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2010年、映像メディア・ビジネス 未来への旅(3)    ~楽天、ライブドアもうひとつの戦い~

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球団経営の熱意互角 プロ野球参入ヒアリング  <asahi.com記事より>

ライブドアか、楽天か――。両社のプロ野球参入を巡る争いが熱を帯びてきた。6日のヒアリングで、両社の回答内容には決定的な差は見あたらなかった。両社とも資金力は豊富。ライブドアの堀江貴文社長、楽天の三木谷浩史社長とも、球団経営への熱意を示した。日本プロ野球組織(NPB=日本野球機構)が設置した審査小委員会は、今後も会議を重ね、審査を進める。

プロ野球機構の公開ヒアリングが、楽天、ライブドアの2社に対して行われた。
巨人軍の球団幹部が楽天の三木谷社長と接触していたという報道がされて以来、楽天(エスタブリッシュメント)vsライブドア(ベンチャー)という図式ができあがり、どちらに軍配が上がるのかにもっぱら世間の関心は集中してしまっているようだ。
しかし、メディアビジネスの観点からとらえた場合、もうひとつの戦いが進行していることが見えてくる。

問題を解く鍵を、両者が今回のヒアリングに提出した事業計画の数字に見ていこう。特にネットの活用をどのように考えているかが大きなポイントになるはずだ。
今回のヒアリングの中で、両者ともインターネットを球団運営の中でどのように活用していくのかについては、詳細には伝わってきていないが、新聞報道などによれば、おおよそ以下のような数字が提出されている。

        TV放映権料  オンラインサービス  グッズ販売   広告収入

 楽天       10億円      0.5億円→8億円   3.7億円   11.5億円

ライブドア    5.0億円      1.0億円→5億円    8.5億円   2億円

初年度の計画数字を見る限りでは、オンラインサービス分野での展開は、限定されたものになるが、5年以内に楽天は、8億円に、ライブドアの場合で5億円にまで成長させる見通しを持っている。この際、ネットを通じた有料のブロードバンド放送サービスを月額300円程度で提供したり(楽天)、球場の各所にブロードバンド放送用のカメラを設置し、視聴者が好みに応じて切り替えて見ることができるサービス(ライブドア)などを提供していくとしている。
TVの放映権料に両者で差があるのは、地上波のキー局、地方局に加えて、ケーブルTVやCS、BSからの収入の可能性をどのように見るかによって、まるっきり変わってくるのと、後述するが、楽天にはこの強気の数字を根拠づける何かしらの材料があるのだと推測される。

ユビキタス時代に高まるスポーツコンテンツの重要性

ユビキタス時代の到来を目前にして、野球というスポーツコンテンツの持つ重要性は極めて大きくなっている。
VOD(ビデオ・オン・デマンド)など、ブロードバンド&ユビキタス時代に期待されるコンテンツは、他にも存在するが、著作権問題や違法コピーの問題などをクリアしていく必要がある。その点、スポーツコンテンツには、複雑な著作権問題がなく、仮に試合の中継番組がネットに流出して複製されたとしても、問題は限定的である。スポーツコンテンツは、ユビキタス時代の幕開けを告げるキラーコンテンツとなる可能性をもっている。

「野球」という世界を舞台に、彼らがネット上で開始すると宣言しているコンテンツサービスは、パソコンや携帯電話を通じてネット配信されるのはもちろんのこと、今後、爆発的に普及する茶の間の大画面・高精細な薄型テレビ(デジタル対応)でも同じように提供されるということを理解しておく必要がある。2011年には、地上波番組のアナログ放送は全て終了し、デジタル放送に切り替わることになっているが、このことは、2つの意味を持つ。ひとつには日本全体で1億台ともいわれるテレビが、2011年までには全てデジタル対応となる、つまりテレビが「パソコン」化あるいは「ネット端末」化することを意味する。
加えて、県別の免許事業となっていたテレビ局(特に地方局)のビジネスモデルが、根本から見直しを迫られることが避けられなくなる。かつてのようにキー局の全国ネットワークに属していれば、番組コンテンツもCM料も面倒を見てくれて、殿様商売ができた時代は終わる。地方局の再編が進行するのと併行して地域に密着したコンテンツの提供や、地域スポンサー開拓の努力が地方局には求められることになる。その場合も「野球」は、最も強力なキラーコンテンツになりうるのである。三木谷氏や堀江氏が、宮城県知事を訪問した足で、地方テレビ局を行脚していたのは、単についでに表敬訪問したわけではなく、彼らが地方局を、今後の長期にわたる重要なビジネスパートナー、支援者として認識していたからに他ならない。

FTTH事業者との連携も

次に広告収入についてだが、楽天が11.5億円と見込んでいるのに対して、ライブドアが2億円と大きな開きがある。この点に関して、楽天の方がネームヴァリューがあり、スポンサーが集めやすいからという解説がされているが、私の見方は違う。
ここでポイントになるのは、薄型デジタル対応テレビである。先にも述べたように、液晶、プラズマTVに代表される薄型テレビは、爆発的な普及期に入った。しかし、現状、30~50万円する商品なので、40代以上の団塊層などを中心に先行して購入されている。野球は、こうした高額な薄型テレビを購入する、中高年の富裕層に対してもキラーコンテンツになるだろう。サッカーなどによっては、取り込めないターゲットであり、楽天、ライブドアにとっては、インターネットや携帯というメディアではとらえられなかった新しい鉱脈をつかむことを意味する。

あえて踏み込んで推測すれば、楽天は、ブロードバンド放送などを計画しているFTTH事業者などと既に基本合意ができているのではないか。放映権料、広告収入の見通しで強気の姿勢を可能にするカードをもっているはずだ。
IP(インターネット・プロトコル)をベースに、新しいコンテンツサービス手法を駆使することで、まったく新しい「野球放送」が可能になる。その次世代「野球放送」を多くの人々が大画面の薄型テレビを通じて見ることになるだろう。FTTH事業者にしてみれば、「野球」という、キラーコンテンツを手にすることで、今後、爆発的に増加が見込める薄型テレビへの買い換え層(=富裕層)に、光ファイバーによるブロードバンド放送を強力に売り込んでいくことができるのだから、多少の放映権料や広告料などは安いものだろう。

楽天、ライブドアの競争のむこうには、放送と通信が融合するユビキタス時代のメディアビジネスの未来形が垣間見えてくる。通信とメディアが一体化した世界で、「野球」というスポーツコンテンツに新しい価値が創出されてくる・・・こうしたゴールのイメージを持てるかどうかが、野球を衰退ビジネスとして見るか、成長ビジネスとして見るかの決定的な分かれ目となる。
楽天、ライブドアに課せられたもうひとつの戦いとは、どちらが「オーナー会議」の面々たちによって選ばれるか?ということではなく、新しいゴールイメージをファンや選手、スポンサーに具体的に示すことに他ならない。

(カトラー)

関連記事: 2010年、映像メディア未来への旅(1)
        2010年、映像メディア未来への旅(2)

<追伸>

祝・ブロガー新聞創刊!

「週刊!木村剛」でブロガー新聞がスタート。新たに強力なメンバーも加わり、さらにパワーアップという感じですね。今回の私のエントリー記事が、ブロガー新聞のテーマ、「メディア×スポーツ」 という内容でしたのでこちらにもTBします。
ブロガーのハブメディアになることを期待してますので、頑張ってください。

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Comments

カトラーさん、トラックバックありがとうございました。

薄型液晶テレビの普及が、地方TV局のビジネスを変えるというのは、考えつきませんでした。勉強になりました(w

ただ、気になるのは、放映権料の価格の方です。全国向けでないコンテンツの場合、価格は下がらないのでしょうか?

単なる憶測ですが、楽天はその辺りを「量」でカバーしようとしていて、対するライブドアは、まず地方局のコスト構造辺りから切り込みをかけていって、そこがしっかりしたら自前で始めそうな気がしています。その違いが、10億と5億の違いになっているってことはないでしょうか?当て推量ですけれど。

それでは、これからもどうぞよろしく。お邪魔しました。

Posted by: my.Hurusato.org | 2004.10.12 at 08:32 AM

さっそくライブドアが東北CATVと連携しましたね。

Posted by: ぷれこ | 2004.10.13 at 12:05 AM

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