希望格差社会からの出口
フランスで大規模なデモが行われ、一部が暴動化している。経営者に労働者を雇用しても当初2年間は解雇できるとした、若年労働者むけ新雇用法(CPE)というのが反発を呼んでいるらしい。確かCPEは明らかに経営者を保護するような法律でフランスの若者の怒りも当然だと思うが、全国規模のストライキや暴動にまで発展するほど反発を受けているのか、日本にいるとどうもわかりにくい。フランスの事情に詳しいにむらじゅんこさ
んによれば、フランス国内で長くくすぶっている貧富の差の拡大への不満、階層化社会への絶望感が背景にあり、法案の内容への反発もさることながら、全国規
模の騒ぎに同調して、スポーツ感覚で参加している人々も多いという。前回のパリ暴動では、サルコジ内相の暴言がきっかけとなったが、現政権の対応のまずさ
も手伝って、ことあるごとに若者たちの不満が噴出してくる。パリの暴動の様子が伝わってきたときにも、指摘したことだが、こうした現象を単に遠いフランスで起きている対岸の火事と考えないほうがいい。
フ
ランスでは、階層化社会への絶望が、イスラム系青年たちの暴動という形で人種問題あるいは宗教問題の衣をかぶって噴出してきた。日本の場合は、人種や宗教
問題という形はとっていないものの、今や流行語になったともいえる「希望格差社会」とか「下流社会」というキーワードとともに人々の意識に上りはじめてい
る。フリーター、ニートと呼ばれる若者たちが500万人にものぼり、彼らは、これまでのところは「満腹した羊」のように大人しい顔をしていたとしても、カ
ラカラに乾いた薪のようなものだ。何かの拍子で火が投げ込まれれば、フランスの若者たちのように間違いなくメラメラと燃え上がるだろう。
ホリエモン問題と希望格差社会
フィナンシャルジャパン4月号でホリエモンの問題について、木村剛氏が興味深い指摘をしている(週刊木村剛にも掲載)。
「『希
望格差社会』は、将来に希望をもてず、実現不可能な夢に逃げて生きる人々、いわば「負け組」が増えていると説き、資本主義社会では、たとえ貧しい者でも努
力さえすれば金持ちになれる」という物語が必要なのに、『努力しても報われない』というムードが蔓延していることが問題だと指摘している。『希望格差社
会』の論理はある程度是認できる。しかし、それを論拠として、ライブドア事件が『構造改革の影』を象徴しているとする主張は誤っている。 ホリエモン(堀
江貴文前社長)は「成り上がり者」だ。そして、ホリエモンを見て、多くの若者が起業を経由した上流社会への挑戦に憧れたことは紛れもない事実である。つま
り、『希望格差社会』の元凶は、ホリエモンを生み出した構造改革ではない。ホリエモンのみならず、この際、新興勢力を一緒くたにして葬り去ろうとしている
旧体制のほうが元凶なのだ」
こ
こで木村氏も指摘しているように、ホリエモンの墜落とともに、新自由主義的な勢力に対するバッシングが始まっており、それにかこつけて、新自由主義的な考
え方そのものを葬り去ろうという勢力の鼻息が荒い。これは、ポスト小泉を睨んで、ホリエモンバッシングを梃子に小泉のキングメーカーとしての影響力を削ご
うという思惑も働いているものと考えられる。確かに、ホリエモン問題は、政治的に利用されているが、それによって新自由主義的な流れが葬り去られるような
ことは、ゆめゆめありえないと考えている。なぜかといえば、日本社会の希望格差化あるいは階層化に反対している人々は、単にノスタルジーを語っているに過
ぎないからだ。少なくともホリエモン問題を材料にして、階層化への反対を言い立てている連中は、単なるプロパガンダをやっているだけで、ほとんど何も考え
ていないに等しいと断言できる。
階層化は先進国共通の問題
社
会の階層化の問題は、何も日本だけが直面している問題ではない。暴動が起きているフランスなども含め先進資本主義諸国は、いずれもが共通してこの問題に悩
んでいる。極めて明確なことは、成熟した資本主義社会では、過去の経済成長時代に味わった牧歌的な世界に後戻りすることは不可能ということだ。日本でいえ
ば、昭和の高度成長時代に対して抱く懐かしさ、米国人であれば「アメリカン・ドリーム」という言葉に込めている誇らしさのようなものが、過ぎ去って二度と
戻ってこない青春時代のように、遠い存在になってしまった。われわれが、もときた道をなぜ後戻りできないかといえば、この「変化」が、グローバリゼーショ
ンと呼ばれる地球規模の経済構造の変化に対応しているからに他ならない。各国が自由主義的な経済政策を強め、それに対応した企業が競争力を強化すれば、他
国の政府や企業も同じような行動をとらざるを得ない。工場は賃金の安いアジア諸国に流出し、正規雇用者が減少し、フリーターやニートが増大する。
家
族主義的な経営をやってきた日本企業の経営者は、こうした「グローバリゼーション」の波に対して、実は苦々しい思いを抱いている人は少なくないのだが、か
といって何も対応しないわけにはいかない。かくして、「1億総中流」といわれた平等社会に亀裂が入り、「希望格差社会」や「下流社会」が、ぽっかりと暗い
口をあけて見えてくる。
見えにくい希望格差社会からの出口
話
題の「下流社会」や「希望格差社会」という本を読んで見れば、すぐわかることだが、階層化が進むこれからの社会に対して、説得力のある処方箋が何も示され
ていない。この本を読むと「なるほど階層化社会になることはわかった。じゃあどうすりゃいいんだ」というフラストレーションを感じるはずだ。この問題につ
いてはっきりいわせてもらえば、「希望格差社会」からの出口というのは、現段階では存在しないと断言できる。このことに関して、木村剛氏やホリエモンが
言っていることは、昔に戻れといっているノーテンキでバカな連中に比べれば、はるかに現実的であり、確信犯的であった。耳さわりの良いことを言って、あた
かも現に別の選択肢があるかのように言い立てる2流、3流の経済学者の言うことなど信じないほうが良い。根拠のない期待を抱いて、さらに深く傷つくだけだ
ろう。誤解を恐れずにいえば、これからの社会の行く末について、われわれはもっと深く絶望する必要があるのだ。少なくとも私が生きている間、2~30年の
間は世界史的にこの流れは変わらないと思う。その理由は簡単だ。世界にはまだ食べていけない貧しい人々がいて、生産力の拡大は、そうした人々にとっては、
あきらかに善として働き、資本主義の遺伝子は、そうした経済成長をどこまでも追い求めるに違いないからだ。地球上には、インドやアフリカなど、これから本
格的な「経済化、産業化」を経験する「辺境地」が存在する。言い換えればそうしたフロンティアが存在し続ける限り、資本主義というモンスターは生き延びる
のだ。
た
だし、私たちの子供たちの世代では、もう一つの選択肢、オルタナティブ(代替可能な)な世界というものの可能性が見えてくるのではないかと期待している。
しかし、その可能性は、今の段階では、ファンタジーに過ぎない。現在に生きるわれわれにとって真の意味で新しき世界とは、夢物語に過ぎないのかも知れない
が、人間という生物は、ファンタジーがなければ生きていけないということも紛れもない真実なのだ。
(カトラー)
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なお 重ね重ね申し上げますが 私は 日本の国債(日本国家が発行する債券)だけは よほど機動力のある個人投資家以外は 購入しないほうがよいとは思います。
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ちなみに 藤巻氏が プロパガンダを3月に更新している。
藤巻 健史プロパガンダ
藤巻氏も すごい人だと思う。なぜなら去年の12月に 日本国内の不動産のヘッジファンド(私募債)を自らの手で立ち上げてからは 日本国内の不動産投資・強気論だけを プロパガンダし続けている。彼は 自分のプロパガンダでは 日本国内の不動産の強気材料しか公表しなくなった。これって すごい心臓だと思う。
そして彼は 目標どおりの運用成績を上げた瞬間(これを専門用語で ベンチマークと呼ぶ。) しずかに 自ら立ち上げた私募債を しずか... [Read More]
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男性のエコノミストや社会学者やマスメディアが 研究の対象を先進国だけに絞って分析・報道する限りにおいて 極度のペシミスティックな机上の空論が 導き出されてしまうことがある。
話が飛んで大変申し訳ないけど たとえば エコノミストや社会学者やマスメディアが 東京足立区だけに対象を絞って統計を推計すると 大変ペシミスティックな机上の空論が 導き出されてしまう具体例を挙げてみよう。
東京足立区の公立小学校において 就学援助(児童福祉手当てなどなど)を受けている児童の割合は42.8%なのである。が、・・・... [Read More]
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Tracked on 2007.05.02 at 11:45 AM
Comments
うまくは申せませんが、力強い言葉をいただいた気がします。たまたま自分は明治生まれの祖父と過ごした期間がありました。覚えてる限りの「彼」の片言隻語は、現在、巷で呪詛されている市場原理主義そのものでした。
もちろん、通勤電車などで垣間みる余裕のない、下品さ、これらを肯定する気はさらさらありませんが、どうなんでしょう、団塊の先輩たち含めて、この脆弱な日本の大人が今の子どもたちをだめにしてませんか?
Posted by: 北村隆男 | 2006.04.02 at 12:23 AM
そんなに絶望はいらないと思いますが。。
いかにチャレンジできるかという環境づくりと人づくりに尽きると思います。
結果は階層を分けるかもしれませんが、チャンスはその気になればどこにでも転がっているように見えます。
昔みたいに、約束された成功なんてものを待つのはもう無理でしょうね。
Posted by: ひろ | 2006.04.02 at 12:43 AM
エントリータイトルとしては「希望格差社会の出口はどこ?」の方がよさげな内容でしたね。
あるはずの出口を捜してしまいました。
ま、出口というか得心させる何かは用意しないとダメですよね、教育も含めて。
で、なければほとんどの人の人生は、まるで受精できなかった精子みたいになるのかな。
Posted by: トリル | 2006.04.02 at 05:56 AM
「これからの社会の行く末について、われわれはもっと深く絶望する必要があるのだ」
まるでレミングの行進みたいだ、と思うのは何かのデジャブでしょうか?
その先に絶望があるとわかっていて、それでもそちらへ行く必要がどこにあるのでしょうか?「流れは止まらないから仕方ない?」 がんばって止めればいいんじゃないかと単純に思うんですが、どうですか?
3年後、木村剛氏がどうなっているのかとても興味があります。潮目が変わったと感じているのは私だけではないようですが。
Posted by: 旧世代の代表なのかも | 2006.04.02 at 11:09 AM
今回のエントリーはめずらしく舌鋒がするどいですね。
|工場は賃金の安いアジア諸国に流出し
では食料品の値段が<賃金の安いアジア諸国>並みにさがらないのはどうしたことでしょうか。食料品の自給ができておらず、輸入に頼っているからでしょうか。それとも、日本国内の物流コストがあまりに高いからでしょうか。
給料は減っても、いっしょに衣食住の値段がさがればいいわけです。
かつての牛丼の値段やユニクロの価格は安いというけれど、それでもアジア諸国の物価とくらべたら高いのです。
|なぜかといえば、日本社会の希望格差化あるいは階層化に反対している
|人々は、単にノスタルジーを語っているに過ぎないからだ。
あの優しかった時代へのノスタルジーは捨て難い。
さて、階層化は受けとめるとして、
ただ、できるだけ不公平をなくす努力はすべきでしょう。アメリカの賃金格差はやはり行き過ぎだからです。
#世界から社会主義国がなくなり、資本主義の権化であるアメリカへの一極集中で、社会主義のよさを取り入れる仕組みが失われてしまったような気がします。
それと、天下りのぼろ儲けをここらできっぱりなくさないと、借金大国日本は早晩つぶれます。日本経済がロシアのようにデフォルトされたら、天下りのぼろ儲けも絵に描いた餅のはずなのですが・・・。(さて、それはそれでもなくならないのか)
Posted by: 大澤遼 | 2006.04.02 at 12:50 PM
リフレ派から言わせてもらえば、木村剛氏が推進したような「不況によって旧体制を精算しよう」という政策が、却って旧体制を温存する結果になったんですけどね。
そもそも不況の時は既得権益を握っている方が有利で、新興勢力が不利になるんだから。
ホリエモンがあんな歪んだ形でしか成り上がれなかったのだって、不況でまともな商売が難しかったせいだと思いますよ。
だから格差社会を緩和するためには、まず可能な限り持続的な好況を続けることでしょう。それが最初の必要条件です。景気循環による不況は仕方ないとしても、それ以外の要因によって日本を不況にするようなことは
できるだけ避けるべきです。
そしてそれでも解決できない問題については、平行して雇用のミスマッチ解消や正規雇用と非正規雇用の公平化を進めれば良いでしょうね。これらの政策も雇用環境が良ければ十分成果が期待できますから。
Posted by: Baatarism | 2006.04.02 at 12:57 PM
はじめまして格差社会問題、以下のブログ4月1日号、2日号で特集しました。
http://yamashika.cocolog-nifty.com/chiki/
Posted by: 山中鹿次 | 2006.04.02 at 06:09 PM
ボクは日本で暮らすなら少なくとも日本人のほぼ9割を占める真面目で実直に仕事ができる人には年収400万円を社会コストとして支払う、あるいはそのコストを年収300万円とするなら、物価を今の3/4にするくらいはしてもいいと思うのですけどね、まあそれがファンタジーと言われてしまえばそれまでで、言葉が出ないのではありますが...
Posted by: マルセル | 2006.04.03 at 12:54 AM
希望格差社会や階層化社会になっていくことが避けられないとしたら、幸せの見つけ方が人それぞれで異なるということを納得していかなくてはなならないのかも知れません。
それは社会が「成熟」したことであると考えれば、むしろ歓迎すべきことかも知れなくて、必要なことは多様な生き方を許すことができる社会としての懐の深さを担保するということになるでしょう。
日本人は同じ言葉や価値観を共有していて、多様性ということをあまり考えてきませんでしたが、
階層化を多様化と読み替えて、異質なものを異質なままで受け容れる知恵が必要という気がします。ノスタルジーに浸って、何かというと「日本人は・・・」というモノの言い方に固執する輩が相変わらず多いのですが、そうした連中には「絶望が足らん」といってやりたい。
異論があることを承知でいえば、日本を多様性を許す社会に改造していくためには、移民を受け容れることが最も効果的と考えています。ドイツは移民政策を大きく転換して、世界中から知識やスキルのある外国人を積極的に呼び寄せるという方針に舵を切りました。人口動態的に最も移民の受け入れが必要と国連のレポートなどでも勧告されている日本では、移民政策についてポリシーそのものが不在です。このまま、いままできた道を歩いていけば、破綻につながることは、少し考えれば明白なことなのに、なぜか変ろうとしません。大澤さんが指摘されている国家財政の問題にしても、同じことですね。借金の金利を国債発行でうめるような状態にあるわけで、このままでは財政破綻は目に見えているのに、不思議なことにこの国では、マスコミも含め、危機だという声が上がってきません。レミングスの行進とは、まさにこういうことをさすのだと思っています。もっと深く絶望することが必要だと思うのですが・・・
Posted by: katoler | 2006.04.03 at 08:42 PM
アメリカ合衆国という国には、何故か魅力を感じません。貧しい人や国を踏み台にしてふんぞり返っているような気がして・・・。(これはブッシュの印象があまりにつよいからかもしれませんが)
で、ボリビアやモロッコへゆくと、さほど裕福そうにはみえないけれどみんな楽しそうなのです。何故だろう。多分よい幸せの見つけ方をしているのでしょうね。
|幸せの見つけ方が人それぞれで異なるということ
そうなのですが、別に金持ちの楽しみをまねようとはおもわないけれど(大前さんの本を読むと金の使い道を持て余しているようだし)、基本的な衣食住は確保されないと、幸せも見つけられないのかな、という疑問があります。森永さんじゃないけれど、せめて年収300万円か、衣食住のコストがアジア並みにならないといけない、とおもいます。
|階層化を多様化と読み替えて、異質なものを異質なままで
|受け容れる知恵が必要という気がします。
面白い発想ですね。メモをしないと。
|日本を多様性を許す社会に改造していくためには、
|移民を受け容れることが最も効果的と考えています。
アメリカ合衆国の活力のもとは、人種の坩堝だからですよね。
くだらないことばかりする日本人より、まじめな外国人のほうが信頼ができます。
日本語って、異質で特殊な言葉だとおもわれますか? 英語こそ、日本人にとって異質で特殊な言葉なのです。朝鮮語やモンゴル語、そしてトルコ語も学んでいる人に言わせると、日本人にとって簡単な言葉らしいのです。
Posted by: 大澤遼 | 2006.04.04 at 01:35 AM
>借金の金利を国債発行でうめるような状態にあるわけで、このままでは財政破綻は目に見えているのに、不思議なことにこの国では、マスコミも含め、危機だという声が上がってきません。
僕は財政破綻は避けられない物だとは思ってませんよ。確かに現在の国債発行額は巨大ですが、それは巨額の民間貯蓄と経常黒字を反映したものにすぎません。
今後、高齢化の進展に伴い民間貯蓄は減少するので財政赤字の削減は必要ですが、赤字をゼロにする必要はありません。着実な経済成長とマイルドなインフレの元であれば、それは十分可能だと思います。
具体的な財政再建の方法については、bewaadさんのシミュレーションが参考になるでしょう。
http://bewaad.com/20050823.html#p01
Posted by: Baatarism | 2006.04.04 at 12:48 PM
|僕は財政破綻は避けられない物だとは思ってませんよ。
私には、格差社会より、いつデフォルトになるか、そっちのほうが恐ろしいです。
Posted by: 大澤遼 | 2006.04.05 at 12:59 AM