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立花隆はどうしてしまったのか

tachibana

私は立花隆の熱心な読者とは言えないが、それでも「臨死体験」や「宇宙」に関する彼の著作については興味を持って読み、その貪欲な好奇心のエネルギーに対して敬意さえ抱いてきた。しかし、立花が「nikkeibp.jp」で開始したに連載コラム「メディアソシオ・ポリティクス」における「ホリエモン」の金脈、人脈に関する記事のひどさには目を疑ってしまった。
立花隆が月刊文藝春秋で田中角栄の金脈問題を取り上げ、緻密な分析と論証の積み重ねによって時の宰相を退陣にまで追い込んだのが20余年前。以来、金脈追求は立花隆のオハコ分野なのかも知れないが、ホリエモンの金脈に関する限りその論評はあまりにお粗末であった。
この文章で立花はホリエモンについて色々述べ立てているのだが、発信しているのは唯一「ホリエモンは、あやしい奴だ」というメッセージだけだ。それは、時の宰相の身辺や金脈があやしいと指摘したこととは全く持つ意味が異なる。あえて異論を唱えさせてもらえば、ベンチャーがあやしいなんていうことは、どこの世界、どの時代をとっても至極当たり前のことに過ぎない。当たり前のことを今更メディア上で披瀝したところでそのことに何の価値があるというのか。しかも、その文章は、かつて田中金脈追求で、日本中を唸らせた立花隆その人が書いているものとはとても思えない内容だ。

憶測を呼んだ「記事取り下げ」

まず、読者は、くだくだとした言い訳につきあわされることになる。というのも立花がいったんアップした自分の文章をネット上から取り下げ、そのことが色々な憶測を呼んだからだ。立花によれば、記事を取り下げた理由とは、某裏サイトのホリエモンに関する記事を彼の原稿の中で紹介したのだが、そうしたことを引用すること自体も拡大解釈すれば、引用を通じて名誉毀損と受け止められる恐れがあると自主的に判断したからだという。そのことが「言論封殺の圧力を受けたからではないか」というようなあらぬ憶測を呼んでしまった。しかし、取り下げたこと自体に他意はなく、修正した原稿がその後もアップされなかったのは、編集者との単なる連絡ミスに起因している・・・と釈明している。

言い訳を聞かされるのは、まだ良いとしても、本題のホリエモンの金脈、人脈に関する論評は、素人の床屋談義の域を出ていない。その談義の相手役をさせられているのが、作家の石田衣良である。石田は、楽屋の裏話のような立花との会話の中で、立花の問いに対して、あくまで一般論としてかつてのネットベンチャーたちの多くが金にまみれ、結果として裏世界に取り込まれていったのを見てきたという経験を披瀝するのだが、驚いたことに立花はその説明を根拠にして、逆に堀江が「いつからか闇世界とつながっている」と、ほぼ断定してしまうのだ。こうした形で自分のコメントが文章に使われることを石田衣良は了承しているのかどうか知らないが、立花の強引な論旨を補強するダシにされてしまっている。

立花の文章の迷走は、これだけに止まらない。大西宏さんも批判していた「外資=リーマンブ・ラザース脅威論」を持ち出してきて、ライブドアの株価が上がっても下がっても100%儲かる仕組み(そんなものはありえないのだが)、立花が言うところの「巨大ブラック・ホール」理論に基づく投資手法で闇の世界の紳士たちも儲けているに違いないと推定する。さらに、立花は、だとすれば「彼らがやったことは、リーマン・ブラザーズがやったことと同じであり、本質において、両者にちがいはないではないか」と断定してしまうのだ。これは3段論法を通り越してほとんど言いがかりに近い。リーマン・ブラザーズにしてみれば、こうした低レベルの言いがかりに対してまともにつきあうかどうかは別にして、ヤクザ呼ばわりされる覚えは全くないだろう。

マネーに対する固定化した見方

こうした立花の目を覆いたくなるような議論のブレは何に起因しているかといえば、ひとつには、彼の「お金」に対するほとんど化石のように固定化した見方にあると考えられる。前回の私のエントリー記事でも指摘したように、ホリエモンにとって「お金」とは、ある種「聖性」を帯びていて「フェアネス(公正さ)」や「ルール」と同じように捉えられていることを立花氏は全く理解できていない。田中角栄が金にまみれたと同じ意味で堀江の金脈を問題にしている。
ホリエモンの金にまつわる逸話の中で、かつての恋人で創業仲間であった女性が、袖を分かって退社する際にその女性の親から出資してもらったお金(600万円)の持ち株相当分を買い戻すという話がある。その金額は当時の株の時価評価額にすると5億円にもなっていたのだが、その大金を工面するために死ぬ思いで借金して、その女性に返金したという。前回のエントリー記事でも述べたように、私はこの逸話に堀江の「マネー」に対する独特のこだわりを見たのに対して、立花隆は、ホリエモンは、その金の工面のために闇金に手を出したはずだという、およそトンデモない結論を導き出してしまう。

もうひとつ立花の議論をブレさせているのは、彼の議論のネタ場所の問題である。文章中では裏サイト「××××」という形で伏せ文字で登場してくるのだが、これは二階堂ドットコムのことを指している。ここは国粋主義者とおぼしき知識人が主宰するサイトで、立花からは裏サイトと紹介されているが、1日平均10万PVをカウントするような、裏情報を扱う有名サイトになっている。このサイトの主宰者、もしくはそのシンパが花田紀凱が編集長となっている「WILL」という雑誌に情報を提供し、ホリエモンの金脈&人脈相関図という記事になっている。「ブラックジャーナリズムの情報はガセネタが多いが、時として本物の玉もある」といいつつ、この二階堂ドットコムから情報をとって原稿をまとめたことを暗に肯定して見せるのだが、天下の立花隆とあろうものが「裏サイト」の情報を下敷きにして原稿を書いていたと表明しているのだから驚きである。実は、立花の連載がスタートした時点から、論点の多くが二階堂ドットコムのネタに似通っているなという印象を持っていた。

皮肉なことに二階堂ドットコムでは、これから立花隆を標的にすることが予告されている。

前衛的なジャーナリスト活動を行っている立花大センセイは、その名前を一躍広めた田中角栄本にあっても、データマンを多用し、その情報のほとんどを当時の政治団体のデータに頼っているという、すばらしい事実もわかりました。

ネット上では極右の言説が喝采を浴びる。人種差別的な言説をまき散らし、読む人の心に悪意や憎悪を増幅させるこのサイトの文章を見る限り、ここで披瀝されているのは、立花がいうように「裏世界」に属する情報だ。
その「裏サイト」で立花を標的にすることが宣言されているのを見ていると、立花と石田衣良の対談の中で言及されている、「裏世界」を利用したつもりが逆に「裏世界」に取り込まれることになってしまった、かつてのネットベンチャー経営者の姿に立花が重なって見えた(以上、敬称略)。

(カトラー)

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