからこそ,そういう人たちを育てないといけないと感じます。
しかし,僕にはそうする方法がわからないので,
木村さん,教えてください。
投稿: となりのトトロ | 2004.10.31 20:10