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カトラーが魔都「上海」を行く①                ~上海の幸運の木(ラッキー・ツリー)~

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昨年、シャングリ・ラ ホテルが主催したパーティに参加して、アトラクションで開催された抽選会でラッキーなことに浦東(Pudong)シャングリ・ラの宿泊券が当たってしまった。先週の連休、中国はちょうど旧正月にあたっていたが、カトラー家の奥様と2人して上海行きとあいなった。

シャングリ・ラ ホテルは、日本における知名度こそ低いが、シンガポールの華僑資本が経営する世界的なホテルチェーンである。以前「何故、日本にシャングリ・ラをつくらないのか」と担当者に質問したところ、日本で1ヶ所建てる投資で中国では5ヶ所建てられるからという返事が返ってきた。それだけシャングリ・ラは、中国市場の可能性に賭け、経営資源を集中させている。上海のシャングリ・ラは、その中国戦略の要といっても良い存在で、浦東地区の有名なテレビ塔「東方明珠塔」に隣接し、設備といい、サービスといい、申し分のないホテルであった。
われわれの部屋は、窓から「東方明珠塔」が目の前に見えるロイヤル・スイート、抽選にでもあたらなければ絶対泊まれないような広い部屋で、到着した当初、カトラー夫婦は単純に舞い上がって興奮していたのだが、じきに細かいところに目が行き始めた。広いバスルームのトイレにつながるドアノブの金具の取り付けが雑で、ガタピシゆるんでいたり、タイルの目地がよく見ると不揃いだったりする。たぶんこんなことに気がついたり、気にしたりするのは日本人だけだろうなと話し合った。

中国は「文明の国」

中国は一言で表現すれば「文明の国」だと思う。タイルの目地の付き方までどうしても気にしてしまう日本人と違ってこの国の人々は構想力があり、その分大雑把である。人間の生理に反したものを平気ででっち上げる。
バベルの塔のように天を目指す超高層ビル、浦東空港と市街をわずか8分で結ぶリニアモーターカーなど、まるでSF小説の中の近未来都市のような上海・浦東地区を眺めていると、しだいに現実感が遠のいていって、何か大仕掛けの夢でも見せられているような気分になってくる。しかも、こうした風景を現出させているのは、実は外国からの資本(投資)であって、中国の今の実体というよりは期待値を体現した蜃気楼のようなものだ。
そもそも「文明」と「滅亡」はコインの裏表のような関係にある。「滅び」があるからこそ文明が成り立つと言い換えても良い。中国という国は、この文明の興亡を長い歴史の中で繰り返してきたわけで、上海という都市には、そうした「文明」特有の危うさが感じられる。

グッチやヴィトンが並ぶおしゃれな中心街の道端で老婆がトウモロコシを売り、超高層が林立するビル街をママチャリに乗った親子が野菜を荷台に載せて、何かをわめきながら走っていく・・・下町のごちゃごちゃした横丁で育った私のような人間には、こうした中国「文明」のスケール感とミスマッチ感は理解の範囲を超えてしまっていて、どうも落ち着か悪かった。

豫園のラッキーツリー

2日目、上海の有名な観光スポット「豫園」に出かけた。旧正月ということだからだろうか、初詣の浅草のような、否それよりももっと凄まじい人出だった。どこからともなく人が湧いてくるという感じだ。浅草の人出はそれでも一方向に流れるが、「豫園」周辺の人出は、のたうち回る龍のようにどこをどう流れていくのか見当がつかない。
人の流れにもまれ、身をまかせてしばらく歩いて行くと、突然、広場に出て視界が広がった。見ると、広場の真ん中に黄金色の葉で化粧された1本の木が立っている。その木を取り囲んだ大勢の中国の人々が、願い事を書き付けた赤い布を木に向かってワーワー言いながら必死に投げつけていて、願掛けされた大量の赤い布が枝垂れ桜のように垂れ下がっている。この木(ラッキー・ツリー)をみた時、上海に来て初めて上海の人々の心や思いに触れたような気がした。

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何かの事情で、あのバベルの塔のような浦東地区の高層ビル群が消え失せたとしても、人々がこのラッキー・ツリーに向かって願い事を書き付けた赤い布を投げ続けることは、けっして変わらないに違いない。

(カトラー)

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受信: 2005.04.28 22:59

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