女ヤクザ「細木数子 魔女の履歴書」を読む
大殺界とは六星占術に基づいて細木数子が言い出したことで、人生の運気の最悪期のことを指し、この時期は身を慎んで何もしないことが肝要と説かれている。大殺界といわれたことをきっかけに細木数子について少し調べてみたら、そのマーケティング戦略に逆に感心してしまい、このブログでも「細木数子のマーケティング戦略」という記事にまとめて、エントリーしたことがある。その時の文章を以下に引用する。
「細木の場合は、『大殺界』という言葉を、彼女が出演するTV番組でさんざん押し出し、ビビった人間を本屋に向かわせるという、巧妙なマッチ&ポンプのシステムが仕組まれている。毎年、大殺界に当たる人間が何万人いるのか知らないが、その中の一定割合が確実に彼女の本の新規読者になっていく寸法だ。それが証拠に、私が出向いた近所の本屋では、『土星人の運命』という本は既に売り切れになっていた。私と同じ大殺界の土星人たちがビビッて本を買っていったのだ。ウマイねえ、数子おばちゃん!そして細木がさらに賢いところは、大殺界の人間にそのことを理由に壺だ掛け軸だと高額な商品を売りつけたりしないところだ。先祖供養をしなさい、仏壇を掃除しなさいというような、人間として当たり前のことを説いている。
『大殺界』というキーワードを掲げたことで、入口こそオドロオドロしいが、出口としては基本的には良いことを言っているので、口コミが広がり、結果として3900万部も本が売れることになる」
細木のいう「大殺界」自体は、全くくだらない与太話だと思ったが、そうしたコンセプトで脅しをかけ、4千万部に達する本を売ってしまう商才は大変なものだと思った。この記事をまとめた後も、細木人気は衰えることを知らず、細木が出演するTBSのゴールデン枠のバラエティー番組は、16%を超える高視聴率をたたき出した。
追い詰められる細木数子
その細木数子が追い詰められている。組織暴力団などへの突っ込んだ取材で知られる硬派のノンフィクションライター溝口敦氏が、週刊現代で書いていた細木数子に関する連載をまとめて「細木数子 魔女の履歴書」という本を上梓したからだ。
この本には、細木数子という人物の生い立ちや男性遍歴、また、そこに色濃く落とされている組織暴力団や暴力団員との交流の影や霊感商法まがいの遣り口が、丹念な取材によって、白日の下に晒されている。さらには、週刊現代での連載が開始された直後、細木から依頼を受けたと思われる組織暴力団の幹部から掲載中止を促す圧力があったことまでが、赤裸々に暴露されている。
「あなた地獄に堕ちるわよ」という脅し文句と「コブラ」のような眼光で、番組に出演したタレントを竦みあがらせていた細木数子も、溝口敦という、とんだ「マングーズ」に噛み付かれたものだ。
溝口氏のレポートが事実だとすれば、私の前回記事も訂正をしなくてはならない。
細木数子は色々、脅しめいたことを言うが、その出口としては「先祖供養」など、人間としてごく当たり前のことを言っており、あくまで本を売ることが目的になっている点が、他の霊感商法と異なる点だと、私のエントリー記事では持ち上げた形になっているのだが、溝口氏の著書に依れば、「勉強会」と称するセミナーがあり、そこへの参加者に対しては、正しい先祖供養のための墓地、墓石が売りつけられているという実態があるようだ。だとすれば、細木数子の占いとは、結局のところ徹頭徹尾「インチキ商売」であり、宗教や占いという衣を被った他の霊感商法と何ら異なるところがないと訂正させていただく。
それにしても、こうしたインチキ詐欺師が、公共のメディアを席巻する世相というのは、一体何なのだろうか。溝口氏が、この本で問うているのもその点である。
細木数子は低俗な女?
「細木数子は低俗な女である。他に食い物が無く、くそも味噌も一緒くたにして喰ってきた者の持つ低俗性なのだろうが、ちょうど手放しでヤクザを讃え上げる浪曲など大衆芸能の持つ、低俗性に通じるのか、多数国民の中には細木に共鳴する層が確実に存在する」
「細木の本質は女ヤクザにあり、彼女の持つ低俗性はヤクザに由来している。細木自身はヤクザとの骨がらみの関係を過去のこととして葬り、隠し通せると考えているようだが、前記した通り、隠しきれる規模ではない。細木は朱に交わって赤くなり、ついには細木という人間がヤクザに変身した」(細木数子 魔女の履歴書より)
溝口氏の連載に対しては、細木から、総額6億円にものぼる損害賠償訴訟がおこされていることもあり、細木を評する口調は確かに手厳しいが、その眼差しは、必ずしも否定的ではない。少女期を敗戦のドサクサの時代に過ごし、生き延びるために自身の色香とはったりだけを武器にして、のし上がってきた細木の生き方を「低俗」と断じる一方で、「時代の持つ低俗性が細木を生み育てた一面がある」と彼女の生き方自体には理解を示している。それは、長年ヤクザ者の取材を続けてきた溝口氏ならではの眼差しといえるだろう。
余談になるが、ヤクザという言葉の語源には諸説あるのだが、その中に、ヤクザとは「8,9,3」という、花札博打の「おいちょかぶ」の数字に由来するという説がある。おいちょかぶでは、3枚の札を引いて、それぞれの札が表現している数字を足し合わせて、合計値の一の位の数字の大小を競う。8、9の札を引いて17となった場合、一の位は7となるので堅気の人間であれば、三枚目を引くことはしないが、「ヤクザ」になるような投機的、射幸的な人間は、更に3枚目を引いて8+9+3=0という最悪の結果を招いてしまう。
ヤクザ性に満ちている今の社会
ここにいう、3枚目の札を引いて、泣きを見てしまう人間のことをヤクザというなら、私自身にだってそうした893性が十分にあるし、今の社会全体が893性に満ちている。
ベンチャー投資や、投機的な商品取引、株投資などの世界では、3枚目の札を引く態度がむしろ求められることの方が普通だ。実際、こうしたハイリスク・ハイリターンの分野には、本物のヤクザの分身、企業舎弟が合法的に入り込んでいるという噂が絶えない。
○○一家、××組といった代紋を掲げる組織暴力団としての古典的ヤクザ集団は、確かに影が薄くなりつつあるが、社会システム全体に893性、あるいはヤクザ性が、リファインされた形で偏在するようになった。アイフルやプロミスといった大手の消費者金融が行っているグレー金利を設けた上で、債務者を生命保険に加入させ、低所得者の命をかたに高金利でなけなしの金を巻き上げるといった行為は、昔のヤクザだってやらなかった反社会的行為だ。そうした行為を上場企業が、シャアシャアと合法的な面をして行っているということにこそ最大の問題がある。こうした上場企業が、ぼろ儲けして上げている利益、やっていることの反社会性を考えた場合、細木数子などより余程あくどいといえるだろう。
再び話を細木数子のことに戻そう。
細木数子が3枚目の札を引いたとするなら、それは一体、何だろう。いいかえれば、細木数子の現時点における「反社会性」とは何か?という問題だ。溝口氏は、細木の暴力団との関係が明らかになったということを以って、細木を起用しているTBSなどのテレビ局に対して「なぜ細木のような反社会的な人物を公共的放送で起用するのか」という趣旨の質問状を投げかけている。今のところ、局側は静観の構えだが、この問題が、細木が密かに望んでいるように、うやむやになるかどうかは疑問だ。
以前の記事にも書いたように、単に本を売る手段として、占いや「大殺界」を振り回している限りにおいては、アザトイことをやっているということはいえても、その事自体を反社会的行為と糾弾することはできないだろう。しかし、溝口氏の著書に書かれているように、「勉強会」と称するセミナーで、高額な墓地や墓石を売りつけられた人々が騒ぎ出したら事態は一変する。
その時、女ヤクザ細木数子は、3枚目の札を引いてしまった自らの893(ヤクザ)性を痛恨することになるのかもしれない。
(カトラー)
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コメント
恐怖を与えてお金を掠め取るって手法は古典的です。そもそも人は恐怖を欲しているのですから。未来が怖いから、勉強していい学校に入りなさい、いい会社に就職しなさい、いい相手と結婚しなさい、子供は利発に育てなさい、貯金しなさい、病気に気をつけなさい、・・・・・、毎日毎日、親から、近親者から、学校から、会社から、メディアから、パートナーから・・・、言われている、または言われているような圧力を感じて生きています。しかし、それらの重圧は年齢と共に、次第に弱まってきます。あれほど「早く結婚しなさい」と言っていた親や近親者が、もう結婚の話題さえも出さなくなるそんな瞬間に、細木ホール(穴)に捕まってしまうのでは。彼女の頭脳レベルは、週刊文春の清野氏のコラムで分析されていましたが、日本語がしゃべれないレベルのようです。期待されなくなったら、細木ホールに捕まって、スゴロクの様に幼稚園に逆戻り、なんて感じですかね。園児に騙されているなんて、超学歴社会の末路にしては哀れすぎて、ラスプーチンから笑われそうですね。最近流行りの「インテリジェンス」(情報という日本語が適切らしいが)で、数子の穴を諜報活動してくれ!
投稿: あたり前 | 2006.12.18 11:29
・なぜ、こんな低俗な女性のお説教が受けるのか?
・なぜ、こんな低俗な番組をテレビ局は続けるのか?
聖人がいなくなった今(みんな悪いことしてるシ)、悪の迫力ある説教のほうが、身にしみる。
テレビ局に、もはや報道機関としての矜持はない。D通やS耕、Jニーズの言いなり。もちろん893もね。
仁義を説くのは893の常。その裏でカツアゲするのも893の常。
問題は、それにNOを言えないテレビ局。いいカモ。K兄弟もおなじ図式でしょう。
裏家業が表になる時代、とっくに始まってる。
投稿: 野茂ファン | 2006.12.19 17:23
あたり前さま、コメントありがとうございます。
>そもそも人は恐怖を欲しているのですから
というのは含蓄深いお言葉ですね。ご指摘の通り、何を怖がるかを見れば、その人間の本質がわかります。細木数子の脅し文句がこれだけ人気を博しているのは、今の暮らしを失いたくないという、日本人が抱いている漠然とした未来への「恐怖」、あるいは日々が空しく過ぎ去っていくことへの「焦燥感」の裏返しなのかもしれません。
大殺界というコンセプトや占い自体は、人生にはイイ時、悪い時、浮き沈みがあるという世界観の反映と見れば、基本的には無邪気な考え方で、罪の浅いものだといえますが、モノ売りと結びつくと性質が悪いものになりますね。
投稿: katoler | 2006.12.19 19:15
・なぜ、こんな低俗な女性のお説教が受けるのか?
・なぜ、こんな低俗な番組をテレビ局は続けるのか?
ホントに野茂ファンさんのおっしゃるとおりです。昔からテレビ番組は低俗の謗りを受けてきましたが、昔のテレビマンたちには、矜持があり、くだらないことを、心底面白がっていて、そうした批判をむしろ肥やしにして先に進んでいました。しかし、今のテレビは堕落しました。作り手の方が、単に視聴率の虜になって、こんな番組作って何が面白いのだろうとしか思われない番組ばかりが目につきます。作り手の倦怠感が画面からにじみ出てきます。
もともと、テレビを見るのは好きなほうだったのですが、最近は、こうしたテレビを正視しているのが苦痛になりました。これも年をくったせいかなとも思いましたが、老若男女に関わらず、周りにテレビを見るのをやめた人たちが増えているようです。テレビのスイッチを切ってしまうというのもひとつの防衛策といえるかも知れませんね。
投稿: katoler | 2006.12.19 19:36
著書 -> セミナー -> コンサルティング -> 本商品という、後工程になるほど単価が高くなる一般的な集客・販売=マーケティング事例ですね?
その本商品に“霊園”(墓地・墓石)が絡めば、宗教法人設立や土地収用で暗躍した人達との接点が生まれてしまうのは、今さら騒ぎ立てるほどのことでは無いように思われつつ。
そこを掘り下げて“地場の有力者”や“知事”、“代議士”の名前を公表するまでに至らないところが、いわゆる“暴露本”の面白いところでしょうね。
投稿: 課長007 | 2006.12.28 17:57
Something is rotten in the state of Denmark.
投稿: Sofia Amateur | 2011.04.28 21:10
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