吾輩もマザコンである、マザコン男たちよカミングアウトせよ!
扶桑社のY嬢が「良い本なので、ぜひ読んでみて」とリリー・フランキーさんの小説「東京タワー---- オカンとボクと、時々オトン」を送ってくれた。東京タワーには昔から個人的に思い入れがあり、書名からして気になっていた本だったので、早速、読んでみた。
イラストレーター、コラムニスト、絵本作家など多彩な顔を持つ、リリー・フランキーさんの両親、特にオカンの思い出が深い愛情をもってストレートに綴られた私小説である。既に100万部をこえるベストセラーになっているようだが、爽やかな読後感が残るとても良い本だった。薦めてくれたY嬢に心から感謝したい。
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<p class="MsoNormal" style="MARGIN: 0mm 0mm 0pt">東京の雑誌・音楽業界、デザイン分野などの第一線で活躍するクリエイターの人々は、地方出身者が圧倒的に多い。「東京から届く雑誌が、田舎の町では新しい世界に向かって唯一開いていた窓だった」と地方出身の友人のデザイナーが、一緒に飲んだ時、熱く語っていたことを思い出すが、この作品には、東京という街でどこかカッコつけて生きている彼らの内に秘めているナイーブな感情が、とても素直に表現されている。残念ながら私は東京の下町の出身なので、彼らの心の機微の隅々まで同調できないが、この作品のもうひとつの特徴、母親に対するストレートな愛情表現には、ハッとさせられ、自分の心のフタを開けられたような思いがした。</p>
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<p class="MsoNormal" style="MARGIN: 0mm 0mm 0pt"><strong>地方出身者の感情と母への愛</strong></p>
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<p class="MsoNormal" style="MARGIN: 0mm 0mm 0pt">この小説は、リリーさんのお母さんが入院された頃から、執筆がスタートし、亡くなられた直後は、全く書けない状態が続いたほど、深い愛情をお母さんに抱いていたようだ。リリーさんは「マザコンで気持ち悪いと思われてもかまわない」とどこかで喋っていたが、母親に対する溢れんばかりの愛情をここまで潔く書かれると、気持ち悪いどころか、逆にカッコよすぎるとしかいいようがない。</p>
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<p class="MsoNormal" style="MARGIN: 0mm 0mm 0pt">マザコンが気持ち悪いということになったのは、テレビドラマ「ずっとあなたが好きだった」の冬彦さんブーム以来のことだと思うが、「マザコン=母親のいいなり」という図式は何ら根拠のあるものではない。「<a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4396110111/qid=1139532796/249-4750350-1644368">マザコン男は買いである</a>」という著書を昨年、祥伝社新書から出している精神科医の和田氏秀樹氏によれば、マザコンという言葉自体、心理学の用語にはない和製英語で、たかだかここ30年ほどの間に日本で広がった概念であるとのことだ。歴史的にいえば、日本の大家族制度が崩壊し、核家族化していく過程の中で、子供の教育などに専心して内向きに生きる「母親」たちに意図的にマイナスイメージが付与された。個人も子供も「自立」して生きる時代が来ており、母親が子供に対して過干渉なのは良くない・・・という言い方がされたわけだ。</p>
<p class="MsoNormal" style="MARGIN: 0mm 0mm 0pt">繰り返していうが、マザコン男がダメ男というのは、ごく最近の俗説に過ぎない。塩野七生さんもエッセー集「男たちへ」の中の「マザコン礼賛」という文章の中で、アレキサンダー大王もシーザーも強烈なマザコン男であったことを紹介している。</p>
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<p></p><blockquote dir="ltr" style="MARGIN-RIGHT: 0px"><p class="MsoNormal" dir="ltr" style="MARGIN: 0mm 0mm 0pt">「アレクサンダーもそうだったが、シーザーも可愛いだけが取り得の女に掘れていない。シーザーの場合は典型だが、クレオパトラのような、男に伍しても立派にやっていける女を愛している。これは、異性の才能に敬意をいだくのが普通の環境に育った、男の特色ではないだろうか」(塩野七生 男たちへ「マザコン礼賛」より)</p></blockquote><p class="MsoNormal" style="MARGIN: 0mm 0mm 0pt">わが意を得たりとは、このことで、尊敬できる母親に愛情をもって育てられたことを恥ずかしがったり隠したりする必要は全くないのである。アレクサンダーやシーザーの末裔であるイタリア男たちは、結婚してからも「ママン」と何かにつけて母親に電話で報告するなど、マザコン男ばかりだ。世界的に見ても、マザコンカルチャーがある国の方が、教育熱も高く、治安も安定しているという。加えて、伝統的な価値に尊敬がはらわれている社会なので「ものづくり」や自国の文化を大事にする。少なくとも、母親への愛情を表明することを日本のように「マザコン」という言葉を冠して抑圧しているような国はないようだ。</p>
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<p class="MsoNormal" style="MARGIN: 0mm 0mm 0pt"><strong>マザコンという言葉に抑圧されたもの</strong></p>
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<p class="MsoNormal" style="MARGIN: 0mm 0mm 0pt">なぜ、日本では、こうした歪な状態になってしまったかといえば、戦後の高度経済成長期に、労働力として田舎から大量の青年たちを母親のもとから引き剥がさなくてはならなかったからだ。</p>
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<p class="MsoNormal" style="MARGIN: 0mm 0mm 0pt">かくして、現代の日本には、「マザコン」という言葉と、農村に一人暮らしを余儀なくされた老いた母親たちが残った。</p>
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<p></p><blockquote dir="ltr" style="MARGIN-RIGHT: 0px"><p class="MsoNormal" style="MARGIN: 0mm 0mm 0pt">「母子家庭やったけん、子供の頃は、おまえマザコンやろうち言われるのが好かんでからオカンの話を人にようせんかったんよ。でも、なんで大切な人のことを想うていかんやろうか?なんで好きな人のことを話して、気持ち悪いとか言われんといけんのやろうか。今でもようわからん。そげんことを気にしとってから、オカンに優しいことも言うてやれんかったかもしれん」(東京タワー)</p></blockquote><p class="MsoNormal" style="MARGIN: 0mm 0mm 0pt"></p>
<p>この本の最終部分で聞かれる作者の独白は、日本の全ての働き蜂の男たちがずっと心に秘めて封印していたつぶやきではなかったか。リリー・フランキーは、それを言葉にして、封印を解きはなってくれた。</p>
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<p class="MsoNormal" style="MARGIN: 0mm 0mm 0pt"><a onclick="window.open(this.href, '_blank', 'width=295,height=432,scrollbars=no,resizable=no,toolbar=no,directories=no,location=no,menubar=no,status=no,left=0,top=0'); return false" href="http://katoler.cocolog-nifty.com/.shared/image.html?/marketing/images/mother2.jpg"><img title="mother2" height="292" alt="mother2" src="http://katoler.cocolog-nifty.com/marketing/images/mother2_thumb.jpg" width="200" border="0" style="FLOAT: right; MARGIN: 0px 0px 5px 5px" /></a> この文章の締めくくりにあえて表明させてもらえれば、カトラーこと、この私も正真正銘のマザコンである。母は既に77才を超えているが、私の誇りだ。戦争によって人生を翻弄され、小説でも書けそうなくらい振幅の大きい人生を歩んできた。この写真は、そうした母親が25才の時のものだ。浅草の浅間神社(おふじさん)の近くにあった自宅の庭でお手伝いさん(座っている女性)と一緒に穏やかな表情で写っている。私が生まれる2年前のもので、彼女の人生の中では最も幸福な時期だったという。気持ち悪いといわれるかもしれないが、この写真の母は幸せそうで、本当にきれいだと思う。</p>
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<p class="MsoNormal" style="MARGIN: 0mm 0mm 0pt">こんなプライベートな写真をネットに出して良いのかといわれそうだが、50年近く前の写真である。この写真を見ても、今の母親だとわかる人は誰もいない。</p>
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<p class="MsoNormal" style="MARGIN: 0mm 0mm 0pt">月日は流れ、私の母はもちろんのこと、全てが年老いた。</p>
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<p class="MsoNormal" style="MARGIN: 0mm 0mm 0pt">(カトラー)</p>
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コメント
はじめてコメントします。ブログもっていないので、リンクなしですみません。。
「マザコン」を否定的に捉える風潮が生まれた背景には、家庭を持ちながら社会に出て働こうとする女たちのお姑さん対抗策ということもあるように思えます。
働く女性として、「マザコン」を否定的に評価する便宜性(という表現が適切かどうか分かりませんが・・・)はとても理解できるのですが、私個人としては、男性はマザコンで正常と思っています。
ウチの夫ももちろん大のマザコン。
でも、私のこともとても大切にしてくれています。
妻を大切にしていれば、マザコンもあまり否定的に評価されない気がするのですが、それはそれでまた女の身勝手でしょうか?(笑)
投稿: nashi | 2006.02.13 22:19
nashiさん、「男性はマザコンで正常」という聖母のようなお言葉、ありがとうございます。こうした言葉を女性からいただけるなんて、ブログをやってきた甲斐があるというものです。マザコン男のカミングアウトをけしかける内容の記事をエントリーしましたが、「俺もマザコンだあ」という男たちが集まってきたら、それはそれで気味の悪いことで、もしそんなことになったら、どうしようと思っていました。
「ウチの夫ももちろん大のマザコン。
でも、私のこともとても大切にしてくれています。」
こうnashiさんにいわせる旦那様は、ステキな方なんでしょう。ようするに私も含め、多くの日本の男どもは、マザコンというより、単なる未熟者たちなのかも知れません。nashiさんの旦那を見習わなくては。
投稿: katoler | 2006.02.14 01:21
カトラーさん、コメント返しありがとうございます!
私が「マザコンで正常」と思うのは、単純に母親を大切に思うのは当たり前のことと思うから。女の私でも母親の温もりにホッとするのだから、男の人にとってそれはどれほどのものだろうというだけの感覚なのです。
でも、男の人が母親をほめたりすることって嫌われますよね。
それにずっと違和感があって。。大切な人をほめるのは自然なことなのにって。
なので、今回のエントリーを読んで思わずコメントしてしまいました。
もっとも、我が家の場合、夫も姑もとてもできた人で、未熟者なのは完全に私の方なので、こんなことが言えるのかもしれません。
ともかくカトラーさん、未熟者と甘えすぎないで、奥様をしっかり大切にしてあげてくださいね(笑)
投稿: nashi | 2006.02.14 23:45
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投稿: tankless water heaters | 2013.09.22 15:57