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「キモカワ」論 ~気持ち悪いとカワイイのあいだ~

Hige_image2_1 ゴールデンウィーク中にのびた無精ヒゲを剃るのが、何となく惜しくなり、気分転換にもなるかと思い、アゴヒゲをはやしてみたのだが・・・・不評である。
正確に数えたわけではないが、「良いね」と褒めてくれたのは、10人に1人くらいか。特に家人(女3人)の評価たるや最悪である。

こうやってブログに書いたりすると、また、家族をネタにして受けをねらっていると、ますます顰蹙をかいそうだが、わがアゴヒゲは彼女たちから「キモ イ」と評されてしまったのだ。オヤジ的な生活態度について、これまでも色々文句をいわれてきたものの、いくらなんでも「キモイ」はないだろうと思った、そ んな矢先、「キモカワイイ(略してキモカワ)」という言葉があることを知った。わがアゴヒゲの評価は、せめて「キモカワ」ぐらいにならないものか!

Kawaiiが世界を席捲する

「カワイイ」という言葉は、思い返すと私も結構使っているが、この言葉ほど男女を問わず、今の若い人たちに多用されている言葉は他にないだろう。も ともとは渋谷あたりの女子高生の間で使われていたものが幅広い階層に広がったものと推察できるが、今や若いギャルだけでなく、中年のオバサンや私のような オヤジ連中も普通に日常語として使っている。日本ばかりではない、ハローキティ、ポケモン、セーラームーンといった「カワイイ」キャラは全世界で広く受け 容れられ、村上隆のアニメ風カワイイキャラが、あのルイ・ヴィトンのモノグラムになるなど、今や「Kawaii」は、日本発の消費カルチャーとして世界的 な広がりを見せている。
Kimokawa_usb_1 ところで、「カワイイ」の反対語は何だろうか?最初それにあたるのが、「キモイ」かと思っていたのだが、「キモカワイイ」という言葉があることを知って、 キモイはカワイイの反対概念ではないことがわかった。それだけ、カワイイという言葉は、汎用性があり、対立概念までも風呂敷のように包み込む、懐の深い不 思議な性格をもっている。キモカワとは「気持ち悪くて、かわいい」という意味になるのだが、実際はどのようなものか。

Kimo_kawaii_1 キモカワとは何か

例に、グーグルで「キモカワ」のキーワードで画像検索してみると写真のようなキャラや、明太子や海老フライの形をしたUSBメモリー(これは気に 入った!)が「キモカワ」の例として示されていた。なるほど「キモカワ」とは言いえて妙である。気持ち悪いが、どこかしら憎めないカワイサがある。「キモ カワ」と「キモイ」の差がどこにあるのか知るためには、今度は「キモイ」で画像検索をしてみれば良い。するとひっかかってきたのが、コレだが、確かにキモイ。一応、説明のためにリンクをはっておいたが、写真画像をそのままブログで紹介するのは、さすがに憚れるほどキモイ。

こうした微妙な差異を生み出すのも「カワイイ」という言葉の持つ不思議な力である。
最近、雑誌の「anan」が「カワイイの新定義」という 特集を組んでいた。何か新しい定義でもしているのかと思って、買って読んでみたが、目新しいものはなく、「カワイイ」礼賛であることに変わりはない。日本 の女性にとって「カワイイ」という言葉は、ある種、宗教性さえ帯びた神聖な言葉といえるかも知れない。マクドナルドのエビバーガーを宣伝してるエビちゃん もカワイければ、亡くなった昭和天皇をカワイイと評し、周りを唖然とさせた女流作家もいた。世のファッション雑誌のほとんどは、女性達がカワイイイといわ れるための情報を提供することで成り立っているといっても過言ではない。カワイイという言葉がなくなったら、アニメ、キャラクター業界、ファッション・コ スメ、それに依存するファッション雑誌業界などは、あっという間に崩壊してしまうだろう。

カワイイという言葉の神話作用

よくよく考えてみれば、これはスゴイ言葉だと思い、調べてみようと思ったら、既に、四方田犬彦氏がちくま新書から『「かわいい」論』という本を出していて、この言葉について詳細かつ卓抜な論考をしていた。この言葉について考える上で必読書ともいえる良い本で、示唆されることが多かった。
こ の本の中で著者もカワイイという言葉が「掌に掴んだと信じた瞬間に、するりとそこから抜け落ちてしまう、とらえどころのない何物か」と述べているように、 この言葉には、何かをカワイイといった瞬間に、カワイイという言葉自体も変質してしまうような捕らえどころのなさがある。「キモカワ」という言葉は、「キ モイ」と「カワイイ」の間に存在するまさにギリギリの差異を指し示しているわけで、何を「キモカワ」と感じるかによって、その人物のセンスまで測られてし まう。まさに「カワイイ」という言葉が持つ神話作用を体現しているといってもよいだろう。

話をもとに戻そう。問題は私のアゴヒゲである。キモイではなく、せめてキモカワと言われたいという思いからこの記事を書き始めたわけだが、キモカワ といわれることも、かなりハードルが高いことがわかった。キモカワあるいはカワイイという言葉の神話作用や奥深さを知るにつけて、私のヒゲはフツーすぎ て、今のままでは、ヘンタイ度が足りず、いかにも中途半端な気がしてきた。キモカワといわれるためには、このアゴヒゲをもっと長く伸ばして三つ編みにする とか、パーマをかけるとか・・・・・いい年をしてそんなことを考えている中年オヤジを世間では「キモイ」オヤジといういうのかも知れない。

(カトラー)

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コメント

「顎ヒゲのカトラーさんはシブくて一層素敵・・・」
私はカトラーさんと顔をあわせるたびに
心の中でそう思っておりました(笑)。

「あ、あそこで撮られたんだろうな」
のあごヒゲ写真アップは
シブいカトラーさんさんが携帯片手に試行錯誤しつつ
撮影されている様が思い浮かんで、「かわいいなあ」
(若輩者のくせにすみません!)と勝手に妄想しました。

投稿: まっきー | 2006.05.27 00:13

まっきーさん、思わぬ援護射撃ありがとう。
家の連中にもこのコメントを読ませてやりたいね。やにさがっているとか逆にいわれるかな。

ヒゲをはやすと気になるのが、他の人のヒゲ。以前に比べると、ヒゲをはやしている人がめっきり多くなった気がします。今回、はやしてみたら「チョイワル路線に転換ですか?」といわれて、ビックリしたことがありましたが、雑誌の影響などもやはりあるんでしょうね。でも、自分も含めて日本の男でヒゲが本当に似合う人はなかなかいませんね。

投稿: katoler | 2006.05.27 10:55

そういう事って20代までに済ませませんか(笑)
後はリタイア後にチャレンジとか。

髭ってちゃんとしようと思うと手入れが大変。
カトラーさんにはヤクザめいた幾何学模様をアゴに入れて貰いたい。
普通、無精ひげは無精にしか見えませんって。

投稿: トリル | 2006.05.27 13:19

唐突にすいません。無精髭をみると無性に頬擦りをされたいと思いますがみなさんはどうですか。私にとっては、気持ち悪くも可愛くもなく、ファンタズムの対象でしかありません。カトラーさんのお髭は素敵で、つい、うっとりしてしまいました。とくに、ごま塩のお髭は大歓迎です。いつか、おさるさんのほっぺのように真っ赤になるまで頬擦りしてほしいと思いました。すこし下品でしたね。すいません

投稿: yoshikon | 2006.05.27 20:14

>ヤクザめいた幾何学模様をアゴに入れて貰いたい。

なるほど、どうせやるなら、そこまでやれということですか!ヒゲというものは、盆栽と同じで、自然のもののように見えて、相当手をいれないとダメだということがわかりました。マメな性格じゃないとヒゲはマネジメントできないですね。

>yoshikonさん
一方で、ゴマ塩無精髭が好きという方もいるんですねえ。
今、思い出しましたが、そういえば私の知人で外国暮らしが長くエレガントな方ですが、その方も同じことをいっていました。ゴマ塩無精髭ならなんでも良いということではないでしょうけど・・・

投稿: katoler | 2006.05.28 11:13

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受信: 2006.05.28 02:11

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受信: 2006.09.02 02:06

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