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ユダの福音書発見とシオニズムの行方

歴史を覆す大発見!「ユダの福音書」が明かすイエス・キリストの最後の言葉
米国ナショナル ジオグラフィック協会は、エジプトの砂漠で見つかった約1700年前のパピルス文書を修復・翻訳したところ、この文書はキリスト教の黎明期に教会から異端とされた幻の書『ユダの福音書』の、現存する唯一の写本であることが判明したと発表した。
(nikkeibp.jpより)

Ng200604072 米国ナショナルジオグラフィック協会が、6日、エジプトの砂漠で見つかった1700年前のパピルス文書を解析したところ、初期キリスト教の幻の福音書「ユダの福音書」の写本であることが確実になったこと、そして、その「ユダの福音書」に記載された驚くべき内容を発表した。

これまで12使徒のひとり、ユダは、キリストを裏切り、ローマ人に売り渡した張本人とされていて、新約聖書におさめられたマタイ、マルコ、ルカ、ヨ ハネの正典福音書のいずれにも記載されていた。このことは、後世においてキリスト教徒とユダヤ教徒の対立や、ユダヤ人が受ける長い迫害の歴史の根拠にも なっていた。

ユダは裏切りものではない?

しかし、今回の発見では、ユダがイエスをローマの官憲に引き渡したのは、実はイエスの言いつけによるもの、肉体よりも魂の存在に重きを置く、イエスの教えを積極的に手助けし、完成するものだったということが伝えられている。ナショナルジオグラフィックのプレスリリースでは以下のように説明されている

「最も重要なくだりは、イエスがユダにこう語る部分です。『お前は、 真の私を包むこの肉体を犠牲とし、すべての弟子たちを超える存在になるだろう』。つまり、ユダはイエスから物質である肉体を取り除くことによって、内なる 真の自己、つまり神の本質を解放するというのです」そして、イエスは「ユダは他の弟子から嫌悪されることになるが、彼らより高い地位に昇るだろうと予言し ます。『お前はこの世代の他の者たちの非難の的となるだろう――そして彼らの上に君臨するだろう』と、イエスは言います」

以上の説明からもわかるように、ユダは裏切り者ではなくて、イエスの教えの一番の理解者であったというように解釈が180度転換されているのだ。

ユダの福音書をめぐっては、その存在自体は、長く知られていたが、新約聖書が4つの正典に集約されていく過程で「異端の書」として排除され、実際の写本は人目につかない所に隠されてきた。
そ の実物が見つかり、ユダが裏切り者でなかった根拠があらためて示されたことは、ユダヤ教徒にとって手放しで喜べることかというと、そう単純な話ではないよ うだ。というのも、このユダの福音書をまとめたと考えられる、初期キリスト教グノーシス派と呼ばれる人々は、神秘思想をもっており、旧約聖書に書かれてい る、物質や肉体を創造した創造主としての神々は、魂を解放するものとして登場する新約聖書の至高神に比べて劣る存在と考えられていたという。旧約聖書を唯 一の聖典とする、正統ユダヤ教徒にとっては、こうしたグノーシス派の信仰はとても受け容れられるものではないからだ。

グノーシス派とは、グノーシス(知識)によって選ばれた者が至高の神に到達できるとした宗教者グループで、仏教でいえば小乗的な考え方、もっといえば、オウム真理教のように、神秘主義やオカルティズムに接近し、選民思想や終末論を信奉していた人々といえる。

キリスト教とユダヤ教の歴史的和解

ただし、グノーシス派と呼ばれる人々が、このユダの福音書をまとめたと考えられるとしても、その内容自体に正統ユダヤ教を否定する要素があるわけで はない。テキストコンテンツとして捉えた場合は、ユダの福音書は、ユダの復権とキリスト教とユダヤ教の間で進みつつある歴史的和解を後押しする材料になる だろう。

9.11以降、イスラムの存在感が世界的に強まる中で、キリスト教原理主義者とユダヤ教徒の歴史的な和解が進んだ。このことは米国政府のイスラエル 支援のあり方やパレスチナとの距離の取り方にも影響を与えてきた。ユダの復権が進み両勢力の関係がさらに強まることは、ユダヤの民を選ばれた者とし、シオ ンを約束の地として帰還運動を進めるシオニストたちの動きに力を与える結果になるだろう。

シオニストとキリスト教原理主義者の結託

自分自身を十字軍に擬えてはばからない、神がかり政治家、ジョージWブッシュに大きな影響力を持っているといわれるキリスト教原理主義者は、ハルマ ゲドン(世界最終戦争)の後にメシアが再臨するという信仰を持っている集団だ。終末論を信奉しているという意味では、皮肉なことに正統キリスト教やユダヤ 教が切り捨ててきたグノーシス派の考え方に近いといってもよい。キリスト教原理主義者の特徴は、聖書に書かれていることはそのまま実現されるし、実現され ねばならないという強固な信仰と信念を持っていることだ。

聖書には、キリストの再臨の前提として、現在はイスラムのモスク「岩のドーム」が建てられている場所にユダヤの神殿が再建されることが記述されてい る。だから彼らはシオニズムに加担することによって、このモスクを破壊し、ユダヤの神殿を再建し、ハルマゲドンの到来とメシアの再臨を早めるためにシオニ ストを支援するという、驚くべき功利主義的な考え方に基づいて行動している。ユダの福音書の発見によって、キリスト教原理主義者たちとシオニストたちの関 係がさらに強まり、ハルマゲドンを渇望する連中が跋扈するような状況が生まれてくるとすれば、恐ろしい話だ。
ユダの福音書を密かに護り通した、グノーシス派のキリスト教徒もそんな世界の結末を望んではいなかったはずだ。

(カトラー)

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Comments

特定宗教の信者ではない私のような人間でも 宗教がもたらす社会への甚大な影響を無視して 政治外交経済を考えることはできません。その様な観点からも、今回のエントリー記事もまた興味深く拝読させて頂きました。
 ただ カトラーさんほどの方がこの歴史的発見から引き起こされるであろう幾筋もの考えうる変化の中から 反ブッシュ筋という陳腐な一筋をことさらに取り上げておられることに、少なからず動揺してしまいました。
 私は右翼などと呼ばれる種類の人間ではありませんが、かねてより左翼的と呼ばれる人々の言説に疑問を持っておりました。自民党 中国共産党 朝鮮労働党を同じ文脈で一党独裁と呼んで見せたり、日本人拉致事件と朝鮮人徴用を同列に論じる事など、拾い上げたらきりの無い話で この様なことは事実や真実を追い求める姿勢とはかけ離れたものと考えています。
 今 ブームの最中にあるダヴィンチコードが導き出す結論にしても今回の大発見にしても 私には、キリスト教原理主義を掘り崩してゆく、つまり聖書を一字一句違えずに信じることへの疑問の端緒になると思うのです。それでもキリスト教原理主義が隆盛を保つなら、かえってハルマゲドンとは無縁な アメリカ白人社会の文化や合衆国の成り立ちやその国是の吸引力の強さを考察対象にした方がよいと思います。
 キリスト再臨 ハルマゲドンはカウチポテトでXファイルにかじりついているアメリカ人オタクや、ニューエイジムーブメントの神秘主義と原理主義の希薄な関係の中に存在するのかもしれないのです。
 イスラム原理主義、ユダヤ原理主義シオニストとブッシュアメリカ大統領のキリスト教原理主義の並列はいかにも乱暴だと思われますがいかがでしょうか。

Posted by: 武井 | 2006.04.16 at 01:53 PM

武井さま、コメントありがとうございます。
続稿をまとめさせていただきました。ブッシュの個人的宗教観よりも、神権政治的なありかたが問題という内容になっております。
ご指摘のポイントに必ずしも応えた内容ではないかもしれませんが、ご意見をいただければ幸いです。

Posted by: katoler | 2006.04.18 at 01:41 PM

ナショナルジオグラフィックTVの「ユダの福音書」がYOUTUBEで公開されていました、ニフティ何故かTB不可なので取り急ぎコメントさせていただきます

Posted by: マルセル | 2006.05.25 at 10:36 AM

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