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グーグルニュースの曼荼羅あるいは神学

google_news.JPG
グーグルニュースの日本版のサービスが先週から始まっている。
日本の主要マスコミの最新ニュースが、マスコミグループの枠を越えて、あたかも曼荼羅のように一覧できる状態で提供されている様は、まさに画期的といえる。結局のところ、インターネットは、検索に始まり検索に終わる。今やネット世界の神学は、「サーチエンジン」になったということを、このグーグルニュースの画面は何よりも雄弁に物語っているだろう。

日本のテキスト系メディアの覇権をずっと握ってきたのは、いうまでもなく「新聞」である。「新聞」はマスコミ、ジャーナリズムの代名詞であり、政治・経済、社会の言論に圧倒的な影響力を持つ。天下国家の問題から夕飯のオカズのレシピに至るまで、この世の森羅万象をカバーし、まさにそれぞれの新聞が一つの世界を体現しているといっても過言ではない。それぞれが完結した「世界の主」であるということは、それらが、ひとつの世界に統合され、並べられ、編集されるということはありえない、極言すれば、あってはならないことだった。
しかし、数学的なアルゴリズムとテキストマイニングの技術を駆使することによって生まれたグーグルの新しい神学は、そのあってはならない、「統合」を手品のように、あるいは奇跡のようにネットユーザーの目の前に実現して見せたのだ。

・・(前略)・・クローラーが集めてきた見出しや本文などの情報は、「クラスター技術」と呼ばれる技術で内容を自動識別し、同じニュースを取り上げている記事は1つのクラスターと呼ばれるグループにまとめられる。・・・(中略)・・・ クラスターごとにまとめられた記事は、100項目以上の基準に基づいてニュースとしての価値判断が自動的に下される。例えば、短時間に1つのクラスターの記事数が急速に増加するということは、数多くの報道機関が1つのテーマで記事を次々と発信しているということ。すなわち重要ニュースということになる。このほか、日ごろからリンクされることの多い報道機関はそれだけ信頼されている証拠という考え方を基に、その報道機関の記事の価値を高く評価する。こうした基準を基にニュースの重要性を自動的に判断し、トップニュースとしてページの上の方に掲載する仕組みだ。
     <ネットは新聞を殺すのかblog>より

「ネットは新聞を殺すのかblog」の湯川さんが解説されているように、この「統合・編集」作業には、人手がほとんど関与せず、「クラスター技術」により自動生成されており、恣意的な要素が入り込む余地のない透明な世界が実現されている。この透明性が担保されることで、「世界の主」であった新聞社も、しぶしぶだったかも知れないが、その神学に屈せざるを得なかったのだ。

グーグルはインターネット世界の司祭となった

グーグルニュースとは、その意味でグーグルという存在が、インターネットの世界の司祭になったことを示す曼荼羅のようなものといえるかも知れない。自動生成のためコストがかからないということも前提となっているだろうが、このニュースサイトから利益(プロフィット)を生み出すことを放棄している点もグーグルらしいスマートな戦略だ。

「ご安心ください、グーグルニュースはリンク集に過ぎません。皆様、報道機関のポータルサイトへのアクセスをアップさせたいという一心でやっていることなのです。それが証拠に、わたしたちはこのサイトから利益を上げようとは思っていません」
と司祭は、世界の主たちに巧みにその御利益を説明し、見事に説得したのであろう。

サーチエンジンという神学を持って登場したグーグルという司祭は、今のところ新聞社という「世界の主」に対して同伴者として愛想良く振る舞っているように見えるが、近い将来、教皇に変じて支配者となる野心をもっているのだろうか?
私の考えでは、今回、お披露目のなったグーグルニュースという曼荼羅は、グーグルにとって彼らの神学の、ほんの手始めのデモンストレーションに過ぎず、本当の戦いに向けて着々と準備が進められていると見ている。

メディア世界のハルマゲドンの行方

その最終戦争(ハルマゲドン)を、グーグルは、インターネット上で個人が発信するテキストデータの全てを「検索」するという戦略によって闘うことになるだろう。個人のe-mailをテキストマイニングする「G-mail」のサービスを開始したことからもわかるように、グーグルがサーチエンジンによって捉えようとしているのは、個人の言説そのものである。米国のブログブームの立役者となったBroggersを買収したのも、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のパイオニアFriendSterを買収しようとしたがかなわず、しかし、すかさずOrkutを独自に立ち上げたのも、個人の発信するデータ、すなわちインターネット世界を構成する最小単位、原子(アトム)をその神学の下におさめるという大きな戦略に基づくものである。原子(アトム)の集合体さえ手にすれば、サーチエンジンという魔力をもった司祭は、創世記の神のように、いかようにでも世界を形造って見せることができるだろう。

毎朝、各家庭に届けられている新聞は、新聞記者が「記事」を書くことで出来上がっている。しかし、当の新聞記者にいわせれば、実はそのコンテンツの7割は取材ソースからの情報そのものであり、残りの3割が記者の分析、評価など、情報の加工によるものだという。仮に取材ソースである個人がブログなどのコミュニケーションツールを用いて、インターネット上で情報発信を始めたらどうなるか?グーグルは、その原子(コンテンツ)をお得意のサーチエンジンの魔法で構成して、クォリティー紙だろうが経済紙だろうが競馬新聞だろうが自動生成して見せるだろう。

こうしたことは絵空事、SFの世界の話ではない。実際、米国のBtoB系の出版社では、業界のニュースなどを扱ったニューズレターと呼ばれる媒体が次々と休刊している一方で、サーチエンジンなどを駆使して情報をサービスする新しい情報サービス出版社などが急成長している。

メディア世界の最終戦争(ハルマゲドン)は、私たちの目の前まで近づいているのだ。

(カトラー)


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Comments

カトラーさん、こんにちは。実は、カトラーさんがどういうことを書くのか、ずっと待っていました(w
googleの仕事のやりかたは、かなり広い盤面で囲碁を打っているような感じ、ですよね。マスメディアのところで石を打ったあと、次の一手は、またどこか、かなり離れたところで打つのかな、という感じで見ています。

私の場合、GoogleNewsであらためて感じたのは、地方紙の、通信社情報への依存度や大手メディアの、海外における報道の力のなさ。

テロに関しては、ロシアに限らず、イスラエル/ハマス関係の情報の位置づけがかなり高いこと。つまり、日本語で書いてはあるのですが、ニュースのプライオリティはアメリカ的なものになっていること、でしょうか。中身は別として。

Posted by: miyakoda | 2004.09.07 at 11:26 AM

miyakodaさんコメントありがとうございます。
googleの仕事のやり方を囲碁に例えられたのは、正にその通りだと思いました。ただ、その一方で、PLAYBOY誌とのインタビュー問題など、公開直前のドタバタ劇などを見ると、深慮遠謀を巡らしているのか、迂闊なのかわからない面もありますね。恐らく実態としてはその両方で、成長力のある企業とは、そういう2面性を持ち合わせているものなのかも知れません。

Posted by: katoler | 2004.09.07 at 04:26 PM

カトラーさん、トラックバックありがとうございました。
 グーグルについては、テキストベースでは既に世界をある程度制覇した、と思っています。次は、音声/画像が乗ってくるのかなとも感じています。
 以前、ソニーがネットワークハンディカム、なるものを出していました。あの時点では、個対個で伝える、というレベルでしたが、携帯電話での「写メール」の普及以降を考えると「著作権上既存の商業メディアに抵触しない」ニュース映像検索はできてくるように思えます。
 既に写真検索はグーグルのサービスに入っていますので、これに動画が加わり、サーバ上の容量と転送速度さえ確保できれば「グーグルTV」(動画とキャプションの連続を自動生成)というところまでたどり着くのは時間の問題のように思っています。

Posted by: fareaster | 2004.09.07 at 08:40 PM

カトラーさん。トラバありがとうございます。
Googleとグル(導師)との連想からの展開恐れ入りました。miyakodaさんのおっしゃる「地方紙の、通信社情報への依存度や大手メディアの、海外における報道の力のなさ」については私も感じていました。CGM(消費者発のメディア)が力を持つようになってくる予感がしていますが、これからGoogle-Worldwideでのコンテンツトランスファーなんかがされる様になるともっと幅が広がるんでしょうね。やはり言葉の壁は大きいもので、Googleで検索した海外ページを日本語で正確に訳して見れるようになったらこれほど強力なものって無いと思うのです。リッチメディアの検索についてもコンテンツ数が増えてくれば同様に大きなトラフィックが生まれてくるんでしょうし・・・これからもGoogleの動きには目が離せませんね

Posted by: icapitalist | 2004.09.08 at 07:30 PM

>地方紙の、通信社情報への依存度や大手メディアの、海外における報道の力のなさ

これは事実の指摘としては確かにそうですが、だからこそそこに可能性、ニッチなチャンスをみるような気がします。

自分にとってはTBしたような可能性に見えるのです。

MAO
blog::TIAO

Posted by: MAO | 2004.09.11 at 03:09 PM

9月9日にGoogleNewsの中国版、香港版、台湾版が同時にスタートし、大陸でも話題になっています。
http://www.blogchina.com/new/display/43767.html
http://content.sina.com/news/03/64/7036400_1_gb.html

http://www.blogchina.com/new/display/44025.html
http://news.xinhuanet.com/newmedia/2004-09/10/content_1965698.htm
http://www.blogchina.com/new/display/44235.html

これからポータルサイトの悪夢の時代が始まるという論調。

NewsAlertというキーワードを登録しておくとそれに合致したニュースがお知らせされるというサービスは、韓国と日本以外では始まるようですね。

もう国内マスメディアだけのことじゃない、まさに司祭が舞い降りてきたということのようです。

Posted by: MAO | 2004.09.13 at 04:06 PM

pvyum purlocqby ergqkjowz vnxzg zhupl rnmk cakrdqtw

Posted by: ixsz brhlcga | 2007.09.02 at 07:20 AM

[*map/map_all_coml11.txt||10||r||1|| @]

Posted by: dotarull | 2007.10.15 at 07:33 AM

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