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2010年 映像・メディアビジネス 未来への旅(6)       ~Seoul Digital Media Cityの実験~

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先々週、六本木ヒルズで慶応大学湘南藤沢キャンパス(SFC)のオープンフォーラムが開催された。SFCらしいユニークな研究発表やセミナーが開催され興味深かったが、ユビキタス・テクノロジーの分野では、MIT(マサチューセッツ工科大学)からこのフォーラムに参加したアデル・サントス教授による韓国のソウル・デジタル・メディアシティー(Seoul Digital Media City)についての報告が印象に残った。

サントス教授は、MITの建築スクール学科長で国際的な女性建築家として知られているが、アカデミズムの世界では建築都市とメディア論、スマートスペースなど空間知能化デザイン分野で意欲的な研究を展開している。
韓国がブロードバンド先進国であることはつと知られているが、サントス教授の講演で、ソウル近郊でユビキタス・テクノロジーと都市空間を全面的に融合させる都市再生プロジェクトが進行していることを初めて知った。Seoul Digital Media Cityは、ソウル近郊、サッカーワールドカップで注目を集めたサッカースタジアムがあるミレニアムパークを中心とした地域、約350ha(丸の内の3倍)を再開発し、2010年に竣工が予定されている近未来都市プロジェクトである。

2010年にはメディア&エンターテイメント産業のアジアの拠点に

単なる都市再生プロジェクトを異なるのは、ここを北東アジアにおけるメディア&エンターテインメント産業の世界的な拠点都市にするという韓国の国家戦略の全面的な後押しを受けていることである。韓流ブームが日本、中国で巻き起こり、カンヌ映画祭では「OLD BOY」がグランプリを受賞するなど、自国文化の発信力に自信を深めている韓国が、映画やアニメーション、ゲームに代表されるエンタテインメントビジネスやユビキタス時代をリードするIT・ベンチャー企業などを世界中から誘致しようという戦略を描いている。「アニメやゲームは日本のお家芸じゃないの?」という思いがよぎるが、DRAMメモリーや現在では液晶ディスプレイの世界で驚異的な集中投資によって一点突破をはかり、トップを走る日本企業を蹴落として覇権を握るという勝利の方程式を、今度は、文化産業やユビキタス・テクノロジーの分野で再現させようという意図が感じられる。
Seoul Digital Media Cityでは、単に都市環境にITを持ち込むだけにとどまらず、都市空間と完全に融合させ、最先端のメディア&ユビキタス・テクノロジーの実証実験の場にもなっている。
例えばこの都市の街灯は、センサーが歩行者を感知して点灯していく。さらに人の体温を感じ取り、それによって光の色がクールブルーからホットピンクまで変わる(ここまでいくとちょっとやりすぎだが)。「人間中心のデジタル都市(human oriented digital city)」というコンセプトのもと、都市空間の知能化をIT・メディアテクノロジーを駆使することによって実現するという。

ビットとアトムが融合する世界

知能化された空間とは、部屋やビルの中にいる人間が、コンピュータやITの存在を意識せずに情報コミュニケーションができるということを意味する。
例えば、CDを聞きたいと考えた場合、CDプレイヤーなどの電子機器に演奏するようにコマンドボタンを押す必要があるが、スマートスペース(知能化空間)では、テーブルに置いたCDをくるりと回せば、壁から音楽が響いてくる。
メディア化された都市空間は、人間の意思をスムースに受け止め、その意図を実現するという点では、われわれの身体性が際限なく外部空間にまで拡張されていくことでもある。人間の身体サインを読み取って、スマートな空間は、指揮者に従うオーケストラのように情報処理をしてくれるのかも知れない。しかし、そのことは全く別の見方をすることもできる。
壁やテーブルが知能を持つことで、私たちの身体性は拡散し、何がリアルなのか見えなくなる恐れがある。ユビキタス・テクノロジーの研究者の間で「ビットとアトムが融合する」という言葉が流行しているそうだ。「人間中心のデジタル都市」の中で、人間がビット(デジタル)の中に溶け込んでいき、映画「マトリックス」さながらの世界が生まれてくる可能性だってある。Seoul Digital Media Cityで生活する人間たちは、デジタル環境やITを使いこなす主として存在するというよりは、デジタル(ビット)に取り囲まれ、新しい生物として進化(?)すると表現するほうが適当かもしれない。個人的には、こんな街に住むのは御免だが、人類は常に自分を変容させることで新しい環境に適応し進化を遂げてきた。

「メディアはマッサージである」という言葉は、メディア論の先駆者、マクルーハンの有名な言葉だ。1960年代の段階で既にマクルーハンは、人間の身体性がメディア空間との関わりによって変容していくことを以下のように正確に言い当てていた。

「すべてのメディアは、われわれのすみからすみまで変えてしまう。それらのメディアは、個人的、政治的、経済的、美的、心理的、道徳的、倫理的、社会的な出来事のすべてに深く浸透しているから、メディアはわれわれのどんな部分にも触れ、影響を及ぼし、変えてしまう。メディアはマッサージである。」

(カトラー)

関連記事: 2010年、映像メディア・ビジネス 未来への旅(5)
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Comments

 カトラー様のエントリーは質の高いものが多いと思いますので、この記事を始め主だったものをウェブログ図書館( http://library.jienology.com/ )に登録させていただきました。

Posted by: ウェブログ図書館 館長 | 2005.01.30 at 01:28 PM

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Posted by: Dibbreent | 2010.01.28 at 12:48 AM

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