杉村太蔵が炎上している? ~見えてこないニートたちの怒り~
前回のエントリー記事「万国のニート、フリーターたちよ、団結せよ!」に対して異論や反論、さまざまな反応をいただいた。コメント、トラックバックに対する答えも含めて、今回もこの問題をとりあげたい
前回の記事でとりあげた三浦展氏の最近の著作「下流社会」で紹介されている意識調査によれば、「下流」の人々は、フジテレビと自民党を好む傾向があるのだそうだ。だからというわけでもないだろうが、竹中平蔵氏のブログに「全国のフリーターよ、自由民主党のもとに結集しよう!」という記事(たぶん竹中氏の周辺スタッフによるもの)が掲載されていることを、響現さんのトラックバックによって知った。その記事を見た時、最初は私の記事のパロディか?とも思ったほどだが、よく見ると竹中平蔵ブログの記事の方が先にエントリーされているようなので、そういうことでもないらしい。
その竹中平蔵ブログの記事中で、パソナ代表の南部靖之氏の次のような言葉が紹介されている
「フリーターのような立場なら、本当の意味で一生涯の終身雇用が可能だ。だから今は不安定といわれるフリーターが安定した働き方になる」
ここで南部氏が言っている内容は、ダニエル・ピンクの著作「フリーエージェント社会の到来」がネタ元で、彼が言うところの「フリーター」は「フリーエージェント」という言葉に置き換えることができる。
フリーター=フリーエージェントか?
フリーエージェントとは、今でいえばSOHOや専門知識をもった弁護士や税理士など、会社組織に帰属せず、自分のスキルやネットワークによって仕事をしている人々のことをさす。ダニエル・ピンクが主張しているのは、近未来の就労形態が企業雇用型からオーディション型雇用にシフトするという見方である。米国では、既にこのフリーエージェントが全就労者数の1/4を占めるまでになったことが紹介されている。フリーターという存在をこうしたフリーエージェントという近未来のワーク・スタイルと地続きのものとして捉える考え方は、フリーターという存在に対する見方としては最も楽観的な部類に入るだろう。フリーターを社会的弱者と考えるのではなく、むしろ新しいワークスタイルとしてのポジティブな面を捉えていこうとする姿勢自体に異論を唱えるつもりはないが、
「フリーターは、『夢』以外に失うものを持たない。彼らが獲得するものは『成功』である。全国のフリーターよ、自由民主党のもとに結集しよう!」(竹中平蔵ブログ)
とまで言われると少々悪のりが過ぎており、悪い冗談を聞かされているような気になってくる。これを書いたと推察できる自民党のスタッフは、結局、この日本には「ニート、フリーター」に関連した社会問題というものは存在していないとでも言いたいのだろうか。
ニート、フリーターの支持を集められない日本共産党
ニート、フリーターをめぐる問題の背景に経済の構造問題があると真面目に指摘しているのは、どこあろう日本共産党である。さすがに「万国のニート、フリーターよ団結せよ!」とまではアジってはいないが、小泉構造改革の強者優先の政策の歪みがもたらした問題であるという認識を、その言い方は相変わらずステレオタイプではあるにせよ、はっきりと示している。ただ、日本共産党にとって寂しい話は、先の選挙の結果を見てもわかるように、こうした主張に対して当のニートやフリーターの人々は全く無反応だということである。
前回の記事で「ニート、フリーターは階級意識を持つべきである」と書いたことに対して、トリルさん、武井さん、山田建築設計室さんからは、そりゃあ無理だよという趣旨の意見をいただいた。外野から見て、いくら彼らが問題を抱えた状況に在ったとしても、そのことで「階級意識」を醸成させたり、社会に向かって組織的な意志表示をしていくような集団倫理を形成していくことがとてもできるとは思えないという指摘だった。この指摘自体その通りだと思うし、周囲のニート、フリーター青年たちの顔を思い浮かべても「きみたち自身が社会に対して問題提起すべきである」と面と向かって言ったら、日本共産党のように相手にされないか、「リーマン(サラリーマン)おやじが説教臭いこというんじゃねえ」と反発を買うのが関の山だろう。彼らからすれば、ひとつの生き方を選択しているともいえるわけで、それによって日本が「階層化社会」になろうが、自分たちが生きる世界が「下流社会」と名付けられようが、Espresso Diary@信州松本さんが言うように「それが何 so what?」ということになるだろう。
また、ひさしさんやmiyakodaさんからは「フリーターとニートを一緒にして論じるのは如何なものか」という指摘があった。個人的な考え方としても、日々、働いているフリーターと無為なニートがいた場合、社会的存在として異なる生活態度であると思っている。そこでニート、フリーター、フリーエージェントなどの関係を別図のように、マトリックスに整理してみた。これに従えば、フリーターとニートいう言葉の関係は、ニート的なフリーターとフリーエージェント的なフリーターが存在するという形で広義に捉え直すことができると思う。
「お金稼げて、言葉巧み」が、今の価値基準
けれども、本質的な問題とは何かといえば、このマトリックスの軸を構成している価値観そのものである。つまり、生産性(=効率)と社会的コミュニケーション力(=外向性)という価値観によって構成されている、このフォーマットそのものが、実はグローバル化された先進資本主義社会の価値観の反映になっているということだ。
今の世の中では、一般的に「ひきこもり」ということだけで否定される傾向があるが、創造的な作業をやっているアーティストや学者の多くは本来的に「ひきこもり」である。20~30年前の日本であれば、田舎の村から一歩も外に出ることなく一生を全うするような人々がたくさんいて、地域の中で尊敬を得ていたはずだ。それが、いつの間にか、お金が稼げて(生産性)、言葉巧みな(外向性)人種がエライというような風潮に日本全体が染まってしまった。
このマトリックスを眺めていて気づいたことがある。生産性は低いとしても、社会的に認められ自由に生きていく生き方(仮にそれをNPO的生き方と名付けるが・・・)が存在するのではないかということである。説教臭いといわれることを承知で、特にニートと呼ばれる人々に対して私が言いたいのは、杉村大蔵の与太話を聞きにいく暇があるくらいなら、ボランティア活動や体を使った農作業の手伝いでもしたらどうかということだ。自民党的価値観とは別の場所であなたがたが見事に生きてみせることが、ニートやフリーターと呼ばれる人々にとって、今の立場を本当の意味で将来につなげる道になるだろう。
杉村太蔵のブログが炎上している?
余談となるが、私は「究極の棚ぼた」で衆議院議員となった杉村太蔵に対して何の思いも持っていないが、自民党が杉村を「広告塔」として利用するやり口というのは、目に余るものがある。たぶん、裏で広報のプロが付いて色々仕掛けているのだろうが、ニートを集めたミーティングなどを開催して、杉村を「広告塔」にしてこうした無党派層の取り込みをはかるなどというような姑息なことを考えているのだろう。
杉村太蔵のブログというのがある。ニートを対象としたミーティングの告知以降、更新されていないが、見かけ上、トラックバックも受け付けているように見えるが、実際は、何度かトラックバックをかけてみればわかることだが、その機能はシャットダウンされていて記事をトラックバックすることができない。このことからわかるのは、2つの可能性である。
①ニートを集めたミーティングのことがマスコミで流れた時点で、他のニートの怒りを買いネガティブな内容のトラックバックが殺到して、実質的に炎上した
②杉村を広告塔として使っている指南役が、トラックバックの内容を検閲している
ブログ検索などをしてみると、杉村太蔵に対してネガティブトーンが特に目立っているということもないので、実際は②の可能性が強いかと思うが、ブログをやる以上、最低限トラックバック機能をオープンにしておくのは当然のことだ。広報対策と称してコソコソ姑息なことをやっていると本当に炎上してしまいますよとだけ指南役に忠告しておこう。
(カトラー)
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コメント
へー、面白いですね。
さしずめ、生産性が高く、対外コミュニケーションが低い人たちを、(とりあえず)オタクと呼んでみたりとか。そんな感じなんですかね。あと NPO を語るなら、社会・公共的 ⇔ 私的 といった軸も必要ではないかと思うです。
後、職業ではないですが、個人的にニートな方々の相談に乗る事が割りとありますが、彼らには境界例や境界を越えて精神を病んでいるケースが多いと感じます。多分に学生時代や就職後に、ストレス過多で脱落した人たちです。対処には専門知識が必要です。社会的に無視できない数に成ってきていると思いますが、どう思われますでしょうか。
投稿: ハムレット | 2005.11.20 23:03
>杉村太蔵が炎上している?
・・・炎上してないじゃないですか(笑)
というか、
>広報対策と称してコソコソ姑息なことをやっていると本当に炎上してしまいますよとだけ指南役に忠告しておこう。
これ、脅し???
ダメですよ、他人のサイト荒らしちゃ(笑)
投稿: | 2005.11.20 23:37
ニートにしろ少子化にしろ2007年問題にしろ、とどのつまりは「労働力が減る」「生産力がなくなる」という経済原理だけで語られる。社会のどこに位置し、どのように人生を送るのかは、この座標では見えてこない。
そろそろ新しい切り口を見つけたい、それがニートの意味でしょう。少子化も全く同じラインですよ。自民党も共産党も、根本は「労働力としての」若者、若年層としか見ていない。そういう取り込みかたにウンザリしてるのですよ、若者は。
オーウェルが現実になってきた。
投稿: あした | 2005.11.23 11:02
杉村 太蔵(すぎむら たいぞう、昭和54年(1979年)8月13日 - )は、平成期における日本の政治家。衆議院議員(1期)。
第44回衆議院議員総選挙で当選した「小泉チルドレン」の一人。
概要
北海道旭川市出身。実家は2代続いて歯科医を経営。テニスコートを所有し、山梨県出身の疏父の銅像が立てられている。
札幌藻岩高校時代には、テニスの大阪国体男子ダブルス優勝。
2006年3月25日 朝日新聞 朝刊
日歯連、6年ぶりに参院候補
日本歯科医師会(日歯)の政治団体「日本歯科医師連盟」(日歯連) は24日、東京都内で評議員会を開き、広島県の歯科医師で日歯常務理事の石井みどり氏(56)を来年夏の参院選候補とすることを決めた。近く自民党本部に公認申請する。
日歯連は、汚職事件などで04年夏の参院選に候補を立てられなかったため、6年ぶりの候補擁立。現職の中原爽氏は来年夏に引退する。
(2006/06/22 09:47:47 AM)
投稿: 歯科医の息子杉村により復権する日歯連 | 2006.06.22 11:04
2004年3月19日 朝日新聞 夕刊
大島慶久氏、参院選立候補見送り 「日歯」疑惑で困難視【名古屋】
今年7月の参院選愛知選挙区(改選数3)への立候補準備を進めていた自民党の比例区現職、大島慶久氏(63)が、立候補を見送る意向を関係者に伝えたことが19日、わかった。大島氏の出身母体「日本歯科医師連盟」をめぐる政治献金疑惑のため、党本部が大島氏擁立に難色を示していたことが要因とみられる。党県連は大島氏の意向を確認した上
で、予備選3位だった会社員の寺西睦氏(39)を軸に候補者を選ぶとみられる。
大島氏は18日夜、歯科医師の集まった会合で「情勢を考えると出馬はほぼ不可能だ」と述べ、立候補に向けた運動を今後は行わないことを明らかにしたという。
自民党は、愛知選挙区に元衆院議員の浅野勝人氏(65)を公認し、今月に入ってから2人目を擁立することを決めた。大島氏は予備選挙で2位となり、党名古屋市議団の支援も得て、立候補に強い意欲を見せていた。
しかし、日歯連が国会議員に政治献金をしながら、政治資金収支報告書に記載していなかった疑惑があり、東京地検が捜査している。党本部は県連に対し、愛知県で2人目の候補の擁立を認めたものの、大島氏では公認・推薦は難しいとの意向を伝えていたという。
参院選愛知選挙区では、民主党の木俣佳丈氏(39)と佐藤泰介氏(60)、共産党の八田広子氏(57)も立候補を表明している。
(2006/06/22 09:48:42 AM)
投稿: 歯科医の息子杉村により復権する日歯連 | 2006.06.22 11:06
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投稿: dragyuzvb vkrwgntd | 2007.06.04 21:32
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投稿: rjcxinyz engwktz | 2007.10.07 03:44
Lovely postings, Appreciate it!
投稿: ティファニー 結婚指輪 ランキング | 2014.01.19 09:48