n個の性とナルシス
先々週エントリーしたマツケンに関する記事に1yardさんという方からトラックバックをいただいた。「ゲイとは・・・・・」という私の文章に不快感を受けられたということだ。推測するに1yardさんは、ここでの私の物言いなり文体が「ゲイとはこういうものだ」と決めつけているように感じられたのではないか。
1yardさんも言っているようにblogとはパーソナルなメディアツールであり、何を主張するのも勝手、けなすのも勝手という面があるが、ゲイの友人も何人かいるので、ゲイについて私のポジションを明らかにしておきたい。
まず私は、ゲイではない。だからゲイのことをわかったように言うつもりはないが、人間のセクシャリティについては、究極的にはn個の人間に対して、n個の性があり得ると考えている。女性が好きな男性もいれば、男性が好きな男性もいる。女性のような男性を好きな男性もいれば、男性のような女性を好きな女性もいる。こうして、n個の性が存在することに対して、社会の方が勝手に分類して「ゲイ」だ「オカマ」だ「ホモ」だ「レズビアン」だと、その場限りの言葉を押しつけているだけだ。雌雄の行動様式がはっきり分離している哺乳類なのに、どうして人間だけ、n個の性という現象が起きるのかといえば、人間においては、性が単なる身体機能ではなく、「意識」の問題に変質しまったからだと考えている。別の言い方をすれば、岸田秀氏が指摘したように、人間とは「本能」が壊れてしまった動物であり、恋だ、愛だ、好みだ、セクシーだと・・・意識が作り出す「幻想」が無いとセックスさえできなくなってしまったのである。とすれば、意識に依拠するセクシャリティとは、その意識のあり方の数だけ存在することになる。一般に異性を愛する人々が多数派という意味で「ノーマル」と言われているが、それは「右利き」が「左利き」に対してノーマルと言われるのと同じ程度のことに過ぎない。
ゲイ・ピープルに「ある種のナルシズム」を感じると述べたが、それは否定的な意味でいっているのではない。ナルシズムという言葉は、もともとはギリシア神話のナルシスの寓話を起源にしている。ナルシスと言う名の美しい青年が、呪いをかけられて自分の姿にしか愛を感じられなくなり、水面に映った自分の姿に恋して「水仙(ナルシス)」になってしまったという話だ。この話は後世、「だから自惚れはいけない」というような説教話に使われてしまうが、私はむしろこの神話は、n個の性を持つことになってしまった人間の哀しみを表現していると考えている。ナルシスが水面に見たのは、等身大の自分ではなく、想像の中の別の自分自身であったのではないか。それを今の自分ではない別の自己像をイメージする力と言い換えれば、ナルシズムとは「創造性や進歩」の源泉でもある。
芸術家(アーティスト)と呼ばれる人々にゲイ・ピープルが多いのは、異性以外のものも愛せるようになってしまった人間のナルシズムの本質と深く関わりがあると考えている。
マツケンは私の趣味ではないが、のびのびと解放されてパフォーマンスしている姿というのは良いものである。ゲイであろうがなかろうが、マツケンサンバを踊る彼には、吹っ切れた解放感が感じられるから社会的なブームになろうとしているのだろう。まあ、そんなことはないだろうが、マツケンから私に「自分はゲイではないのでブログの文章を修正しろ」と言ってこられたら喜んで対応させていただく。
3月8日はサンバの日!
ところで、Tinkleさんのブログで、とうとう3月8日に東京ドームでマツケンサンバのイベントが開催されることになったと聞いて、思わず申し込んでしまった。チケットには、観客席で観覧する一般チケットとグランドに降りてマツケンと踊る「サンバ券」とがあるそうなのだが、もちろん申し込んだのはサンバ券だ。
(カトラー)
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コメント
サンバを踊るカトラーさんを想像したときもかなり、イメージと違っていたのでショックでしたが、…そこまで行ってしまわれたのですね…。
さて、私は異性愛なので、やはり、同性愛について分かったようなことを言うことはありませんが、自分の子供が将来同性愛者に育ったとしたら…特に何も言わないと思います。(今、小3と六歳だけど)
今の社会と同じ状態で、と、仮定すると、「愛する人との遺伝子を結んだ子供を、他人に産んでもらうだけでもとやかく言われるんだから、子供が作れないのがしんどいねぇ。」と、言うでしょうね。身体改造については「万が一、男性同士の遺伝子で子供が作れる時代が来るかもしれないから、生殖機能は残しておいた方が」と言うでしょうね。それから、「結婚ができないんで、愛する人に自分の物を残せないのだから、遺言書を婚姻届がわりにして、別れるときはそれを破棄する、ってのは?」と、言い出すんではないかと。
「男なんだから男を愛するな!」って、「カトラーさん、マツケンサンバを踊らないで!」っていうのと、どう違うのか分からない私は、やはりダメ親なんでしょうか?
投稿: わに庭 | 2005.01.24 11:37
トラックバックありがとうございました。
ゲイの問題というと、私はいつも思い出すのがいわゆるボーイズラブです。
ボーイズラブというのは、(主に女性が)見目麗しい男性同士に芽生える恋愛感情を嗜好するジャンルなのですが、彼女たちは男性同士の性というのにどんな幻想を持っているのかしらと。
肉体を伴う性愛であれば男女以外はありえないような気がするのですが、彼女たちは本当のところ肉体の欲望はわりと二の次で、より精神的に分かり合うこと(同性であれば共感しやすいという事か)の方が重要でないのかと。
一般書店の書架にボーイズラブ小説が並ぶのをみて、これこそがより精神性の高められた愛であり、それが一般に認知された姿なのかと思うことしきりです。
精神的な性愛が同性に向けられると、社会的に問題であるという面はあるかもしれませんが、それは混ぜて語る話ではなく、それぞれ別のテーブルでまず議論を尽くした方が良いような気持ちがしたりしました。
そうそう、サンバ席、レポート楽しみにしてます。^^
投稿: Tinkle | 2005.01.24 12:47
セクシャリティの話というのは、好き嫌いというシンプルな世界でやりとりされることだけに奥が深いですね。
ボーイズラブ系のコミックが書店に並んでいることは気づいていましたが、「誰が読むのかなあ」といつも疑問に思っていました。そうですか、女性たちが読者なんですね。
でも少年の頃の自分を久しぶりに思い出してみると、異性と同性に対する感情が未分化でボーイズラブのようなものを感じていたことがよみがえってきます。ヘルマン・ヘッセの「デミアン」の世界の感じかな。
このように書いていたら、何かボーイズラブのコミックを読んでみたくなりました。私のようなオヤジがそんなことをしても許されるのでしょうか。マツケンサンバを踊って、ボーイズラブにはまってますといったら、これはもう結構立派な変態で、いくら心の広い、わに庭ママさんからも見捨てられてしまうかもしれませんね。
投稿: katoler | 2005.01.25 00:37
見捨てる?トラバしましたわよ!
投稿: わに庭 | 2005.01.25 23:44
おお、盛り上がりかけてる・・・(^^;
男性同士の熱い友情・深い信頼関係というのは、女性から見ると恋愛感情のように見えなくもない、ですね。互いに信頼しあい、依存しあうというのは。
でもそれならどうして、女性同士のソレがあまりないのか(皆無じゃないですが)。
一般には、女性が女性を対象とした物語にすると、妙に身につまされてしまってのめりこめないからといううわさも聞きます。
しかし、いわゆるBLは男性の読者も結構あるといううわさもまた聞くので、ここにも何か趣深い作用がかかっているのかもしれません。
投稿: Tinkle | 2005.01.26 15:13
ああ、途中で送信してしまった。(^^;
ぜひ風と木の詩を読んでみてほしいかもです。
まだ小学生のころ、いとこの部屋にこれがあったので読んでしまい、なにか見てはいけないものを見てしまったような気がした思い出があります。
そして、今思うとなぜいとこの部屋にそれがあったのか・・・(女性ですが)。
今度機会があったら聞いてみたいものです。
投稿: Tinkle | 2005.01.26 15:16
うーん、ここで話を続けていいのかどうかわからないけど、Tinkleさんのところでそういうエントリーがなかったので。女同士で名作もないわけじゃないですけど、柴田昌弘や、佐藤史生にあるけど、「男性滅亡後の社会」だし。あ、名香智子が、いいのを描いているかな?
まあ「風と木の詩」があったいとこの方が今、40歳前後なら、持ってて当然でしょ?多分「空がすき!」もあったと思われ。私は「ポーの一族」「トーマの心臓」派でしたがね。
投稿: わに庭 | 2005.01.26 16:23
わに庭さん、素敵なトラックバックありがとうございます。
「本気なんでしょうねえ?カトラーさん?」
と一喝(?)され、昨晩、慌ててbk1でご推薦の2冊を購入させていただきました。この週末は、ボーイズラブ(BL)の耽美の世界に触れて、違う自分を発見してしまうかも知れません(ドキドキ)。
Tinkleさんがいうように、BLは女性のものであって、男性のものではない。逆にGLがあって、それを男性が愛でるというような形での対称性は成り立っていないのですね。
一部のフェミニズム論者は、男女の問題を全て対称図式(=平等図式)の中でとらえる傾向がありますが、政治的な言葉としてはアリでも、現実とはかけ離れていると思います。
この非対称性ということでいえば、男はもともと女性から分化した「女のなり損ない」であり、子孫を残せるという点をとって見ても生物としては女性の方が格段に上等だというのが私の考えです。別の言い方をすれば、女性は放っておいても女性に成長していくけれど、何かしら幻想を持たないと男になれないのが男かもしれないと・・・
だから、「男性たるべし」という抑圧が稀薄になっていくと、男の子は皆、ゲイになるのが本当は自然(ノーマル)なのかも知れません。・・ってなことをわかったように言ってるとまた顰蹙をかってしまうかも知れませんね。
投稿: katoler | 2005.01.26 17:53
「男性たるべし」という抑圧もありますし、「父親たるべし」という圧力というか、制度というか、そういうものもあるのではないかと思いました。最近は、例外がかなり増えてはいますが、一定の割合ではあるとしても、出産した女性は、ある意味、自然に母親になるのではないかと思いますが、父親、ってのは、自然にはなれない。イメージ化も必要だろうし、母親の支援がないと、父親としてのスタンスも保てない「かよわい存在」ではないかと思います。
父親に対する経済的依存状態がなくなった場合、多くの男がいわゆる「父親」であることをやめるのではないだろうか。自分から降りる場合もあるだろうし、ひきずり下ろされる場合もありそう。
思い込みと努力、忍耐といったようなものが、ひょっとして、男を男たらしめているのだろうか…。
投稿: miyakoda | 2005.01.27 10:03
miyakodaさんお久しぶりです。「思い込みと努力、忍耐といったものが男を男たらしめている」という独白は、よ~くわかります。
でも、だとしたら男というのは何ともせつない存在ですね。父親であることをやめる以前に男をやめる男もたくさん出てくるのかも知れません。
かくしてこの国はゲイの国になる?
投稿: katoler | 2005.01.28 00:38
こんちは。
はじめましてです。
なんか、自分の属性としての性別と、自分の心が選ぶ性別が違うから、結果的に同性の人を愛しちゃう話と、自分の性別を認識した上で、同性の人を愛する話がごっちゃになってるみたいで、男性たるべしの話の主旨はアホな自分には訳わからんです。
ボーイズラブは、ボーイズラブ小説の世界に限っていえば、女の子の幻想だし、ゲイは現実だし。
肉体的に男性な性同一性障害の人が男の人を愛したら、それはゲイじゃないし、肉体的に女性な性同一性障害の人が男の人を愛したら、それはゲイに近いし。
あ、ポーの一族とかトーマの心臓は、わに庭さんが推薦済ですね。
名香智子のシャルトル公爵シリーズもお薦めです。
どうせ父性の話が出たなら、鈴木いづみの「女と女の世の中」はどうでしょ?
直裁的な関係はないかもしれないけど。
投稿: kemeko | 2005.02.01 20:36
kemekoキター!
カトラーさん、マツケンサンバを踊ったばっかりに、
ヲタの殿堂と化してしまうかもしれませんぞ!このサイト。
この人、働く母ちゃんでありながら、私より深いヲタですから!
…それから、カトラーさん、もしかして、風と木の歌途中から買った?二冊って…。
あれ、バナーが色っぽいのを選んだだけです。最初から最後まで読んでください。
投稿: わに庭 | 2005.02.04 16:18
kemekoさん、はじめまして。わに庭ママの折り紙つきということで・・・コメント書き込んでいただき光栄です。
名香智子のシャルトル公爵シリーズ、鈴木いずみさんの本もこれまで縁がありませんでした。早速、チェックしてみま~す。
わに庭さんご推薦の「日出処の天子」の1巻を読みましたが、いやこれはスゴイ名作ですね。古代世界にまで想像力を届かせる才能は、超能力といってもいい。折口信夫と同質のものを感じました。
それと、ご指摘のとおり買ったのは風と木の歌の4巻でした。1巻も取り寄せて読んでみます。
投稿: katoler | 2005.02.05 21:22
>わに庭さん
いや、貴方程深いヲタじゃないって(汗)
けど、気になる。風と木の「詩」。
>カトラーさん
と、いうわけで、「風と木の詩(カゼトキノウタ)」なのです。(どーでもいいことですが。)
投稿: kemeko | 2005.02.07 14:26
>kemekoさん
何をおっしゃるウサギさん。
カイ・シデンと言ってガンダムとガンダム以外の両方まで思いつくであろう人は、私は、あなたとカトラーさんぐらいしか心当たりありませんがな。
>カトラーさん
ってんで、挑戦状送りましたからよろしくー。
投稿: わに庭 | 2005.02.12 11:52
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