« 「キモカワ」論 ~気持ち悪いとカワイイのあいだ~ | Main | 移民問題を問う④~自分の姿しか見えない蝦蟇蛙、鏡の罠~ »

移民問題を問う③ ~大変化に気づかない「茹で蛙」~

Fujisue_chart 前回の移民問題に関するエントリー記事に30件を超えるコメントやトラックバックをいただいた。その中での議論のまとめも含めて、再びこの問題について考えて見たい。

議論に関係なく進行する現実

移民問題について議論していると、ある種の滑稽さがつきまとうことに気づかされる。

その受け容れの是非について口角泡を飛ばして議論している、まさにその間にも海外から人はどんどん流れ込み、多文化的状況は進行している現実が存在していることが、ポッカリと忘れられているからだ。

最初のエントリー記事で も指摘したように、移民の受け容れについて、それを受け容れるか否かという形で選択肢が存在するというのは、もはや幻想に過ぎない。アメリカやヨーロッパ 諸国に比べれば遅々とした感はあるものの、日本に在留する外国人の数は着実に増加しており、彼らの労働力を前提にしなければ回らない仕事、職場が既に数多 く存在している。近所の中華料理店のことを思い出してみてほしい。いわゆる町のラーメン屋であっても店員として中国や台湾の若い人たちが既に数多く働いて いることに気づくだろう。今後は、外国人労働力や移民の人々をどのように受け容れ、日本の社会でどのような役割を担ってもらうのかを議論しデザインするこ とが何よりも重要なのだ。

外国人の登録数は14年で倍増

手元の数字を紹介すれば、 2004年の登録外国人数は、約197万人、1990年が100万人であったので、この14~15年で倍増したことになる。外国人との結婚も当然のことな がら増える。人口動態調査によれば、1990年には、カップルのいずれかが外国人である国際結婚は、28組に1組であったのに対して、2004年では、 18組に1組にまで増加している。周りを海に囲まれているとはいえ、イスラエルがパレスチナの居住区に対して行っているような高壁を築いて人の流れを止め ることなどできないし、男女が出会えば恋が生まれる。人種、国境を超えた2人の間で生まれた恋愛を誰も止めることなんかできはしないのだ。

蛙をガラス瓶の中に入れ、火にかけて徐々に熱くしていっても、それにつれて体温が上昇する蛙は周 りの温度の上昇に気づかない。お湯が沸騰する寸前になってやっと事態の変化に気づいて飛び出そうともがくのだが、時既に遅く、蛙は茹で上がってお陀仏に なってしまう。移民問題を議論していると、この問題について無自覚、あるいは問題自体の存在を無視しようとする人たちに対して、どうしてもこの茹で蛙の姿 がオーバーラップしてしまうのだ。

我々はこの問題について議論 をすることで、事態の変化にコミットしている気になっているだけで、本当はそうした議論と関係ないところで、物事は粛々と進行しているだけではないのか。 それは、ちょうど幕末の時代に、黒船を目の前にした人々が、開国か攘夷かをめぐって虚しい議論を重ねた姿に似ていないだろうか。歴史には必然というものが あり、その奔流の中にあって、好き嫌いの議論をしてみても何も始まらない。

民主党の参議院議員、ふじすえ健三議員が自分のブログで興味深いグラフを作っていた。

日本有史以来初の人口減少

日本の総人口の長期的推移に ついてまとめたグラフなのだが、ミソは鎌倉時代まで遡ってグラフを描いていることだ。これによってわかるのは、新聞などによく「統計が始まって以来の人口 減少」などと書かれているのだが、現在進行しているのは、そんなレベルの問題ではなく、ひろすえ氏が指摘しているように日 本有史以来初の本格的人口減少」であることを認識する必要があるのだ。人口が減少しても、大したことはない、頭数が減る分だけ今の生活水準はヘッジされ る、あるいは、かえって豊かになるなどと主張している三流経済学者の言うことなどハナから信じない方が良い。有史以来はじめての事態に対して、こちらが座 して変わらずに、生き延びられた例など古今東西のどこの歴史をひもといても見つけられるはずがない。そんなことを言っている輩は、耳障りの良いことを言っ て、書いた本さえ売り抜ければ、とりあえず自分の老後だけは安泰だと考えているインチキ野郎に違いない。

 

前回の記事でも指摘したように、少子高齢化&人口減少社会の到来という問題は日本だけが直面している問題ではない。もともと移民国家である米国は除いて、他のヨーロッパの先進諸国が等しく悩んでいる問題だ。そ して、ドイツやフランスなどに比べて日本の対応が明らかに劣っているのは、移民問題に対する問題意識すら存在しない、ましてや「政策」や「戦略」など望む べくもないという状況にあることだ。移民の受け入れをめぐって、確かにドイツやフランスでは社会問題が勃発し、国全体が軋み、苦悶している。そうした状況 を見て「だから移民など入れない方がいいんだよ」という稚拙な議論が日本ではいまだにまかり通る。そうではないのだ、彼らは、今起きていることが、地球規 模で起きている歴史的大変化であることを正確に認識している。それに対して必死に対応しようとしているのである。

前回の記事で も指摘したように、ドイツの新たな移民政策は、国内に400万人と言われる深刻な失業問題を抱える只中において実行に移された。国をあげての国民的議論を 行った上で選択された歴史的な政策転換である。次の時代に向けて、とにかく新しい一歩を踏み出すために自ら選択する形で「産みの苦しみ」を味わっているの だ。それに対して、この国の状況は、どうだろう。平和を貪るだけで、あまりに脳天気にすぎないか。

(カトラー)

この項続く

関連記事:

移民問題を問う② ~メルティングポットからサラダ・ボウルへ~

移民問題を問う① ~思考停止状態から脱却せよ~

|

« 「キモカワ」論 ~気持ち悪いとカワイイのあいだ~ | Main | 移民問題を問う④~自分の姿しか見えない蝦蟇蛙、鏡の罠~ »

Comments

ひろさん、他の方からもコメントが書き込めないとの指摘をいただきました。
設定は、オープンになっていたのですが・・・
ココログ側でサーバーに障害が生じていたとのアナウンスがありましたので、その影響だったかもしれません。失礼しました。

Posted by: katoler | 2006.06.03 at 09:38 AM

有史以来の初の人口減少だから、国民生活が貧しくなるはずだってのも、おかしな理屈だとは思います。
たとえば、日本の高度成長は人口増の寄与よりも、生産性向上の寄与のほうが大きかったそうです。考えようによっては、生産性の向上でカバーできるのかもしれません。
もちろん、人口が増加するほうが減少するよりも経済成長しやすいのは事実でしょうけど、カトラーさんのように断言してしまうのは、「三流経済学者」と同レベルだと思います。
僕自身の考えは、政治的に合意の取れるところで決めればいいというものです。
移民をゼロにすることはできないでしょうし、社会を不安定にするほど一気に受け入れることも出来ないと思います。
その間の微妙なところでバランスを取るのだと思います。
たとえば移民が比較的少なければ、おそらく単純労働をするロボットの技術開発が加速するでしょう。そして、それは一つの通商上の武器になると思います。
どんな道をたどるにしろ、やりようはあるだろうなと思います。

Posted by: ひろ | 2006.06.03 at 11:01 AM

カトラーさんのブログは興味深く拝見しました。
「移民政策」というとき、実は、2つのことが問題になっています。ひとつは、移民たちの入国受け入れ自体の問題。ふたつめは、ニューカマーたちがどうやって同化・統合していくか、どのように日本の社会や経済に上手く参加できるかという問題。表裏一体の問題です。
 受け入れが寛容な国は、後者の統合(同化)策が厳しく(フランスモデル)、受け入れが厳しい国は、緩やかな同化策をとっている(スエーデンモデル)のが一般的です。
日本は、現在、実態として入り口を開きつつありますね! 成田空港でも、「日本人」の列に並ぶガイジンが多くなったのに気がつくでしょう。でも、カトラーさんが指摘するように、その受け容れや同化(統合)政策自体が存在しない状態です。 日本のように、受け容れや同化(統合)政策が不在だと、曖昧な立場の移民が増え、非合法労働したり、非合法滞在者が増え、余計に移民に対する国民の反発が高まるでしょう。また、そうした曖昧な立場の滞在者を肉体労働力として搾取して、もうける会社もでてくるでしょう(これが、まさにスペインがぶちあたっているケースです)。
 移民受け入れ賛成・反対の堂々めぐりよりも、移民受け入れとセットになっている同化(統合)政策を重視すべきな気がします。実際、私の周囲には、日本語が日本人よりも上手く、日本人より日本人らしい態度のガイジンがいますよー。彼らは異口同音に「日本の社会で(ビジネス、生活、全般において)円滑にやっていくには、日本人のように振舞うしかないもの!」と言っています。それでいながら、自分たちの文化も大事にしている彼らです。こういう人が本当のコスモポリタンなんでしょうね。

Posted by: junquo | 2006.06.03 at 05:36 PM

>ドイツやフランスなどに比べて日本の対応が明らかに劣っているのは、移民問題に対する問題意識すら存在しない

ドイツやフランスの対応が、日本に劣っていると思います。

人口増加や人口維持は人類社会になにひとつ恩恵を与えていません。
自然環境や食料・エネルギーの自給率を考えれば、人口を減らすほうが人類全体に有意義な効果をもたらします。


>、日本に在留する外国人の数は着実に増加しており、彼らの労働力を前提にしなければ回らない仕事、職場が既に数多く存在している。近所の中華料理店のことを思い出してみてほしい。

このおかげで、日本の労働市場は混乱し、多くの日本人が低賃金で働かざるを得なくなっていまる。
馬鹿みたいな低賃金で働く外国人労働者が日本人を苦しめています。

ドイツやフランスのように人類社会を混乱させるばかりの愚行を繰り返してきた国家の政策を真似するのは百害あって一利なしです。

>蛙をガラス瓶の中に入れ、火にかけて徐々に熱くしていっても、それにつれて体温が上昇する蛙は周りの温度の上昇に気づかない。お湯が沸騰する寸前になってやっと事態の変化に気づいて飛び出そうともがくのだが

これは迷信です。

Posted by: むにゅう! | 2006.06.03 at 06:47 PM

> 実際、私の周囲には、日本語が日本人よりも上手く、日本人より
> 日本人らしい態度のガイジンがいますよー。

ならいいのですが、私の知人の外国人で、日本で起業し小さな会社を経営されているのですが(ビジネス自体はそれほど悪くないのですが、自分が期待したものではないようです)、常に自国流をつらぬかれ、それが上手くゆかないと日本のビジネスの習慣をなじっています。(日本語がそれなりにしゃべれるのだから、同じ外国人とばかり交わらず日本人とも交わればと忠告するのですが・・・、なかなか上手くゆきません)

> それでいながら、自分たちの文化も大事にしている彼らです。
> こういう人が本当のコスモポリタンなんでしょうね。

こういうあたまのいい方たちは、自分たちの立ち位置がよくわかってらっしゃるのでしょうね。

Posted by: ADELANTE | 2006.06.03 at 08:31 PM

>議論に関係なく進行する現実

これは同意。

>長期的推移についてまとめたグラフ

リテラシー問題じゃなかね?
ダメだよ、こんなの出したら信用失うよ。
グラフが嘘だというんじゃなくて、表示方式で印象操作が幾らでも可能だよ。

>移民問題に対する問題意識すら存在しない、ましてや「政策」や「戦略」など望むべくもないという

私はそう思わないが、後半部分は少し不安。

グローバルな優良ノマドが如何に日本に愛着なり貢献なりして貰うようにするかは重要だと思う。

でもそれは移民や難民というイメージではないんだな、私の中では。

Posted by: トリル | 2006.06.04 at 12:50 AM

つうか、ドイツやフランスの例だけを出したり、すでに現実はこうなんだから(諦めろ?)ということを繰り返しているだけのような。

>今後は、外国人労働力や移民の人々をどのように受け容れ、日本の社会でどのような役割を担ってもらうのかを議論しデザインすることが何よりも重要なのだ。

移民にやってもらう仕事は何もありませんよ。
労働集約的な産業は、日本国内には存在しないといってもよいくらいです。


以下のブログでは、米国の出生率向上は移民のせいではなく愛国心のようです。

http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2006/06/post_2632.html
>>
 それを裏づける証拠もある。シカゴ大学全国世論調査センターが33カ国で実施した調査では、「他のどんな国よりも自国の国民でありたい」と「強く思う」と答えた割合がアメリカでは75%、ドイツ、フランス、スペインではそれぞれ21%、34%、21%だった。
<<

Posted by: | 2006.06.04 at 10:37 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/20869/10362087

Listed below are links to weblogs that reference 移民問題を問う③ ~大変化に気づかない「茹で蛙」~:

» 移民のはなし [ひろのきまぐれ日記]
 移民問題を問う③ ~歴史の変化に気づかない「茹で蛙」~  コメントを受け付けてもらえないようなので、TBすることにしました。 日本有史以来初の本格的人口減少」であることを認識する必要があるのだ。人口が減少しても、大したことはない、今の生活水準はヘッジされ、かえって頭数が減る分だけ豊かになるなどと主張している三流経済学者の言うことなどハナから信じない方が良い。有史以来はじめての事態に対して、こちらが変わらなくて良いなどという話があるはずがないのだ。そんなことを言っている奴はインチキ野郎と考え... [Read More]

Tracked on 2006.06.03 at 12:29 AM

» 婚姻の5%は国際結婚 [不安症オヤジの日記]
東京大学の伊藤元重先生が、いまや結婚の5%は国際結婚だと言っていたので、本当かなと思い、確認してみた。ソースは、厚生労働省の「人口動態統計」である。 これによると、2004年の婚姻数は720,417件(これは30年前の7割ほどだ)で、そのうち夫妻のどちらか一方が外国... [Read More]

Tracked on 2006.06.13 at 02:15 PM

« 「キモカワ」論 ~気持ち悪いとカワイイのあいだ~ | Main | 移民問題を問う④~自分の姿しか見えない蝦蟇蛙、鏡の罠~ »