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2010年、映像メディア・ビジネス 未来への旅(1)

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ベンチャーキャピタリストの原丈人(はら・じょうじ)氏が、先週の9日、丸の内で「アライアンス・フォーラム」というイベントを開催した。

原丈人氏は、日本のベンチャーキャピタリストの草分け的存在で、スタンフォード大学院在学中、弱冠29歳で起業したビジネスを成功させた後、VCを設立、シリコンバレーを足場にベンチャーへの投資と育成を行ってきた。DVDのデ・ファクト技術を開発したゾーラン社、テレビ会議システムのピクチャーテル社など、原氏がこの世に送り出し、ITの世界でデ・ファクトスタンダードを獲得した企業を枚挙すれば暇がない。
その原氏が、次世代のユビキタスネットワーク社会を実現する「新産業」を創成するために、日本・アジアへの傾斜を強めている。今回のフォーラムは、そのための第一歩と位置づけられ、各界を代表する識者・オピニオンリーダーが参加して円卓会議が催された。

原氏が次世代のユビキタス産業の創成を日本やアジアに期待するのには、2つの理由がある。
第一には、日本、韓国などで欧米に先駆けてブロードバンド環境が整備されたことである。携帯電話が普及して、これに関連したビジネスが花開いたように、ブロードバンド関連ビジネスでも同様の展開が期待できる状況にある。
第二には、ユビキタス社会を構成する新しいコミュニケーションツール・デバイスやアプリケーションの開発は、日本企業の総合力や洗練された技術力がモノをいう分野で、日本がこの分野をリードできるチャンスが生まれている。

日本政府もこれまで展開していたe-Japanというキャッチフレーズをu-Japan(ユビキタス・ジャパン)に看板替えすると宣言しており、一見、「新産業創成」に向けた取り組みは大きく動き出しているかのようにも見えるのだが・・・

成長の限界点が見え始めたメディア産業

u-Japan(ユビキタス・ジャパン)を実現する上で、大きな前提となるのが、「放送と通信の融合」という言葉に象徴される、メディア産業とコンピュータ・通信産業の融合またはコラボレーションである。木村剛氏が「週刊!木村剛」でTV広告やメディア産業の成長の限界を指摘しつつ以下のように述べている。

・・(略)・・「CMスキップ」機能を搭載したHDD/DVDレコーダーの普及のみならず、テレビ視聴率の恒常的な低下という問題を考えると、長期的に見れば、テレビCMの行く先には課題が山積していると言わざるを得ない。  テレビのみならず新聞・雑誌などのメディア産業においては、パラダイムシフトが起こる予兆が各所でみられている。個人的には、ここ数年で大きな業態変化が起こるのではないかという予感を持っている。

ここで指摘されている「業態変化」の大きな鍵になると考えられるのが、「放送と通信の融合」である。新聞、雑誌などテキスト系のメディアの世界では、インターネット技術の登場が、業態変化あるいはパラダイムシフトを強力に後押ししたと考えられる。グーグルニュースに関する先の記事でも触れたように、新しいインターネット技術の登場が、テキスト系メディアの世界におけるヒエラルキーやビジネス・パラダイムに風穴を空けつつある。それと同様に、映像メディア産業におけるパラダイムシフトの鍵になるのが、ブロードバンド環境を前提としたユビキタス・テクノロジーと考えることができるだろう。テキスト情報だけでなく、動画などリッチコンテンツが、いつでもどこからでも、TVに限らず、さまざまなデバイスを通じて手に入れることができるようになるのだ。

こうしたユビキタス社会のイメージは、ともするとSF的世界、夢物語と思われがちだが、原丈人氏は、フォーラムにおいてユビキタス・テクノロジーおよびその産業としての立ち上がりを、「今後、5~6年以内、2010年をひとつの目標として想定できる」と断言していた。評論家やSF作家が、ユビキタス社会をひとつのストーリーとして語るのと、原丈人氏の発言を比べた場合に、その現実性の重みは桁違いに異なる。ITテクノロジーのトレンドに精通した原氏のようなベンチャーキャピタリストが、既に世界中のベンチャーテクノロジーを渉猟しつつ、実際に投資活動を開始しているのだ。このことは現実であって空想や絵空事ではない。

新産業創成を阻むもの

原氏は、ユビキタス・テクノロジーを核にした「新産業創成」に向け、壮大な戦略を描いている。詳細は、次の記事で解説するが、PCU(Pervasive Ubiquitou Communication Platform)という次世代型のユビキタス・テクノロジーのコンセプトを提唱し、この理念を実現する技術を提供できるテクノロジー・ベンチャーに対する投資を行い、ブロードバンド環境が進化した日本やアジア諸国で新産業として立ち上げていこうというものだ。
しかし、当然のことながら、ボトルネックやデッドロックも存在する。例えば「放送と通信の融合」に関しては、放送マスコミは、こぞって反対姿勢を示している。一例をあげれば、従来、放送事業者に対しては、周波数の帯域が優先的に割り振られていたが、余った電波帯域を通信事情者との間だで公平に割り振るべきという提言が、IT戦略本部などによって行われたが、災害時、緊急時における放送事業者の社会的役割に最大限に考慮すべきと、反発が生じているという。

ここでも既得権益を固守したいマスコミのエスタブリッシュメントと新興勢力との戦いが始まっている。既得権益にしがみついているのは、何も官僚ばかりではない。

(カトラー)

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Comments

カトラーさま
拙文へのTBありがとうございました。小生からもTBをさせて頂きました。

先日BS放送の枠に出ているデータ放送に関する講演会に出席させて頂く機会がありました。その中でも、データ放送のコンテンツの位置づけはあくまでも"放送"であり、自分達が100%管理するという気持ちが良く現れており、「放送と通信の融合」からはまだまだ程遠い段階にあると認識しました。

CMの費用対効果の問題、通信の脅威、さらに本質的にはテレビ離れ、と様々なプレッシャーの中では既得権益にすがりたくなる気持ちも分からないでもないですね。最終的に身を滅ぼすことになったとしても、やはり心情的にはしがみつきたいのではないでしょうか?

Posted by: manutd04 | 2004.09.13 at 11:36 PM

当方6/13ブログにご来訪・コメントありがとうございました。
ブログに不調法なもので、つい先日まで気がつきませんでした。すみません。
ユビキタス・テクノロジーを核にした「新産業創成」のお話、とても刺激的ですね。
新しいものにワクワクする反面、等比級数的に進む技術革新に、緩やかにしか変わることのできない私たちの心やからだはついていけるのだろうかと、ふと不安になってしまいます。

Posted by: やま | 2004.09.14 at 06:41 AM

Keep on writing, great job!

Posted by: sterling silver jewelry | 2013.11.21 at 11:58 PM

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