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そうだ、栃木、行こう①:日本のスローライフ運動の原点「益子」

NEC_0263NEC_0262このブログに何回も登場しているクリングルの村井君は、栃木県の出身で、持ち前のフットワークの良さと人間力を活かして東京のメディアや人材をネットワークして那須湯本温泉などの地域興しの仕事をてがけている。昨日は、村井君の誘いで益子を案内してもらった。

益子というと濱田庄司などを生んだ「益子焼き」の里、という固定したイメージしか持っていなかったが、初めて訪れた益子の町には新鮮な驚きを感じた。
「STARENET CAFÉ」という、もともとは窯業所の作業所だった建物を再生したカフェが、地元だけでなく、連日、東京からもたくさんの人々を呼び寄せるほどの評判を呼んでいる。私と村井君がこのカフェを訪れたのは、まだ開店時間から間もない頃だったので、客の姿はまばらであったが、すぐにいっぱいになってしまった。この店のオーナーは、以前は、西武百貨店のバイヤーとして活躍していたそうで、カフェの中には、ギャラリーが併設され、オーナーの目にかなったクールで、それでいてどこか土の香りのするオリジナル雑貨や陶器、ファッショングッズが並べられていた。店で使われる食材は地元で調達されたオーガニックなものであることにこだわり、地元で焼かれたオーガニック・パンなども買い求めることができる。

次に訪れた、益子焼窯元「見目(けんもく)陶苑」内にある「土空間」(写真)も、以前、陶工達がロクロをひいていた作業所の建物を改築した新感覚のカフェだ。店内にはいると、昔の土間がそのままの形で生かされていて、店名の通り土の香りのする空間をつくりあげていた。薄暗い店内には、薪ストーブが焚かれ、赤々と燃える炎に照らされて、古い建物の大きな柱や梁が優しい表情をうかべていた。そんな空間の中で食した、この店のランチプレート(1090円)には感動。地元で採れた有機野菜を中心に料理された総菜と、古代米のご飯が、都会の暮らしに疲れた体にはしみ渡るようだった。

益子に増える新感覚の店

今、益子では、こうした新しい感覚をもったカフェやギャラリーが続々と誕生している。スローライフに対する関心の高まりを背景に、陶芸や益子のような場所に新鮮な魅力を感じる若い人々が増えているということもあるだろう。「スローライフ」と今更、横文字で表現するまでもなく、益子は柳宗悦や濱田庄司らが推進した「日本民芸運動」の発祥の地でもある。民芸運動は、一般には芸術運動として捉えられているが、日常生活と芸術を融合させる(用の美)を提唱したという意味では、正しく「生活運動」でもあった。民芸運動を主導した濱田庄司は、バーナード・リーチとともに英国に渡り、陶芸作家としての最初の成功を収めるのだが、イギリスの田舎の人々の暮らしぶりに感銘を受けたことが、その後の創作活動や生き方に大きく影響していると、柚木沙弥郎氏が講演の中で以下のように紹介している。

濱田先生は・・・(前略)・・・  特にリーチさんと一緒に訪ねたエセル・メレーというイギリスの織物工芸の第一人者の生活ぶりに大きな感動を受けました。彼女の生活ぶりというのは、ある統一があって、すべてがバランスが取れている。そして静かである。こういうことが彼女の日々の生活に対する自信となり、土台にあって、もちろん宗教的な信仰もあります。そういう中から彼女の作品が生れているということを実感したんです。スリップウエアというイギリスの伝統的な焼物を使ってメレー夫人が自分で作った料理をご馳走になったそうです。   この時の話を濱田先生は繰り返し民藝館で何かの折りに話されていて、それだけ若い頃の強い印象に残ったんだと思います。
昔から益子の陶工たちの多くは、半工半農の暮らしで、日々の生活と作陶活動は一体のものであった。益子に移り住み、生涯に渡って偉大な作品を生み出した濱田庄司は、偉大な「スローライフ」の実践者でもあったのだ。

台頭する若い陶芸作家たち

現在、益子には600人にのぼる若い陶芸作家やその志望者が集まっているという。その中には海外から益子に移り住んだ外国人の陶芸家も多い。濱田庄司がバーナード・リーチと築いた国際的な絆は、今もこの町に集まる若者たちの心に遺伝子のように受け継がれている。
陶芸を志す若者たちは、厳しい修行生活を送っている。弟子入りすると給料らしい給料も無い、ただ、ただ土と向き合うばかりの修行僧のような生活だ。それでも多くの若者が、この町をめざすのは、土と向き合うひたむきな自己探求の世界に惹かれるのと、そうした若者たちを受け容れる、この町の懐の深さがあるからだ。

益子の町を歩き、将来の可能性を感じさせる若い作家の作品を見て回るのは楽しい。益子の作家の作品を展示している陶芸メッセという展示館で、まだ26歳の若い作家の作品に目がとまった。竹下鹿丸という作家だが、どの作品もとても強い存在感を放っていた。町のギャラリーで彼が作った小さな「ぐい呑み」を見つけたので、すぐ買い求めた(5000円)。「将来、鹿丸君が大家に成長すれば、このぐい呑みの値段は何十倍にもなるね」と言って村井君と笑いあった。

今、そのぐい呑みで酒を呑みながらこの記事を書いているが、いつもの安酒から、気のせいか若々しいかおりが立ち上ってくるようだ。がんばれ、鹿丸!
shikamaru_guinomi1
(カトラー)

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