食糧危機の深層② ~モンサントの食糧支配の野望~
洞爺湖サミットを前に原油・食糧問題がサミットの最重要課題になることが濃厚となってきた。今回のサミットの議長国として地球環境問題で議論のイニシアティブをとり、政権浮揚のきっかけにしたい福田首相だが、原油・食糧問題について世界最大の輸入国として戦略的な対応とビジョンが打ち出せるかどうかが問われている。
前回の食糧問題に関するエントリー記事で、今回の食糧価格の高騰が、昨年2月のブッシュ米国大統領の一般教書演説で代替エネルギーとしてバイオエタノールを重視する方針が打ち出されたことを機に、投機マネーが国際穀物相場に呼び込まれたことによって生まれた「投機相場」であることを指摘した。バイオエタノール騒ぎとは、実のところは、ブッシュ政権の意図が反映された「マッチ&ポンプ相場」ではないのかという見方に対して、ゴーログの木村剛氏が、「米国を中心に、実物経済と比較すると過剰な流動性」が存在しており、「この過剰流動性が存在している限り、実物経済にバブル的な影響を与えることは、ある意味で避けられない」のであり、そこに特定の意図が働いているという形で犯人捜しをすることは、陰謀史観に陥りかねないとの意見が寄せられた。木村氏がいうように米国も含めて、誰もコントロールできないというのが「過剰流動性」の本質であり、その意味では、犯人捜しや、陰謀史観に基づく見方というものは、時として物事の本質を見誤らせることになる。
しかし、この問題に関して、もうひとつ隠された「陰謀」とでも呼ぶべき、世界戦略が存在していることについて、今回のエントリーであえて論じてみたい。
問われる"モンサント"社の世界戦略
6月14日にNHKが、「アグリビジネスの巨人"モンサント"の世界戦略」というフランスのドキュメンタリー番組を放映した。この番組の放映に際して、NHKは予告番組までつくって異例の力の入れようだったが、この番組は、ヨーロッパでオンエアされた際にも大きな反響を呼び起こしたものだ。
モンサントとは、日本では、まだ一般の馴染みは薄いが、遺伝子組み換え作物(GMO)市場の90%をおさせている米国の多国籍アグリビジネス企業である。もともと、この企業は、ベトナム戦争で使われた枯れ葉剤や、その技術を転用して開発された除草剤「ラウンドアップ」を製造する化学品メーカーであったが、除草剤を製造するよりも、バイオテクノロジーによって自社の除草剤「ラウンドアップ」に対して耐性を持つ、遺伝子組み換え作物を作り、その種子を販売する方が、はるかに儲かるということに目をつけ、アグリビジネスに転身した。そのビジネスモデルは、画期的ともいえるものだ。
知財を盾に農民に訴訟を起こしているモンサント社
すなわち、モンサント社は、先ずバイオテクノロジーによって開発したGMO作物の種子を知財(特許)として米国政府に認めさせ、その種子を勝手に栽培できないようにした。
農民は、大豆、小麦、トウモロコシといったモンサント社の遺伝子組み換え作物の種子を毎年、購入しないと栽培できない。もし、収穫の一部を翌年の種子として使い回すと、モンサント社から特許を盾に訴訟を起こされ、損害賠償を請求される。米国では、こうした訴訟で多額の賠償金や和解金を支払わされたり、破産に追い込まれた農家が数多く存在する。
つまり、農家はモンサント社の種を使うことで、毎年、種子を買わねばならず、なおかつ、モンサントの除草剤「ラウンドアップ」に対して特定的に耐性を持っているために、その除草剤も買わなくてはならないという二重のしばりを受けることになる。
そこまでして何故、モンサント社の種子を使わなくてはならないかといえば、全ての雑草が死に絶えるような強力な除草剤を1回撒けば、後は作物の生育に手間をかけずに済むという点が受け容れられているからだ。
農業の真似事でもやったこがあればわかるだろうが、農作業の中で草取りが一番の重労働で、しかもその労を怠ると、栄養分や太陽光が作物に行き渡らず、うまく生育が進まない。こうした除草作業の労力を軽減させ、収量を飛躍的にアップさせることができるというのが、GMO作物の最大のセールスポイントである。広大な農地で機械化によって作物を栽培する米国などにおいては、除草作業の手間とコストを軽減できるということが、GMO作物を急速に拡大させた背景になっている。
払拭されない、GMO作物の安全性への懸念
しかし、こうして作られた農産物が本当に安全なのかどうかについては、誕生当初から現在に至るまで異論が存在する。事実、こうした声に押されて、ヨーロッパや日本では、遺伝子組み換え作物(GMO)を使った食品などは「フランケン食品」として嫌悪され、消費者に受け容れられていない。
NHKが放送したドキュメンタリーでは、フランスのジャーナリスト、マリー・モニク・ロビン氏が綿密な調査報道によって、モンサント社の遺伝子組み換え作物(GMO)のFDAにおける認可が、実は安全性よりも「政治的な判断」として下されたことが明らかにされるなど、GMO作物の安全性については、依然大きな懸念がつきまっとっている。
モンサント社は、米国以外の先進諸国、ヨーロッパ、日本では、GMO作物の食品としての市場参入に困難が伴うと見るや、その矛先をインド、中南米、アフリカといった発展途上国に向けた。インドでは、やはりラウンドアップに対して耐性を持つ「BT綿」とう種子が導入され、在来種を駆逐して、既に市場の90%を占めるまでになっている。
インドでは、GMO種「BT綿」の栽培で自殺者が続出
ところが、インドでは、農民が毎年、モンサント社の種を購入しなくてはならないのと、病気などにやられて凶作が相次ぎ、支払いで首が回らなくなって自殺が相次ぐという大きな社会問題に発展している。ならば、在来種に戻ればよいと考えるかも知れないが、一方でモンサント社は、各国の種苗会社を買収しており、インドでは、在来種の綿種子を供給する種苗会社が無くなり、調達ルートそのものが存在しなくなっている。
こう聞くと、モンサント社とは、正に極悪人のような企業だが、世界的に見ると、業績を大きく伸ばし、Business Week などは、このモンサント社に関連して「遺伝子組み換え作物、事実上の勝利」という特集を組み、安全性への懸念をよそに栽培農家が世界中で急増していることをレポートしている。
Business Week : 遺伝子組み換え作物事実上の勝利(日経ビジネスオンラインより)
どうして、このように遺伝子組み換え作物(GMO)に対する需用が拡大しているかといえば、先述した生育にかかる手間を軽減できるという特徴と、モンサント社が、GMO作物の売り込み先を、消費者運動や環境市民団体などがうるさい一般食品の分野ではなく、加工分野に鞍替えしたらからだ。つまり、豆腐や納豆の材料としてではなく、たとえば、植物油の原材料にすることに方針を変えたのだ。スーパーの店頭で、豆腐や納豆を買う時に、遺伝子組み換え大豆が使われていないかを調べても、マクドナルドで食べているフレンチフライポテトを揚げた植物油にGMO大豆から作られた油が使われているかまで気にすることはない。その結果、全米で栽培される、大豆の90%以上が、GMO大豆になっている。米国には、日本の納豆、豆腐メーカーなどと契約して、非GMO大豆を栽培している農家もあるが、割に合わないと栽培を止める所が続出しており、非GMO大豆の調達そのものが困難になりつつあり、国内の納豆、豆腐、味噌、醤油メーカーなどの多くは真剣に頭を悩ませいる。
絶好のチャンスとなったバイオエタノール騒ぎ
そして、モンサント社にとって、絶好のビジネス機会となったのが、今回のバイオエタノール騒ぎである。
バイオエタノールの原料となるトウモロコシ、サトウキビなどは、食用ではないのでいずれもGMO作物が前提となっており、彼らにしてみれば、「フランケン作物」などと悪口をたたかれずに、大手を振って、GMO作物を売り込む大義名分ができたことになる。
すなわち、GMO作物は、化石燃料に代わるカーボンニュートラルなエネルギー源となることで地球環境の危機を救い、産油国にシフトしてしまった原油をめぐる覇権の再構築を目論む米国のエネルギー世界戦略の重要な一翼を担うことになる。さらには、食糧価格の高騰という新たな「飢饉」に苦しむアフリカなど、発展途上の国々の人々には、GMO作物による「緑の革命」による食糧増産によって救いの手をさしのべることができる!?
ざっと、まあ、こんな具合だ。
そして、こうしたバイオエタノール熱の盛り上がりは、モンサント社に巨大な市場と富をもたらすことに繋がるという観測から、同社の株価は、この3年で3倍までも急騰した。
米国のブッシュ政権もこのモンサント社の戦略を後押しする形で動いている。いや、正確にいえば、米国政府は、モンサント社というアグリバイオ企業を介して、世界の食糧資源を牛耳る戦略によって、覇権の再構築に乗り出したというのが適当だろう。
農家から自立性を奪うGMO作物
NHKが放映したドキュメンタリー番組や、数多くのメディアが実態を明らかにしつつあるが、モンサント社のGMO作物を導入した数多くの農民から怨嗟の声が上がっている。というのも、いったんGMO作物を導入すると後戻りができなくなるからだ。種子や農薬をモンサント社に依存せざるをえなくなり、一国一城の主だった農民は、最後には農奴にされてしまう。さらに国の食糧生産が、GMO作物によって占められるようになったら、誰もモンサント社(=米国)に逆らえなくなる。逆にモンサント社や米国政府としてみれば、今回の食糧危機を千載一遇のチャンスとしてGMO作物の普及に弾みをつけ、バイオテクノロジーと知財によって、世界の食糧に対して覇権を行使するというのが、食糧価格高騰の背後で進行している、もうひとつの米国の国家戦略である。
Business weekの特集は、次のような不気味な観測記事で終わっている。
「・・・モンサントは現在、8種の遺伝特性を焼き付けた“究極の種子”を開発中だ。発売は2010年を予定している。遺伝子組み換え食品に関しての論争はまだまだ続くだろうが、グラント氏はこの新種の種子が最大の武器になると確信している。『農家がこの種子を知ったら、もう昔には戻れなくなるはずだ』」
モンサントのトップが、ここで「最大の武器」といい「農家がこの種子を知ったら、もう昔には戻れなくなるはず」公言してはばからない、2010年に発売を予定している“究極の種子”とは一体何を指すのか?
食糧資源を利用した覇権パワーの再構築へ
米国は、太平洋戦争にかけて、原水爆を開発することにより軍事力による覇権体制を構築した。次にITにより、情報通信の世界で覇権を確立し、そして、今、バイオテクノロジーによって「食糧」という資源に対して覇権パワーを行使しようとしている。
かつて、トルーマン米国大統領は、「ついに原爆が完成した」との報を聞いて狂喜し、ソ連との戦後体制の議論を優位に進めたといわれるが、それと同様に、ブッシュは、バイオテクノロジーによるモンサント社の「最大の武器」完成の報を聞き、食糧をターゲットとした世界戦略の再構築を決意したのかも知れない。だとしたら、現在のバイオエタノール騒ぎや、食糧価格の高騰は、今後数十年に渡って食糧を軸に組み換えられていく覇権構造の再構築シナリオの一部、ほんの序章に過ぎないということになるだろう。
翻って日本のことを考えるとお寒い限りだ。世界最大の食料輸入国といえば、聞こえだけは良いが、何の備えも戦略もなく、ただ徒に食糧自給率の低下を放置し、場当たり的な農政によって農業の競争力向上を怠ってきた。今後予想される食料生産国の間で繰り広げられる熾烈な覇権争いの中にあっては、残念ながら、いとも簡単に餌食となってしまう子羊のような存在にも見えてくる。食の安全、安心を守ると念仏のように唱えてはいるものの、いざとなれば背に腹は代えられないと、GMO作物の解禁へ・・・なんてことにもなりかねないだろう。
GMO作物は救世主か、それとも悪魔か?
さて、ここまで食糧危機の深層で進行しているものは何なのかについて縷々述べてきたが、最後に蛇足になることを承知で、あえて個人的意見をのべれば、私自身はGMOで作られた豆腐や納豆なんてものは、死んでも口にしたくない。テクノロジーによるイノベーション自体を否定するものではないが、グーグルが検索技術によってネットの世界で覇権を握るようになったのとはわけが違う。農業や食料のことを同じ土俵では論じられないのだ。
農業や食糧に関わる仕事は、人の命に直接関わるものであり、食べ物を「最大の武器」といって憚らない、モンサント社の経営トップの奢りに満ちた感覚や姿勢とは、本来的に相容れないものだ。そもそもGMO作物の人体や自然環境に対する安全性の問題についても疑問符だらけという意味で、モンサントという企業がやっていることは、この世界に原爆を作り出したのと同じことだと思っている。また、米国内や中南米、インドなどでも、モンサントの支配を拒否する動きが生まれているように、知財権を盾に農業事業者の自立を奪うという点においても、この会社のやっていることは罪深い。
米や大豆、小麦や野菜を創造したのは、そもそも誰なのか?自然が創造し自然の恵みとして受け取るべき、こうした作物に対して「権利」を主張すること自体、狂気の沙汰というものだ。
カエサルのものはカエサルに、自然のものは、自然に返せ!
(カトラー)
参考記事:ルモンドディプロマティーク日本版「マリの綿農家たちの結論は『ノン』
参考動画:知財を盾にモンサントの支配を受ける農民
GMO作物により遺伝子汚染を受ける在来種
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コメント
死んでも口にしたくない、といっても加工食品は食べてるだろうから日本人のほぼ100%は口にしているでしょうね。またこれだけ巨大だと自社以外の作物に有害なウイルスを巻くなんてカンタンに出来るでしょう。そうなったら完全にモンサントの支配下ですね。有機農法とか低農薬なんて彼らににとっては敵なので壊滅させられるでしょうね。そしてこういうでしょう。「温暖化のせいだ」って。「モンサントの種子は地球環境にやさしい」「食料危機を無くす」とか宣伝するでしょう。最近のエコキャンペーンなんかとも全部つながっているのかも知れませんね。ブラックジョークみたいな世界になりつつありますね。これじゃ人間が人間でなくなるはずだ。
投稿: blac | 2008.06.24 10:24
「死んでも口にしない」「人の命にかかわることだ」という極端な立場でこの問題に向き合ってしまうから、エキセントリックな論調になって「アメリカの陰謀説」が再浮上してしまうのではないか。いたずらに不安を煽るだけでは本質を見失う。もう少し冷静にこの問題を考えるべきだろう。
カトラーさんご指摘のように、遺伝子組み換え作物が人体と環境に与える影響について専門家の間でも意見が分かれている。人体と環境ではそれぞれ意見の分かれ方も違うようだ。人体への影響については楽観的な見方のほうが強い。中国の農薬漬け作物・毒入り食品とは違って直接人の命にかかわることだとは思えないが、長期的にみた人体への影響の恐れを無視して良いはずはない。安全性の確認に全力を挙げるべきだろう。
ただ 遺伝子組み換え技術は、医薬品製造ですでに定着している。不思議なことに、あまり反対の声を聞かない。それほど危険で得体の知れない遺伝子組み換え技術で作られた医薬品ならば、直接人の命にかかわるという点では 遺伝子組み換え作物よりはるかに深刻な問題になるだろうに。
このことから遺伝子組み換え作物への不安をことさらに主張する人たちの真の動機が透けて見えてくる。純粋に人体への悪影響を心配するというより、アメリカの支配とやらへの強烈な反発がその中心にあるのではないか。
遺伝子組み換えの危険性や人命人命と声高に主張するわりに、遺伝子組み換え医薬品やすでに数百人の人命が犠牲となっている中国製品に関心が向かないのはそのためだろう。だからアメリカの陰謀だと思い込んでしまう。
投稿: かかし | 2008.06.24 21:05
日本の農家はいずれ不動産業になるでしょう。日本の農業はなくなります。そうしたとき遺伝子組み換え野菜と中国野菜しか選択肢がないのだとしたら日本人は遺伝子組み換え野菜を選ぶでしょうね。
それにしても米国BSEでは入院するような事故は起きていないのに、マスコミあげて日本や韓国では大騒ぎです。ひるがえって中国の餃子を食べた日本の子どもが入院しているのにマスコミは異常なくらい静かです。この落差はなんなんでしょうか?かかしさんならずとも気味悪いと思います。
投稿: agri | 2008.06.25 12:20
かかしさんのコメントをかなり前のものからさかのぼって読みかえしてみました。カトラーさんが取りあげてるいろんなテーマについて反論してますよね。ちょっと驚いたんですけどどんなテーマに反論してても姿勢が一貫してるというかぶれてないんですよ。曲がったことが嫌いで嘘がつけない人なんだと思います。日本のことほんと考えてるんだなって伝わってきます。こういう人けっこう日本にたくさんいるんだと思うと日本は大丈夫かななんて安心します。
投稿: かさじろう | 2008.06.25 21:03
コメントありがとうございます。
認識不足もあるようなので、補足しておきましょう。
まず、中国の毒入り餃子とGMO作物の問題を同じ土俵で論じるのはおかど違いですね。こういうレベルの低い議論は、このブログの品格を下げるのでやめましょう。
毒を食べれば、おかしくなるのは、当たり前であり、誰も好きこのんで毒を食べようとは思いませんが、GMO作物の場合は、FDAが安全と認定している食品に、未知の危険が潜んでいるという点が問題なのです。毒は避けることができますが、GMO作物は、成分表示されなかったり植物油の形にされてしまえば、外見からはわからない状態になります。
米国でBSEで入院した人間がいないとagriさんはいっていますが、毒ではないから当たり前ですね。長年、BSEの牛肉を食べていると、agriさんの脳がスポンジのようにスカスカになってしまう病気だというのが怖いのです。英国でも長年、論争がありましたが、牛のBSEの病原体が種を超えて人間にも感染しているということが確認され、大問題になったわけで、症状が出るまでには時間がかかります。因みに、BSEの病原体というものは、タンパク質が変異したプリオンではないかといわれていますが、まだ正体がわかっていません。そしてGMO作物についても同じような、タンパク質の生成に問題を生じさせるような長期的な影響があるのではないかと不安視されています。福岡伸一さんが、書かれている「もう牛を食べても安心か」(文春新書)を読まれるといいですよ。
医薬品の遺伝子組み換えが問題になっていないと、かかしさんが述べていますが、遺伝子組み換え技術を使った医薬品と呼ばれるものは、例えば、化学合成ができないヒトインスリンなどを製造するために、大腸菌などにヒトインスリンの遺伝子を組み込んで作らせるといったもので、この場合の生成物は、ヒトインスリン、すなわち既知の物質ですから、生成物そのものは問題にならないのです。
ただし、現実に問題も起きています。この分野で有名な事件としては「L-トリプトファン」事件というのがありました。NHKが放映したドキュメンタリーの中でも取り上げられていますが、(ちゃんと見て意見を言いましょうね)健康食品として販売されていた必須アミノ酸の一つである「L-トリプトファン」を食べた人が、「好酸球増加筋肉痛症候群」という症状を起こし、米国を中心にして約1,600人の被害者を出し、そのうち38人が死亡するという食品公害がありました。遺伝子操作をした大腸菌にL-トリプトファンを作らせている過程で混入物が入ったことが原因と考えられていますが、これを製造したのは、日本企業の昭和電工です。日本でも入院した人が出ました。昭和電工は、新潟水俣病を起こした会社ということもあり、アメリカで起こされた訴訟に早々に和解に応じたことが、ニュースになりました。
遺伝子操作の技術は進歩したようにいわれていますが、部品のように思ったように組み込めるようなものではなく、遺伝子を切って、そこに組み込みたい遺伝子をふりかけるというようなレベルで、肝腎な組み込みのプロセスは生物まかせで、医薬品の製造に必要な再現性が担保されていません。従って遺伝子そのものを組み換えた薬品というのは実用化されていません。
「安全性の確認に全力を上げる」のは、消費者の責任ではないですね。まず証明責任があるのは、モンサント社であり、FDAです。紹介したドキュメンタリー番組の中では、その意志決定の過程が、科学的な根拠ではなく、「政治的に行われた」と、当事者たちが証言している点が問題なのです。
なぜ、政治的に行われたかといえば、食糧を覇権戦略として取り扱おうという意志が働いたからでしょう。
投稿: katoler | 2008.06.26 02:00
BSEの牛肉食べてもBSEにはならないですよね。
危険部位でなければ大丈夫ですよね。
新しい説でもでてるんですか?
それにアメリカの牛肉でBSEになるなら
日本の牛肉でも同じはずです。
投稿: tomeko | 2008.06.26 02:16
かさじろうさん、身に余るお褒めのお言葉赤面の至りである。
あなたのご指摘の通りである。と言っても当然のことながら私を持ち上げて頂いている部分のことではない。「日本は大丈夫ですよ」と言いたいのである。私などはHNをかかしと名乗らねばならない程度の役立たずでしかない。追い払わなければならないはずの害鳥が、頭のてっぺんで羽を休めていても手も足も出せない。歯がゆい。それでも日本は、人類の進歩と調和に貢献し続けてゆけるだろう、そう信じている。
今の自分にできる精一杯の努力を前向きに朗らかに続けるのみ。今のところ、根拠薄弱なネガティブキャンペーンこそが日本にとっての最大の敵でなのである。
頑張れ日本、といったところか。
投稿: かかし | 2008.06.26 03:45
中国政府は餃子に毒が混入したことを認めていません。中国の食品会社は自分達こそ被害者だといっています。営業も続けています。こんなことアメリカや日本ではありえないでしょう?しかし日本のマスコミは沈黙しているのですよ。しかし相手がアメリカだとBSEでもGMOでもとにかく大騒ぎします。むかし環境ホルモンとかダイオキシンとか流行りましたね。家内はこわくなって何万もする浄水器を買いました。わたしは下町育ちのせいか平気で日本の水道水を50年以上飲んでいます。別に髪の毛が抜けたりしていませんよ。
投稿: 松 | 2008.06.26 10:25
NHKのアナウンサー、間違えていましたね。終わりの方で「日本でも、おしょうゆやお豆腐に遺伝子組換えの大豆が使われている場合は必ず書かれていますから…」と言っていましたが、豆腐は使っている場合その旨の表示が義務ですが、しょうゆは義務づけられていませんよ。しょうゆ、油、異性化液糖は表示しなくてもいいのです、日本では。そして、日本人がおそらく世界で最も高い割合で遺伝子組換え食品を日常的に食べているだろう、と言われていますね。1994年に、全米大豆畑の2%に作付けした遺伝子組換え大豆が、2007年には91%になったわけですからね。日本では、1995年に急いで安全性の指針を作り、1996年2月にモンサントが申請し、9月には厚生省が安全との判断を下し、12月には輸入され、1997年から市場に登場、すでに10年余経ちました…
投稿: | 2008.06.26 21:37
松さん、agriさん、blacさん、いろいろ名前を使い分けられているのは、GMO作物で脳味噌がスカスカになってしまったからですか?それとも水道水のせいですか?私も下町育ちですが、自分の正体は、いつも正直に人様には伝えていますよ。
投稿: katoler | 2008.06.27 19:54
「毒は避けることができる」
それならなぜ日本の幼女は意識不明の重体に陥ったのか。なぜ世界で数百人が命を落としたのか。この問題こそ中国政府がまともな対応をしない限り「死んでも中国産品は口にしない使わない」という決意の他に被害を避ける方法がないではないか。そこまでしても中国産品がどのような形でどこに紛れ込んでいるのか消費者が把握することは不可能であろう。しかも現在、松さんがいうように、典型的な政治的思惑と駆け引きの真っ只中ではないか。
例外なくすべての人体に悪影響を及ぼすことが100%明らかな有害物質を、それと承知で流通させる中国産品の問題は「毒は避けられる」で済ませてしまう。
そして、「遺伝子組み換え作物が作り出す未知のたんぱく質は避けようがない」とくる。中国の有害物質のように本当に人間すべての個体が避けようがないのか。違うであろう。たとえば大豆とナッツという組み合わせのGMO作物が被害を及ぼす対象は、大豆だからと口にしてしまった ナッツにアレルギーを起こす人たちだ。このような事故を防ごうと懸命の努力が払われている。
「Lートリプトファン」の事故はもちろん承知しているが、遺伝子組み換え医薬品と遺伝子組み換え作物を、既知の物質という遺伝子を組み換えたものからの抽出物の安全性と、遺伝子そのものを組み換えてできた物の危険性で説明するのはおかしいのではないか。
緑野菜を食べ続けた人の子供が光合成を始めてしまうことを心配するような人は別として、遺伝子組み換えで出来た物に危険性があるのではなく生成されるたんぱく質が問題なのだと解っているのなら、科学者たちが悲劇的事故を教訓に 医薬品として問題のない既知の物質を抽出する技術を進歩させ、その技術がすでに遺伝子組み換えの一般的危険性を論じる段階から、個別的な安全性の確保の段階に移らせていることも解るはずだ。遺伝子組み換え技術で「問題にならない生成物」を抽出できること、そのことが遺伝子組み換え作物の危険性を軽減してゆける担保になるのだろう。そのように理解している。だから安全だと主張しているのではない。遺伝子組み換え技術で救われる人々も大勢いるのだということをはっきりと認識した上でその危険性を考えなければならない。人々が安全上のリスクの許容範囲を判断するために、そのリスクががどこまで軽減できるのかという正確な情報が求められているのである。
現時点で未知のたんぱく質とBSEのたんぱく質変異説を関連ずけるような煽りは納得できない。BSEと同じ土俵に乗せるなら残留農薬の体内蓄積の方ではないか。
カトラーさんが遺伝子組み換え作物の危険性についてエントリーすることを とやかく言っているのではない。ありもしない陰謀に結びつけたり、中国産品とは同じ土俵に上げられないほど危険なしろ物などという政治的主張では、人々の命や健康を心配するというもう一つの視点が、その主張の単なる道具に成り下がってしまうのではないかと申し上げたいのである。
同じ土俵に乗るかどうかは視点の置き所の問題で「レベル」の高低とは関係ないのだから。
投稿: かかし | 2008.06.27 21:18
かかしさんは遺伝子組み換えに詳しいようなので質問したいのですが、遺伝子組み換えの危険性はかかしさんの許容範囲に収まりますか。
わたしはやっぱり怖いです。アメリカで38人も亡くなっているなんて知りませんでした。自然のものは自然に帰せとおっしゃるカトラーさんに賛成です。
投稿: 通りすがり | 2008.06.28 10:57
通りすがりさん、私は専門化ではない。遺伝子組み換え問題に詳しいはずもない。ど素人に過ぎない。そんな私のコメントを読んで怖がったり安心したりしてはいけない。一素人がこの問題をどのように理解しているかがわかるだけだと思った方がよい。
あなたが怖いと思った「L-トリプトファン」事件にしても私は大きな教訓を残したとコメントしてはいるが、カトラーさんのこの事件に対する認識とはまったく違う。カトラーさんは遺伝子組み換えの過程で不純物が混入したから多くの死者を出したと考えているようだが、実際はその不純物のせいではない。トリプトファンそのものを大量摂取してしまったことが原因だ。不純物とは関係なかったのだ。つまり遺伝子組み換えとも何の関係もない。2000億円も賠償している昭和電工が可愛そうだというのが真相である。1989年の事件である。遺伝子組み換えを反対運動にまでしている連中が遺伝子組み換えの危険性の拠りどころにしている事件にしてこの有様だということだ。素人の思い込みの方が怖いのだ。それでもこの事件はいろんな意味で多くの教訓を残したことは間違いない。
前のコメントで遺伝子組み換え医薬品、遺伝子組み換え作物との関係を技術の進歩によるリスクの軽減につながると理解している、そう申し上げたが、専門知識を完全に理解した上のものではない。もともとこの二つの技術はまったく違うものだからだ。それでも現在 技術の進歩やデータの蓄積がその垣根を越えたと素人なりに考えているだけのことだ。
私が言いたいことは、大企業や政府、国家は悪でありその悪を暴いてやる、暴けないならせめて悪である事の印象だけでも世間に広めておきたい そのための問題提起に素人の思い込みを利用することと、純粋に素人の問題意識を専門家や行政にぶつけることとは違うということである。
投稿: かかし | 2008.06.28 12:26
かかしさんのご丁寧な反論は、ありがたく拝聴申し上げたが、やはり論点がずれていますね。
「ありもしない陰謀」と言われていますが、今回、前回のエントリー記事で述べさせていただいたことは、現実に始動している米国とモンサント社の覇権戦略のことであり、この世の事は全て、ユダヤ人やロスチャイルド家が影で糸を引いているという話とは全く別物です。
前回のエントリー記事でも述べたように、食糧危機なるものの要因が色々あると並べ立て呑気に評論家的に語っている場合ではないので、その背後で何が進行し、またそれを意図的に推進している勢力があること、そして、その意図は何なのかということを示すことこそが重要と考えています。あえて犯人捜しをするといったのは、そういう意味です。
モンサントが、何故問題なのかということは、今回の記事でも詳しく書きましたし、NHKの番組なども紹介しましたので、繰り返すつもりはありませんが、モンサントは食糧危機とバイオエタノール騒ぎを明らかに追い風として急成長しており、それが、米国の食糧資源を武器とした覇権戦略ときっちりとシンクロしているということを理解することが重要です。
「ありもしない陰謀」とおっしゃるのなら、私の述べた論点にそって反論していただかないと時間の無駄ですね。
GMOの食品としての安全性云々については、本当のことは、わかっていないということを認めることが前提となります。言い換えれば、モンサントが標榜している安全プロパガンダを鵜呑みにはできないということです。ただし、実体がわからないものについて、わからないままに是非を論じ合うことは、宗教論争となり、これもまた不毛です。ですから、安全性というものが、常に蓋然性としてしかあり得ないという前提に立てば、GMOの食品としての危険性も、「リスク」として見ていくという姿勢も考え方としては理解できます。しかし、食品としてのリスクのみならず、GMO作物の遺伝子が既に在来種の遺伝子を交配によって汚染させていること、それが、結局、米国も含めた農業事業者の自立を脅かすものであるという点において、この会社がやっていることは容認できず、だからこそ、GMO作物は死んでも口にしないと申し上げているのです。ブラジルは、当初、ヨーロッパや日本と同様に、GMO作物の受け容れを拒否していましたが、モンサントのGMO種子を密輸入されて作付けされ、既成事実化されてしまいました。モンサントの種子を使っている農民には、毎年種子と農薬を購入することを強要する一方で、GMO種子で汚染されていない地域に対しては、種子を横流しして、既成事実を創り上げていく、こんな悪辣なことをやる会社は、潰さなくてはならないと考えています。正義感の強いかかしさんも、食糧危機を煽り立て、飢餓につけこんで、社業を伸ばすことしか考えないモンサントのような企業やGMO作物に、美しい日本の田畑を汚染させたくないでしょう?
投稿: katoler | 2008.06.28 13:14
種苗会社は種苗を売る事で経営を成り立たせていますが、それは特許と種苗の独占供給で達成してると思うのです。
で、日本で品種改良されたイチゴを韓国の農家などが不正に持ち出し、ライセンス料などを払わず育成販売してるのが、ついこの間に話題になったと思うのですが、カトラーさんの発想をここに移すとこれは「日本の陰謀」の可能性が出てくると(笑)
自分には第一にグローバルな特許法の問題、第二に改良品種種苗の一世代性(種を付けない)の問題ではないかと、イチゴの件の時は思ったものです。
一世代性を持たない種苗品種なら、市場と特許の取り扱いで、政治的に対抗できるでしょう。
特許を持つ会社が創造主としてコントロールされず勝手に増えるようなものなら、それを生んだ特許があろうとなし崩しになるでしょうとも。
遺伝子レベルの改良作物への警戒心は、カトラーさんに同意します。
植物の持つアルカロイドへの適応は一朝に達成されるものではないので、パンダやコアラは大変なのです。
自分には改良作物に微量であれ未知のアルカロイドが生成されている可能性とか十分あると思います。
投稿: ト | 2008.06.28 17:46
私の場合は、と最初に断っておく。 自分(私)の主張が間違っていると認めていない段階で、反論してくる相手を「正義感の強い人間」と呼ぶとき、私はその言葉を「間違った原則に固執するある種のバカ」という意味で使用する。だから「正義感の強いかかしさん」と評価していただいても素直に喜べない。とはいえそれは当方の勝手な事情によるもの、カトラーさんのせいではないのでお気遣い無く。
絶妙なバランス感覚をお持ちのトさんが巧くまとめてくれたのではないかと思う。警戒心を持って十分な監視を続けることが必要だ。しかしGMO作物と 稔性が著しく低下するという実験結果があるGMO作物 との交配で生じる雑種が、在来種や類縁種を駆逐してしまうというのも極端な煽りだと思う。「悪魔の技術」などというレッテル張りに惑わされてならないだろう。「美しい日本の田畑」は残ってゆく。前向きに。
最後にブラジルについて一言。ブラジルの国内政治情勢だが、親米勢力と反米勢力が激しく争っている。その中で、反米勢力の政治的思惑がGMO作物の受け容れ問題を権力闘争の道具にしてしまった。その結果の反米受け入れ拒否であり、その反動での親米なし崩しであろう。モンサントが面妖な動きを見せた陰謀なのか、ブラジルの政争にモンサントが振り回されたのか。反グローバリズム・反資本主義・反米・反大企業・反権力・反先進国・反ブルジョアそして反日、遺伝子組み換え技術の不安要素を利用してはならない。ブラジルは、政治的な意図でこの問題を扱ってはならないことを示す典型的な例だと思っている。
投稿: かかし | 2008.06.29 00:57
かかしさんのコメントは事実なのでしょうか。38人も亡くなっていて1600人が入院してしまった事件ですよ。「L-トリプトファン」事件が遺伝子組み換えと何の関係もなかったら、NHKが番宣でその場面を強調してまで放送するでしょうか。
かかしさんは真相を知っているのにNHKやフランスのドキュメンタリー製作者が知らないというのは考えにくいんですけど。
投稿: モノリス | 2008.07.12 11:05
モノリスさん、だったらご自分でお調べになるしかないだろう。天下のNHKに全幅の信頼を置いて労を惜しむかどうかはあなた次第だ。突き放した物言いをしてしまったがあなたのせいではない。視聴者に事実確認を押し付けるメディアとは一体何なのか。日本のメディアの多くはすでに腐乱が進行して朽ちてゆくだけのゾンビのような存在なのだ。生ける屍(しかばね)とはよく言ったものである。日本のジャーナリズムの病は末期症状の中にあるということだ。
投稿: かかし | 2008.07.27 04:53
モンサントは、遺伝子組み換え牛成長ホルモン剤の市場占有も高い会社です。
中国の農薬混入と遺伝子組み換え食品と次元が違う話でいろいろ言っている人がいるけれど三菱の人だろうか。
投稿: 通りすがり | 2008.08.04 19:15
ありもしない陰謀に結びつけたり…アメリカの支配の反発…当たり前だろ馬鹿なのかお前。アメリカに支配されて楽しいのか。この世の食料を全て支配されたらどうなると思っているんだ。自由なんかなくなるぞ。それでいいのか?米なんかまともな物なんか食えなくなるぞ。世界中単一の品種しか存在しないアメリカ食料支配の(ある意味戦争より怖い)世界が出現したら如何するつもりだ。俺は身の毛も弥立つ。
情報持ち合って、色んな角度から検証なんかしてもかっこよくもないし、下らんことにスマートと思っているな。
こんな所で冷静ぶって居る事が美徳なんて思わないことだ。
大体、ベトナムの時にしても三菱モンサントの問題にしても奴らのやり方はあんた達良くわかっていてそれを口にしているのか?
投稿: 野次馬に立ち止まる男 | 2008.08.25 08:11
一つ質問。日本の種は守れますか!?
方法論が有れば宜しく御指導・御鞭撻を願います!
投稿: ヨゼフ峯アツシ | 2011.11.17 03:34