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2010年 映像・メディアビジネス 未来への旅(5)       ~神の目をもったグーグル~

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稀にみる大型のIPOによって資金調達を果たしたGoogleが企業買収に動き始めている。その買収攻勢の内容からは、テキスト系コンテンツの分野における覇権を確立したグーグルが、次のターゲットを映像系コンテンツに定めつつあることが窺われる。

10月末に買収を発表した企業が「keyhole」である。2001年にスタートしたベンチャー企業だが、人工衛星から撮影した地球の画像データをデータベース化して、パソコン上でその3Dのデジタル画像をあたかも衛星や飛行機の視点から見えるような形で提供している。

With an Internet connection, users enter an address or other location information and Keyhole's software accesses the database and takes them to a digital image of that location on their computer screen. The interactive software then gives users many options, including the ability to zoom in from space-level to street-level, tilt and rotate the view or search for other information such as hotels, parks, ATMs or subways. Unlike traditional mapping technologies, Keyhole creates a dynamic 3D interface for geographic information. (グーグルのプレスリリースより)
Keyholeから専用ソフトウェアをダウンロードすると、人工衛星(=宇宙の視点)から一気に自分の町の裏通りにまでズームインできる。グーグルがKeyholeを買収して、このソフトの無料試用(1週間)を始めたので早速試してみた。

これは驚きだった。

パソコン画面には、青い地球の姿が浮かんでいる。マウスの操作で、その映像を地球儀のようにグルグルと回すことができるので、細長く連なる日本列島が見えたら、それを正面においてズームしていく。すると、目の前にグングンと関東平野が広がり、東京が見え始め、皇居の緑が目に入ってくる。それは、ちょうど、宇宙空間の人工衛星から東京の中心めがけて真っ逆さまに墜落していくような感覚だ。さらにズームしていくと、見慣れた街並みの輪郭が見えてくる。ああ、この通りは靖国通り、この建物は・・・最高裁判所、するとこれは国立劇場か?という具合にしばらく操作していると、足立区の上空にたどり着き、突然、目の前に私の家の屋根が現れた。サンタクロースが宇宙の彼方からプレゼントを持って、カトラー家の屋根(煙突はない)まで辿り着いたとすれば、こうした映像を見るのだろう。宇宙空間から地球めがけて墜落し、自分の家を見つける不思議な感覚、この感覚は、考えてみれば、キーワードを入力するだけで世界中のウェブコンテンツから自分の関心事項を見つけ出してくるグーグルを初めて使った時の驚きにも似ていた。

Keyhole is a valuable addition to Google’s efforts to organize the world’s information and make it universally accessible and useful.
グーグルもKeyholeが、新しい検索ツールであることを宣言している。別の言い方をすれば、「データベース機能付きデジタル地球儀」といえば分かり易いかもしれない。 このグーグルが提供してくれた新しいおもちゃにしばらくハマッテしまった。フランスに飛び、凱旋門を上空から眺め、その足でニューヨークに飛べば中心部にポッカリと赤土をむき出しにしてグランドゼロが広がっている。バクダットは、米軍が侵攻する前の映像のためか、大通りをだくさんのクルマが走っている。軍事上の理由だろうか、北朝鮮の平壌の画像は解像度が荒くなっている。

宇宙空間から地球を眺めた宇宙飛行士たちの世界観が劇的に変わるという事実が報告されているが、地球上のどこでも見ることができるという「神の目」を疑似的にでも持つことは、大げさに聞こえるかもしれないが、ひょっとしたら人類の世界観を変えるかもしれない。

映像・イメージの究極の民主化

このサービスのもとになっている画像データの中には更新されていないものあり、東京のデータも説明によれば1997年とかなり古いので、丸の内の丸ビルが建設中だったりする。軍事上の問題もあるだろうから、リアルタイムで画像データが提供されるようなことは難しいとしても、仮に数ヶ月のスパンでデータが更新されるようなことになれば、これはスゴイことだ。地球上の戦争・紛争、公害、自然災害など刻々と変わる地球の表情を一般の人々が知ることは、米国の寡占あるいは独占を許している独裁体制に風穴を空け、映像・イメージの解放と究極の民主化につながるだろう。軍事上の制約から無理だと述べたが、例えば、グーグルが商業衛星を打ち上げてリアルタイムで地球の画像データを配信するという可能性だってあるかも知れない。逆にそうしたイベントをグーグルが約束したら、Keyholeのサービスへの加入者は、爆発的に拡大するに違いない。グーグルはKeyholeを買収して、そのサービス料金を69.95ドル(年間)から29.95ドルへと大幅に引き下げた。料金の引き下げでユーザー拡大を狙っているという見方が順当かもしれないが、それよりは、将来、ユーザーベースを飛躍的に拡大させるイベントを既に想定していて、その将来の採算ラインから逆算して料金の引き下げを打ち出していると見る方が、いかにもグーグルらしい。

世界中のWebコンテンツ、ネット上のテキストコンテンツをくまなく集めて、検索サービスを構築したように、グーグルは、ユビキタス時代に向けてまず手始めに、地球上の画像コンテンツをくまなく集めてやろうという野心を抱いているに違いない。学校の社会科の授業や、テレビのワールドニュース、家族で海外旅行の計画を立てる時などに、Keyholeをデジタル精細のテレビ画面に呼び出し、地球儀を扱うように世界中の都市を見て回るというような光景が近い将来やってくるのかも知れない。

(カトラー)

関連記事: 2010年、映像メディア・ビジネス 未来への旅(4)
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       2010年、映像メディア・ビジネス 未来への旅(1)

       グーグルニュースの曼荼羅あるいは神学

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