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カトラーが魔都「上海」を行く③                ~上海発世界ブランドと人民帽~

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世界中のブランド商品が上海市場をめざしている。
シャネルやルイヴィトンなど高級ブランドショップが上海のメインストリートに軒を並べ、ファーストフードや外食の分野でも進出を競い合っている。中でも今回の上海行きで感じたのが、「STARBUCKS COFFE(星巴克咖啡)」の存在感であった。空港やビジネスエリアは言うまでもなく、「豫園」など歴史的な旧跡にまで店を構えているのには驚かされた。

starbucks_yoen聞くところによるとスタバは北京では故宮博物館の中にも出店しているとのことだ。日本でいえば、法隆寺や国立博物館に出店しているようなものだ。これで社会主義の国というのだから恐れ入ってしまう。

スタバの出店攻勢の裏側に中国の思惑

スタバが出店を加速させているのは、基本的には中国の消費市場としての成長力に期待しているからだが、加えて、歴史的旧跡などを狙い撃ちする形で出店しているのは、中国3000年の歴史が持っている「悠久性」というイメージを利用して、「STARBUCKS」ブランドを強化するという狙いもあるだろう。世界の最先端の文物を上海にどん欲に導入しようとしている中国当局の「新租界主義」もそこに作用していると考えられる。

「世界にあるモノは、何だって上海にはある。世界に無いモノも上海にはある」

中国の指導者達はこう言って世界に向けて胸をはりたいのだ。先進国のビジネス街の光景を象徴するようになったスタバは、上海という街のイメージリーダーとしても不可欠なのであり、スタバの中国における出店攻勢は、こうした中国側のイメージ戦略によって裏打ちされているに違いない。

そして、「世界の工場」として世界中から資本と企業を集めた中国が、次に狙うのは中国発の「世界ブランド」の創生である。リニアモーターカーを世界に先駆けて導入し、森ビルと組んで世界最高層のオフィスビルの建築計画をブチ上げる中国は、改革開放のショーウィンドウとしての役割を上海に担わせ、コスモポリタンシティ(=世界ブランド)として世界に向けて発信するという次の戦略を始動させている。

上海の「新天地」と名付けられた新しい観光スポットが人気を呼んでいる。スタバはもちろんのこと、ライブハウスやカフェ、ブランド雑貨やファッションブティックを集積させた商業モールだ。一応、上海の古い街を再開発したというストーリーになっているが、実際は昔の町並みなどはカケラもなく更地から作り上げた人工街であることが実際に行って見ればよくわかる。ここを歩いているのは、ほとんどが旅行者で店内では英語が通じ、外国人が店主の店も少なくない。

Shanghai Tangの人民帽

この「新天地」の中で「Shanghai Tnag(上海灘)」というファッションブランドが目に止まった。ベネトンのファッションを思わせるような鮮やかな色遣いで、中国の伝統的なデザインモチーフを随所に織り込んでとても魅力的なものだった。既に海外進出もはたしており、ニューヨーク、パリ、ロンドン、香港、シンガポールにブティックを出店させている。
そのデザインミッションがパンフレットに記載されていた。

Shanghai Tang’s design mission is to revitalize Chinese design by interweaving it with the dynamism of the 21st century. The result is a vibrant and witty fusion of “East meets West”.

これを読めば、Shanghai Tang があらかじめ世界ブランドとして構想されたものであることが理解できるだろう。確かに東西の出会いによって生まれたというShanghai Tanagのデザインセンスには、コスモポリタン・シティとしての新しい上海の姿が投影されているように思えた。

店内の商品を見ている時にひとつの商品が気に入り、購入した。それは「人民帽」である。「改革開放」時代以前は、中国といえば、人民帽、人民服そして自転車というのが一般に流布されたイメージであり、人民帽は毛沢東語録が記載された赤い手帳とともに中国共産党の権威の象徴であった。この帽子を被り毛沢東語録を振りかざした紅衛兵が「毛沢東主義への回帰」を叫んで先導したのが、悪名高き「文化大革命」だったが、社会運動としては全く破綻し、その後中国は長い停滞に苦しんだ。人民帽というと、私などが真っ先に思い浮かべるのは、この「文化大革命」のことである。

そして、40年後の上海では、驚くべき変化、正に「文化大革命」といってもよいような文化状況の変化が進行している。
かつて毛沢東主義を絶叫する紅衛兵たちの象徴でもあった「人民帽」は、Shanghai Tnag の手によって若い女の子たちが「カワイイ」と嬌声を上げる最先端のファッションとして蘇った。

(カトラー)

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コメント

上海灘の経営者、David Tang氏は香港のビジネスマンです。かつてはロンドンのおしゃれ系デパート、Harvey Nichollsを買収などして名を馳せていましたが、ご指摘のとおり、中華デザインの復興を掲げて上海灘を香港で立ち上げ、世界に展開しています。

アイディアはいいのですが、あまりに価格設定が高すぎて、地元の香港人には馬鹿にされています。しかし馬鹿にされているのを知らずに買っていく日本人・西洋人観光客の間での同ブランド人気が、物を安く大量に作るだけがビジネス・アイディアであった中国人をしてデザインの重要性、付加価値の創造ということを意識させ始めています。

香港にお寄りの際は是非、セントラルの上海灘の本店と共にDavid Tang氏が運営するプライベート・クラブ、China Clubへいってみてください。文革も天安門事件もジョークにしてしまうようなそのセンスを垣間見ることができますよ。

投稿: Yute the Beaute | 2005.02.28 13:04

Yute the Beauteさん書き込みありがとうございます。上海灘は香港発のブランドだったのですね。香港のビジネスマンが経営者ということを教えていただき、とても納得できました。地元の香港人にも価格設定の高さから馬鹿にされているというお話は意外でした。でも思い起こしてみれば、新天地でも店内にいたのは外国人旅行者がほとんどでしたね。ということは、上海灘は、まだ外国人向け中華ブランドというのが実態で、コムデギャルソンやワイズなど日本人デザイナーのセンスが世界中から認められたのとはちょっと違うのかも。人民帽をおしゃれにパロッテ見せるというセンスは、かなり戦略的でドキッとさせられましたが、上海の人々の意識レベルがそこまで上がっていると考えるのには、まだ無理があるのかもしれませんね。
香港の本店と、China Clubですか、ぜひ覗いて見たいです。上海灘のおしゃれな人民帽と人民服を着た女の子たちが天安門広場を行進したら、それこそ「文化大革命」と呼ぶべきでしょう。

投稿: katoler | 2005.03.01 00:25

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投稿: Pleaksmoisise | 2010.08.04 08:28

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