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吾輩はマメである

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このブログのPhotoキャラクターとして登場しているのが、カトラー家の飼い猫、「マメ」である。
写真を撮ったのが生後4~5ヶ月ぐらいの時分のことなのでまだ幼く、この頃に比べると今では大分貫禄がついている。近頃、家庭内に居場所を無くしていた小生としては、当初は良い遊び相手、話し相手ができたと喜んでいたのだが、この1年間で主従関係は図らずも逆転した。「マメ」は家族の寵愛を一身に受け、気が付いて見るとカトラー家はマメを中心に回り始めていたのである。

毎年、夏は、家内の実家に家族揃って帰省することが恒例行事となっているが、マメを飛行機に乗せ、見知らぬ田舎の家に連れていくことはできないという話になり、どうするべきか緊急家族会議がひらかれた。私はペットシッターを頼もうと主張したのだが、「大事なマメを他人になんか任せられない!」と娘たちから大顰蹙を買い、「アナタ、私の実家で気を遣うより、東京に居残った方がノンビリできるでしょ」という家内の鶴の一声で、結局、私はマメと留守番をさせられる羽目になった・・・いや、正確に言えば、マメの召使いとして東京に居残ってお世話をさせていただくことになったのだった。

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カトラー家の家族の寵愛を一身に受け、今や皇帝のように振るまうマメだが、もともとは岐阜の保健所に収容されていた捨て猫だった。猫を飼うことになった時に、下の娘がライフボート友の会という団体のホームページで見つけてきた。
実際にマメを貰い受ける段になって、ライフボート友の会のセンターを初めて訪れた時、応対をしてくれた弓長さんという責任者が、当世のペット事情について色々話をしてくれた。弓長さんは、もとはビジネスマンだったが、一念発起してタイに渡り「出家」したというユニークな経歴を持つ。仏教国のタイでは、動物の殺生が禁じられているため、野良犬や野良猫は行政によって回収された後、狂犬病、伝染病などの予防注射などの措置が施され、驚いたことに再び街に放されるのだという。弓長さんはそうしたタイの状況を見て、日本でもこうしたことができないかと、ライフボートの設立を思い立ったのだという。

それにしても日本のペットを巡る状況は、酷いの一言につきる。
弓長さんによれば、年間、55万頭にも及ぶ犬猫が保健所で処理されているという。飼い主のモラルハザードも進んでいる。4~5年ほど前、大型犬のブームがあったが、可愛いい子犬のうちは良いのだが、成犬になると飽きられてしまい、飼い主から見捨てられたシベリアンハスキーが、大量に保健所に持ち込まれたという。また、高値で販売されるブランド犬、ブランド猫が珍重される一方で、毛並みや骨格などが劣るために品評会やコンテストなどに出せないような、「傷もの」は、飼い主やブリーダーの手によって容赦なく捨てられている現実があるという。ライフボートには、エドと名付けられた、盲目の秋田犬が飼われているのだが、このエドも、目が見えなくなったことに手を焼いた飼い主によって江戸川の堤防に置き去りにされていたのを保護したものだという。
話を聞きながら、あまりの酷さに暗澹とした気持ちになった。犬猫が虐待されているということももちろんだが、よくよく考えてみると、これはリストラや虐待、街にはホームレスが溢れ、勝者と弱者がくっきりと区分けされつつある人間の世界の縮図そのものなのだということに思い至り、さらに暗澹としてしまった。

コムギの登場

マメは、生死の境からライフボートに救われて、今ではカトラー家で平和な生活を送るようになったのだが、ここにきて突然、乱入者が現れた。ライフボートからまた新しい猫が、やってきたのだ。シャム猫の3代目の雑種で名前を「コムギ」という。マメと仲良くして欲しいという飼い主の願いから、「マメとコムギ」という穀物シリーズのネーミングになったのだが、ここ数日、カトラー家は、先住猫であるマメと新参者のコムギとの間で、ピリピリとした緊張が続いていた。
ライフボートのスタッフ、金井さんの解説によれば、複数の猫を一緒に飼う場合、先住猫(マメ)に、新しい猫(コムギ)が存在するようになった事実を納得させ、最終的には「諦めさせる」ことしか共存の道はないそうだ。そのためには、飼い主の愛情が、新しい猫に移ってしまったのではないということを示す必要があるのだという。それで年甲斐もなく、私は「マメちゃんイイコでちゅねー」などと猫なで声でマメを徹底して褒めちぎるという役回りをすることになった。会社の同僚や私のことを知る連中に、とてもこんな姿は見せられない。

最初の数日は、マメがコムギに対して「フーフー」とうなり声を上げて、威嚇していたこともあり、この2匹はいったい一緒に暮らしていけるのだろうか?とマジに危惧していた。ところが、先日の休みの日、米国の大統領選でブッシュの当選が決まったとニュースが流れ、心底むかついていた時、ふと目をやると、日だまりの中で2匹が抱き合って眠っているのに気が付いた。

人間と違って、捨て猫たちは生きることに真摯で、なんとかして共生の道を見つけ出そうと必死になる。バカな人間よりよっぽど上等だ。
神の名のもとに殺し合うことしか知らない原理主義者たちは、偉そうに「神の子」を騙るのはやめにして、いったん「捨て猫」になってみればよいのだ。

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 マメとコムギ(手前)

(カトラー)


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コメント

ペットとしてではなく、家族の一員として付き合うこと。
人が他者と交流する上でとても大事なことを考えさせられます。こどもは人形などをつかった「ごっこ遊び」からストーリーをつくることを学び、身近な生物とつきあうことでそのストーリーが思いのままにはならないことを知るといいます。この思いのままにならない人生がいつのまにか自分と他者が「神の名のもとに殺し合うこと」を普遍化してしまう。
アメリカほど豊かで貧しい国はなく、いずれ国内で壊滅的な断絶が待ちかまえているのかも知れません。
都市と郊外で思考や行動の規範があれほど乖離してしまうと自分たちのことしか守らない「神の子」を共に騙り合うストーリーを求めたがるのも解らないではありませんが。
久しぶりに「猫」と「カント」が読みたくなりました。

投稿: sunrain | 2004.11.10 10:34

カトラーさ~~ん、こにゃにゃちわぁ~!Ochanokoです♪
カトラーさんのブログを拝読させて頂く時は、笑ってしまったり泣かされそうになったりで、大忙しです。深くて勉強にもなり、心も温まり、本当に尊敬・・なのですが、「ネコ語」もお上手なのですね~(笑)「猫なで声の褒めちぎり作戦」には、お茶を吹き出しそうになりました。
マメちゃんとコムギちゃん、超かわゆいですねぇ~~!!ちゃんと「愛され顔」していて、とてもいい子たちそう。マメちゃんは帽子をかぶっているようで、しっぽが茶色?で、個性的ですね。コムギちゃんも、お耳と目と手がパンダみたいで可愛い。ちょっぴり変わってるのでタレントネコちゃんにもなれそうですね~♪
タイにいたことはありますが、ライフボートの存在は知りませんでした。次の仕事はそこにしようかな。(なんて)

投稿: ochanoko | 2004.11.12 12:43

はじめまして、涼 と言います。

我が家でも主が、「ニャムだけやなぁ、迎えに来てくれるのは」とかほざいておりました。

ニャムというのは、5年前に15歳でなくなったクロネコです。

投稿: | 2004.11.12 22:05

どうも、お久しぶりです。

なんだかこのエントリが好きで、何度も読み返してしまいます。
まめちゃんとこむぎちゃんが、ちゃんと最後には仲良くしているところが、サッパリしていて良いですね。

猫のそういうところは、どこか仏教の悟りっぽくて、読んでてほっとしてしまいます。

投稿: Tinkle | 2004.12.13 12:08

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