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ブログ雑誌「ブログキャスター」の挑戦

blog_caster 東洋経済新報社が、「ブログキャスター」という雑誌を週刊東洋経済の臨時増刊として発刊した。この雑誌には、総勢50人のブロガーたちが様々なテーマで書き下ろしの記事を寄せていてなかなか圧巻の出来栄えである。実は、この「ブログキャスター」にカトラーこと小生の「ポスト小泉」についての拙文も掲載されている。

このテーマにつ いては、編集部からあらかじめお題として投げられてきたものだが、小泉純一郎に象徴される「トリックスター」が跋扈する劇場型の政治が終わり、国家財政の 破綻というリアルな現実がすぐそこまで迫っている危機について書いた。近所の本屋で買い求めた「ブログキャスター」を読みながら、東洋経済のような老舗の 経済専門出版社が、ブログに関する雑誌を発刊するまでになったか!と、一種の感慨にひたった。

 

総勢50人のブロガーが書き下ろし

 

私の文章はとも かく、この雑誌で紹介されている他のブロガー達は、さまざまな経歴を持っていて、まさに多士済々、それぞれが独自の見方やオピニオンを持っていて大変興味 深く読むことができた。世の中のブログをまめにチェックしている方ではないので、知らないブロガーたちがほとんどで、こうしたセレクションは個人的に大変 役に立った。

この雑誌のまえ がきでも紹介されているようにブログ人口は国内で600万人を超え、それを見ている人は、その4倍と推定されている。膨大なブログ群は、玉石が混交した沼 地のような世界である。私のブログなどは、とても「玉」といえるような代物ではないが、こうした雑誌が登場し、膨大なブログの沼地から「玉」を探しだして 紹介していく作業は、力のあるブロガーを発掘していく上で大きな意味を持つと思う。

ブログとは私語のさざめき

 

ブログとは、膨 大な私語の集まりの世界である。同じ社会的な問題を扱うにしても、ちょっとよそいきの顔をした一般メディアの言説の世界とは明らかに違う肌合いを持ってい る。ブロガーたちの書き下ろしの記事だけで雑誌を制作するという、「ブログキャスター」の意欲的な企画は、例えていえば、日頃、近所の原っぱ(今時、そん なものないか)で草野球をやっていた連中を、突然、東京ドームでプレーさせるようなものといえるだろう。「ブログキャスター」に登場しているブロガーたち は、多少の戸惑いを見せながらも、全体として見事にプレーをしており、彼らの前向きなエネルギーが大きなパワーになっていると思う。

ただ、誤解して ならないのは、草野球の価値は草野球であることに由来するということだ。たまに、プロ野球のチームを打ち負かすことがあっても、草野球の流儀を大事にすべ きであって、プロ野球の亜流になってしまっては意味がない。私語のさざめきであることにあくまでもこだわるべきだろう。

ブログというものを始めて、2年近くが経過した。ブログを始める時に手本にしたいと考えたのが「腐女子の行く道、萌える道」という三 谷ちずちゃんという、当時、女子高校生だった女の子が書いていた人気ブログであった。残念ながら2004年8月12日で休止しているが、未だに、コメント 欄に来訪者からの書き込みが続いている。この高校生が到達した「私語の境地」は、個人的なおしゃべりのようであって、洗練され、知的であり、サービス精神 に溢れ、その才能はあまりに凄くて、私などは全く足元にも及ばない。実は、こうした文体がうらやましくてちょっと真似をしてみたこともあるのだが、出来上 がったものは、我ながら気持ち悪くて読むにたえないものだった。こりゃあ、ダメだと諦め、結局今のような文体でブログを書き始めたという経緯がある。

たぶん、これからのブログの世界からは、この腐女子のような素晴らしい「私語」を紡ぎ出す人材が輩出されてくることだろう。ブログキャスターにはそうした人材をぜひ発掘してもらいたい。

もし、ブログを 始めていなかったらどうだったろうと、この頃ふと思うことがある。カトラーというペンネームを使っているが、周りの人々にブログをやっていることをオープ ンにしているので、会社の同僚なども私のことを「カトラー」と呼んだりするようになった。ブログが縁で知り合った人たちも多く、そうした人たちにとって私 という存在は、まず「カトラー」として意識されているに違いない。

そうした「カトラー」の影を私の日常や人生から拭い取ってしまったら、たぶん、私の人生はずいぶんと平板なものになってしまうだろう。

 

ブログは明らかに私の人生を変えた。

 

 

(カトラー)

 

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コメント

そうやねー、良くも悪くも「草野球らしさ」って大事よね。
市民参加型メディアとか言うモノがあり得るとするなら、メインは美味しいトコ取りでやらないと、無理そうっすね。
検証・批判・思惑・陰謀・コスト、妬みに政治、消耗が、周辺を飾るの。
ま、手の内を明かすという意味で自分語りの楽屋ネタが中心になっても部外者はおもろないしね。

投稿: トリル | 2006.03.12 00:57

書いてから何か嫌味みたいなので、そういう意味じゃないよ。

あくまでも不特定多数が参加するメディアというのが今後発展するなら、そういう事は避けられないだろうねって、一般論的所感ですよ。

だからそういう事をネガティブに考え過ぎることは無いって事です。

投稿: トリル | 2006.03.12 02:18

お久しぶりです。

カトラーさんが「腐女子の行く道、萌える道」をお手本にされていたとは、すごく意外でした。
実は僕もそうなんです。というか、いまでもお手本にしています。
なんだか兄弟弟子に出会ったようで、とても嬉しくなりました。

投稿: ミズタマのチチ | 2006.03.13 12:38

私語のさざめく世界というのは、トリルさんが指摘されているように、一般メディアの肌合いと違い、陰謀、思惑、政治、妬みなどが露わになる世界でもありますね。そうした中で逆に鍛えられて、世に認められていくブロガーも出てくることでしょう。
ミズタマのチチさん、お久しぶりです。腐女子のブログが休止したままになってしまったのは、とても残念ですね。あまりの人気の高さに、周りから妬みやら嫉みやらを受けたのではないかなと想像し、なんとかできなかったものかと悲しくおもっています。

投稿: katoler | 2006.03.15 13:05

そうそう。

ちゃんとした物言いをしてる限り、多少の舌足らずがあっても必ず擁護も出てくるから、結局、批判も楽しまないと。

投稿: トリル | 2006.03.15 23:20

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 経済系出版社として知られる[http://www.toyokeizai.co.jp/:title=東洋経済新報社]から先月刊行された「ブログキャスター」で紹介されたブログの一覧です(URL付き)。  http://library.jienology.com/caster.php  ただいま[http://www.j-smeca.or.jp/:title=中小企業診断士]登録申請中であるところのブログ図書館の人(ウェブログ図書館館長)が、同誌に掲載されたブロガーの皆様に敬意を表して作成したもので... [続きを読む]

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