フリーペーパー・バブルの行く末
街中を歩いていると、フリーペーパーがやたらと目につくようになった。
地下鉄の駅構内には、フリーペーパー・マガジンの専用ラックが設置され、毎週、大量のフリーペーパーが、うず高く積まれている光景を目にする。2年前にリクルートが始めた「R25」は一定のマーケットを掴んだようで、今度は女性(OL)マーケットを狙って「L25」が発刊された。
2億9357万部にのぼる紙爆弾
フリーペーパーの発行社で構成しているJAFNA(日本生活情報紙協会)の報告によれば、2006年現在、全国で1200紙誌、なんと2億9375万部にのぼるフリーペーパー・マガジンが発行されている。まさに、紙爆弾が日本中に投下されているといっても過言ではない。3年前の調査では、約2億2千万部だったので、3割増の7300万部が上乗せされた格好だ。ただ、JAFNAも報告書において認めているように、市場の移り変わりが激しく、調査票の回収率が著しく低下していて、創廃刊が繰り返されている流動的な市場の実態を必ずしも正確につかみきれていない。ともあれ、現象的には、フリーペーパーがこれまでにない活況を呈しているわけで「フリーペーパー・バブル」とでも呼ぶべき状況が生まれている。フリーペーパー発行ビジネスとは、そんなに儲かるビジネスなのだろうか。
日本のフリーペーパー・ビジネスの始まりをみていくと、30年前ほど昔に遡る。この時代は、雑誌「ぴあ」の創刊やリクルートの情報誌が次々と発行された時期にあたり、「ニューメディアの時代」といわれた。
日本において本格的なフリーペーパービジネスをてがけたのは、サンケイリビング新聞社だが、もともとは産経新聞の副読紙としてスタートした。当初は、産経新聞に折り込まれ、チラシに毛のはえたようなメディアに過ぎなかったが、当時のサンケイリビングのトップだった中谷昭世氏の卓見で、産経新聞とは全く切り離した独自の配布組織を作り上げ、山の手地区を集中的にカバーする独自の配布体制を構築した。社会参加の意欲が出始めていた主婦層をコンパニオンとして組織化して、リビング新聞を自分が住んでいる地域に軒並み配布させたのだ。その結果、リビング新聞の地域における世帯占有率は80%を超え、他の一般新聞の世帯占有率を大きく凌駕する新聞となり、生活情報を中心に情報提供していたことから主婦層読者から圧倒的な支持を得ることができた。サンケイリビングの成長の軌跡を追っていくと、フリーペーパーの成功要件というものが垣間見えてくる。
コンタクトポイントの固定化がフリーペーパーの成功要件
フリーペーパーにとって最も重要と考えられるのは、コンタクトポイントの固定化だ。この点に関する理解がないために、その後、サンケイリビングの事業的な成功を見て追随したフリーペーパー・マガジンは、ことごとく失敗した。紙爆弾のような折り込みチラシとリビング新聞が決定的に異なるのは、毎週定期的に、固定した世帯に届けられるという点にあり、そのことによって、リビング新聞というメディアに対するロイヤリティーや購読習慣が形成される。つまり、コンタクトポイントの固定化が、単なる紙爆弾をメディアに生まれ変わらせるのだ。
この観点から最近のフリーペーパーブームを検証して見ると、R25やメトロポリターナといった取り置きスタイルのフリーマガジンが定着したのは、地下鉄の駅構内に取り置きラックが設置されたことが大きいことがわかる。毎日、決まって通過する通勤途上の、毎週、固定した場所でフリーマガジンが置かれているという状況を作り出したことが、この場合の成功要件になった。単に決まった場所で配布すれば、良いということではない、固定した場所に固定した読者をコンタクトさせられるかどうかが、取り置き型のフリーペーパー・マガジンの場合、成功の分かれ目になる。逆にいえば、コンタクトポイントを固定化できていないフリーペーパー・マガジンは、早晩、姿を消すことになるだろう。
フリーマガジンのせいで、有料メディアが売れなくなる?
フリーペーパー・マガジンが花盛りで、一見活況を呈しているように見えるが、関係者によれば、儲かっているところは、ほんの一握りしかない。それでもフリーペーパー・マガジンが雨後の竹の子のように次々と出てくるのは、他方で有料の雑誌や新聞が売れなくなっているからで、悪くいえば、フリーペーパー発行とは、出版メディア界がひねり出した、苦し紛れの窮余の一策ということになる。
媒体発行者の経営は、現在では半分以上を広告収入に依存している。雑誌や新聞が売れなくては、広告が入らない。そのために過剰な販促費を投下することになるのだが、その費用効率がどんどん悪化している。であれば、タダで配ってしまう方が得策・・という判断が生まれてくる。リクルートのR25は、それまで雑誌や新聞をなかなか購読してくれなかった団塊ジュニア世代に向けて、一気に40万部を超える発行部数を実現し、業界に衝撃を与えた。R25に続け!というわけで、さまざまなフリーメディアが、ドッと地下鉄構内に溢れかえったのだが、皮肉なことに、そのことは自分の首をしめる結果にも繋がっている。
一例をあげれば、地下鉄構内で大量のフリーマガジンが配布されることになったため、キヨスク等で販売している、有料のスポーツ新聞や夕刊紙の売上げが著しく減少している。通勤客の通勤時間を既存メディアとフリーメディアが奪い合うという状況が生まれているのだ。
先日、有楽町の交差点で、ホームレスの男性が「BIG ISSUE」(ビッグイシュー)の日本版を販売している光景に出くわした。このブログでもこの雑誌について発刊当時(2年前)に取り上げたことがあるが、久しぶりに買って(200円)読んでみると、昔に比べて編集内容は格段に向上していた。ホームレスの販売員が読者から人生相談を受けるという「ホームレス人生相談」というコラム記事などは、自分の人生の失敗経験なども引き合いにしつつ、この雑誌でなければ成立しない何ともいえぬ含蓄のある読み物になっていた。
私が、100円玉を2個をポケットから取り出して、ホームレスの販売員に手渡していた、ちょうどその時、赤いカウボーイハットを被ったホットペッパー(リクルート発行)のキャンペーンガールが目の前で、道行く人々に黄色い声を上げながらタダで本を配りはじめた。ホームレスの販売員の男性は、それを見ながら「困ったもんだ」という顔をして「何でもタダでくばられちゃ、こっちはタマラネエや」と言って肩をすくめて見せた。
1冊200円の「BIG ISSUE」を売って、毎日の生計を立てている彼らにとって、フリーペーパーとは、紙爆弾以外の何物でもない。
(カトラー)
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コメント
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