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デジタルデバイドの壁が崩れる日

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「1500万冊以上を検索」、米Googleが米英学術機関の蔵書デジタル化

米Googleは米国時間12月14日に、米国および英国の学術機関の蔵書をデジタル化する取り組みについて発表した。同社は、ハーバード大学、スタンフォード大学、ミシガン大学、オックスフォード大学、ニューヨーク公立図書館と協力し、蔵書をデジタル・スキャンする。いずれ、同社の検索サービス「Google」のインデックスに組み込みたい考えだ。
nikkeibp.jpより

グーグルがまた野心的なプロジェクトを発表した。ハーバード大学をはじめとした有名大学と協力関係を結び、大学の図書館の蔵書をスキャンし、膨大な知的資産をブラウザで検索ができるようにするという。
既にグーグルはGoogle printというサービスを開始していて、スキャニングされた書籍のデータが検索結果に表示される。例えば「romeo and juliet(ロミオとジュリエット)」というキーワードでグーグル検索をするとケンブリッジ大学が出版している定本のコンテンツが表示される。大学側としては、このプロジェクトへの協力によって、蔵書をデジタルデータ化する道が開け、出版事業者にとっては、内容の一部だけを開示することにして、検索結果に表示されれば、本の広報・販促手段になりうる。今回のニュースで紹介されている大学だけでなく、本の出版者であれば誰でも希望さえすれば、グーグルはスキャニング&検索対象に加えるとしている。

世界規模のヴァーチャル図書館実現に向けた第一歩

ニューヨークタイムス紙によれば、これはグーグルが構想する全世界規模のヴァーチャル図書館の実現に向けた第一歩となる。蔵書を傷めない専用のスキャニングシステムを独自開発し、これをグーグルの提供で各大学に設置、今後、10年がかりで一冊づつスキャニング→デジタルデータ化を進めるという。プロジェクト全体でスキャニングの対象となる蔵書は1500万冊に及び、グーグルは明らかにしていないが、1冊のスキャニングに対して10ドル程度かかると考えられるので、全体としてはスキャニングだけで1億5000万ドルもの巨額の費用が投下されることになる。

グーグルらしい壮大なプロジェクトである。地球上のあらゆる情報を全ての人々にアクセス可能にするという理念に基づいてこうしたプロジェクトを次々と立ち上げているわけだが、それを可能にしているのは、検索広告という収益エンジンの存在だ。今年度の米国における検索リスティング広告の売上は、前年比190%という驚異的な伸びになる見通しで、公開したことによる潤沢な資金の存在もさることながら、検索対象メニューを増やすことが、検索ユーザーを増大させ、それがそのまま収入増につながるというシステムが回ることによって、新プロジェクトの立ち上げをさらに加速させている。

黴臭い図書館の書庫から開かれたネット空間へ

インターネットのブラウザで、Web化された情報だけでなく、過去の出版物のコンテンツまで検索できることになることの意味は、はかり知れないほど大きい。過去から現在に至るまでの人類の知的資産の全てにアクセスが可能になるのだからこれはワクワクするといわずに何といおう。これまでネットからはアクセスすることができなかった書物に記載された情報がデジタル化されることで、黴臭い図書館の書庫から、一気にネット空間という開かれた場所に持ち出されることになるだろう。そのことは、同時にこれまでデジタル情報とアナログ情報の間に存在した堅固なデジタルデバイドの壁が崩れることも意味する。
本を一冊々、スキャニングしていくという地道な作業が進行していくにつれて、その壁は自壊していくことになるだろう。ちょうどそれは、この世界を東西に分断していたベルリンの壁の崩壊にも擬える歴史的な事件として後世の人々から評価されるに違いない。

(カトラー)

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受信: 2004.12.16 09:29

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