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そうだ、栃木、行こう②:クルマをすてよ、町へ出よう

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栃木では、クルマが無いと暮らしていけない。
東京を中心として放射状に広がる交通インフラ網は、栃木や茨城あたりまでくると網の目が急に粗くなり、クルマしか交通手段が無くなってしまうからだ。そのためか、立ち寄った茂木の「道の駅・もてぎプラザ」がやけに繁盛していた。

ここの「道の駅」には名物がある。「おとめミルク」(写真)というなんともほのぼのとしたネーミングのソフトクリームだ。栃乙女(トチオトメ)というのは、栃木の特産である苺のブランドだが、その苺をソフトクリームにたっぷりとつぶし込んだ季節限定の人気商品である。この「おとめミルク」を買い求めようと「道の駅」に立ち寄った時、駐車場がほぼ満杯状態になっていたのには驚かされた。おとめミルクの人気も影響しているのかも知れないが、それだけクルマが移動の足として定着しているのだろう。

郊外都市で進む「ファースト風土化」現象

栃木に限らず日本の郊外の町並みは、どんどん画一化して、個性を喪失している。幹線道路沿いにロードサイト店が軒を連ね、その光景はどこに行っても一緒である。マクドナルド、KFCに紳士服量販店、場所によってはラブホテルやパチンコ店のけばけばしいネオンサインが立ち並ぶ。こうした街の景観の画一化現象を「ファースト風土化」と呼ぶそうだ。皆がクルマで移動するから、ロードサイト店ばかりが流行り、昔からあった商店街や個人商店がつぶれていく。中心市街地がさびれていって、風俗店やサラ金がその後釜に座り、町のイメージがさらに悪化していく。人をつないでいたコミュニティも壊れていき、その結果、人心も荒んでいく。もちろんこうしたプロセスが、全てモータリゼーションのせいなどというつもりはない。しかし、栃木だけでなく、茨城や群馬などの郊外都市で「ファースト風土化」が進み、それと並行するように凶悪犯罪が頻発するようになっていることは紛れもない現実だ。

栃木で頻発する、いじめ・凶悪犯罪

生粋の土地っ子である村井君のお母さんも「栃木は今ではいじめの発生率で全国ワーストワンになってしまった」と嘆いていた。今回の栃木行きで、地元の素晴らしい方々と親交を深められたので、ここで暗い事件のことを持ち出すのは気がひけるが、記憶に新しい所では、地元の日産の自動車工場に勤めていた若者たちが職場仲間を監禁、リンチ、暴行を繰り返し死亡させた「栃木リンチ殺人事件」、覚醒剤を常用していた父親の同居人から暴行を受け、幼い兄弟が川に投げ込まれて殺された「小山2児虐待殺人事件」、隣家とのトラブルの挙げ句に猟銃で主婦を殺害してしまった猟銃殺人事件など、耳を疑うような凄惨な事件が栃木で頻発している。これらの事件に共通しているのは、殺人に至る動機の稀薄さ、何かに憑かれたように人を殺してしまう短絡的な行動パターンである。そして、そうした行動の裏側に透けて見えてくるのは、人同士のつながりが壊れた状況下で、何かのきっかけでキレてしまい、歯止めがないまま殺人にまで暴走してしまうという孤立した精神の構造である。
ノンフィクション作家の吉岡忍氏は、こうした犯罪を生んでしまう街を「生活圏の街」と呼び「便利だけど中心がない、快適だけれど地域的まとまりも距離感もない」と表現している。
映画「スーパーサイズミー」が描いたように、ファーストフードが人の体を蝕むのだとしたら、ファースト風土化は、人と人とのつながりを蝕み、コミュニティを破壊するといえるのかも知れない。こうした状況にようやく気がついて新たな動きも生まれてきている。
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路面電車(LRT)ルネッサンス

宇都宮に路面電車を導入するという取り組みもそのひとつだろう。かつては、邪魔者扱いされて次々と都市から姿を消していった路面電車が、中心市街地の交通インフラとして再び表舞台に立とうとしている。主にヨーロッパを中心に、かつての路面電車は、LRT(Light Rail Transit)と呼ばれる低床、低公害の新しい交通機関として生まれ変わり、中心市街地の活性化の切り札として再評価され、「路面電車(LRT)ルネッサンス」とでも呼ぶべき状況が生まれている。町の中心では自転車のようなゆっくりとした速度で走るが、郊外では時速70キロ程度まで速度を上げて運行でき、小さな町と町を結ぶ足にもなる。交通インフラをクルマ一辺倒で考えるのではなく、環境、状況に応じて「棲み分け」をさせるという新しい考え方だ。

このLRTの話を聞いたとき、「宇都宮の中心地にLRTを走らせ、益子まで結んだら素晴らしいのになあ」とまず思った。路面電車にのって餃子店めぐりなんていうのも楽しい。そうしたら、宇都宮は、COOLでスローライフな街として生まれ変わるに違いない。

(カトラー)

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コメント

いつも楽しく拝見しています。
「ファースト風土化」を私も危惧しています。どこに行っても同じ様な景色。本当に恐ろしいです。まだまだ田中角栄の呪縛から日本は解放されていませんね。「国土の均衡ある発展」などという恐ろしいスローガンがある限り、均質化に歯止めはかからないでしょう。知識情報社会では多様性こそが重要視されるべきなのに。

投稿: napo | 2005.03.18 07:25

LRTなら老人でも乗りやすいでしょうし、新しい街づくりのモデルになるかもしれませんね。
「歩いていける」ところで生活が事足りる。そんな街づくりが必要だろうなと感じています。

投稿: ひろ | 2005.03.18 17:43

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