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アフガン、伊藤青年の死とテロとの戦いの関係

Photo アフガン邦人死亡 官房長官「テロとの戦い、関与に理解を」

町村信孝官房長官は28日午前の記者会見で、アフガニスタン東部での非政府組織(NGO)「ペシャワール会」の伊藤和也さん殺害事件について「尊い犠牲が出てしまったが、そうであればあるほどテロとの戦いに引き続き関与していくことの重要性を日本の国民のみなさんは感じたのではないか」と語った。

アフガニスタンで農業支援を行っていたペシャワール会の伊藤和也青年が誘拐され、無惨にも殺害されてしまった。

テレビ画面の前で、ご両親がやり場の無い不条理に沈痛な面持ちで対応していたのが痛ましかったが、「和也は伊藤家の誇りだ。息子の遺志を継いでほしい」としっかりとした口調で答えていたのが心に強く残った。

中村哲医師を中心としたペシャワール会の活動は、このブログでも取り上げたことがあるので承知していたが、まさかこうしたテロの対象にされるとは思いもしなかった。
というのも、ペシャワール会は、タリバン政権の時代から医療支援活動を始め、現在は灌漑施設の建設や地道な農業支援を行っていて、世界中の誰よりも、アフガニスタンの実態を知り、アフガニスタンの人々からその活動が感謝されていたからだ。

今回の事件で、ペシャワール会の活動を初めて知った人々も多いだろうが、ペシャワール会のホームページを見るとその活動の成果に驚かされる。
アフガニスタンは、現在の国情からはとても想像もつかないが、昔は、緑豊かな農業国だったという。それが、ソ連のアフガン侵攻から9.11以降の多国籍軍の侵攻~内戦に至る長期の戦乱で農地も国土も荒れ果てた。そして、さらに悪いことにはこの土地を大干魃が襲っている。この干魃は、地球温暖化の影響ともいわれ、アフガニスタンだけでなく、パキスタンなど広範囲な地域で深刻な問題となりつつある。戦乱が終結し、やっとの思いで故郷に戻ってきても、食糧が生産できないために、ケシなど麻薬の栽培に手を染めたり、武装ゲリラ組織に取り込まれてしまう。これでは、いつまでたっても政情不安や人心は治まらない。

農業復興こそが人心と政情安定の鍵

Photo_2 中村哲氏は、農業を復興させていくことが、人心と政情の安定のためには何よりも不可欠と確信するや、驚くべきことに、聴診器をブルドーザーのハンドルに持ちかえて、井戸づくり灌漑水路の建設に邁進した。そうした地道な農業支援活動が実を結び、アフガニスタンの荒れ地が次々と昔のような緑の大地に甦り始めていた。伊藤和也青年は、地元の農業高校、農業専門短期大学を卒業し、そうしたペシャワール会の活動に触発されて、アフガニスタンにもう一度緑の大地を甦らせるという志をもって、2003年に現地に飛び込んだ末での悲劇だった。

ペシャワール会は、日本政府からの補助金などを一切受けていないが、中村哲代表は、自衛隊による給油活動などに対して、早い段階から反対の意志を表明していた。日本人に対して友好的な国民感情を持っているアフガニスタン人が、これによって、日本人やペシャワール会の活動が、多国籍軍と同じ、外国勢力によるものと捉えられることを恐れたのだ。残念なことに、その懸念が現実のものになってしまった。

伊藤青年の死を盗ませるな

日本政府は、伊藤和也さんが殺害された報を受けて、町村官房長官が記者会見でこう述べた。

「尊い犠牲が出てしまったが、そうであればあるほどテロとの戦いに引き続き関与していくことの重要性を日本の国民のみなさんは感じたのではないか」

町村という男は、ヘラヘラ立ち回っているだけの薄っぺらな政治家だが、これほどひどいとは思っていなかった。この会見での言葉を聞いた時、血が逆流した。町村は、伊藤和也青年の死を盗もうとしているのだ。こんな薄汚い奴の言葉に乗せられてはならない。
伊藤青年の不条理な死に対して、仮に原因があるとすれば、それは紛れもなく「テロとの戦い」という「正義」の名のもと、アフガンに侵攻したそのことにある。9.11以降、ブッシュ政権が行ったイラクへの戦争は、全くのペテンだったことが明らかになった。うまくやりおおせたはずのアフガニスタンも、現地の多国籍軍に対する反発が強まっている。
新政権が樹立されたにも関わらず、人々の生活は改善されず、それが、治安の悪化と外国勢力の排斥という形になって噴出している。

中村哲代表の言うとおりなのだ。アフガニスタンに緑の大地を甦らせ、人々に腹一杯食べさせ、銃を捨てさせることが、真の意味で有効な「テロとの戦い」方に他ならない。
しかし、その先兵となって、志高く現地の人々と共に農業復興に取り組んでいた伊藤青年に、無惨にも銃口が向けられてしまった。

先週末、伊藤青年の遺体が日本に還り、通夜がとりおこなわれた。
伊藤青年は、「英雄」にされることを決して望んでいないだろうが、あえていいたい。
伊藤和也青年は、わたしたち日本人の誇りだ。アフガニスタンの地に流した彼の血を無駄にしてはならない。伊藤青年の死を盗ませてはならない。

合掌

(カトラー)

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Comments

町村という男は本当に最低最悪ですね。町村信孝 『保守の論理 「凛として美しい日本」をつくる』 とかいう本を出しているようです。

Posted by: ju | 2008.09.01 at 08:06 AM

最近のカトラーさんは結論に思考の航跡が見られない。
ただレトリックに頭を使っているだけじゃないかい?
最初から決め付けた、読み手には何故そういう結論なのか不明な、いわばスローガン的なものを、如何に巧妙に時事の話題を取り混ぜ、都合良い部分を繋いで、表現するか?という事に夢中になってる様に思えるのは、私の気のせいかな?
そういうスタイルは同志への忠誠心で受けても、客観的な説得力は無いぞ。聖教新聞じゃあるまいし。
右であれ左であれ念仏唱えるだけの馬鹿がいるじゃん。
カトラーさんには、ああいうのにはなって欲しくないんだけど、どうよ。

Posted by: ト | 2008.09.02 at 07:19 AM

>思考の航跡が見られない

だったらその根拠を、論理的な軌跡を全スルーせずに少しは書いてもらわないと・・・。

Posted by: Gl17 | 2008.09.02 at 11:46 AM

>仮に原因があるとすれば、それは紛れもなく「テロとの戦い」という「正義」の名のもと、アフガンに侵攻したそのことにある。

ソビエトにも責任はあるでしょうし、戦国時代から抜け出そうとしないアフガニスタンの軍閥にも責任はあるのでは?


タリバンにとっては、ペシャワール会もアフガニスタンに進入してくる外国勢力のひとつにすぎないようですし。

【アフガン邦人男性拉致】タリバン「殺害した」 全外国人が標的
http://sankei.jp.msn.com/world/asia/080827/asi0808272332005-n1.htm

空想的な平和主義が通用する文明的な地域ではないようです。

Posted by: ほるほる | 2008.09.03 at 01:50 AM

横レスで悪いんだけどさGl17さん
じゃあさ、別に書き手であるカトラーさんで無くても良いから、エントリー内で思考の航跡を見つけられる読み手が居たら、解説してくれ。
思考過程が自分には見えないのでそれは考えられたものじゃなく情緒や空気に感じられるんだ。
この状況でそれぞれのエピソードを使うのはレトリックとしては分かるんだ。
だがこの空気が何処から沸いたのかはエントリー内では十分語られていないと思うんだ。
例えば聖教新聞で名誉会長万歳大勝利というトップ記事にあっても、それは説明が無くても聖教新聞の存在意義がそうなのだから、何かしら理由を付けてそうするんだろうと勝手に合点できるのよ。
また日本の戦後ジャーナリズム界を支配する、戦中とは方向は真逆だが翼賛的という意味では同じ空気が、そういうナンセンスなテキストをテクニカルに生んで来たんじゃないかなと思ったりな。

Posted by: ト | 2008.09.03 at 06:31 AM

トさんのコメントにこそ思考の航跡どころか痕跡も見当たらないわけで。何かいいたかったら自分でエントリ立てて論じたらどうでしょうか。

Posted by: 毛 | 2008.09.03 at 11:06 AM

皆さん、コメントありがとうございます。
福田首相の辞任の方にかまけていて、レスが遅くなりました。思考の軌跡が見えないというトリルさんの厳しいご指摘は、書き手としては、あまり自覚はないのですが、注意していきたいと思います。
「第三の開国へ」というようなテーマをたてて、何本かエントリーしたので、レトリックが先行していた部分は確かにあったかもしれません。ただし、前から申し上げていることですが、党派的なものいいや、教条的な考えを披瀝するのだとしたら、そもそもブログなどをやっている意味がありません。
メディアの世界に横行している、そうしたモノいいに対して足払いぐらいは食らわすことができればと思っています。

Posted by: katoler | 2008.09.04 at 02:45 AM

カトラーさんからレスが付いたのでエントリー自体への感想も兼ねてもう少しだけ続けます。

たぶん「(前二つのエントリーと比べて)このエントリーで何故こんな風に言われるのか?」という気持ちがあると思います。
実を言うと聞きようによってはイチャモンにも思われるかもしれませんが、このエントリー自体には内容も問題も無い様に思えたので、紙媒体でもないのにそんな紙面を埋めるだけのようなエントリーはカトラーさんが敢えて書かなくても良いんじゃないのか?と思ったのです。
(紙媒体では体裁よく項を埋める事は良くある事だと思ってます)
ただカトラーさんがペシャワル会やこの青年へのシンパシーからまったく話題に触れないという事もできないという理解もしてます。
現官房長官の発言をトップに持って来てますが、誰もテロを肯定はできないのでテロとの戦いには硬軟色んなアプローチがあるべきと思うし、町村長官の発言も現職閣僚としてバランスの取れた無難なものと私は思います。
無難なのが物足りないとも言えますし「戦い」をそのまま「自衛隊派遣したい」と読むと釘を刺したくなる気持ちは分かりますよ(笑)

話が散漫になりますが、カトラーさんのテキストはレトリックやコードの押さえ方で、紙媒体の新人編集部員には努力すればいつか手が届く目指すべき見本レベルだと思います。つまり職業上求められるセンスと技術ですね。
まぁいわば、かっての「天声人語」を頂点としたヒエラルキーみたいなものを想像してます(笑)
そんなカトラーさんがネットでテキストを書いているのは、紙媒体で見合った場所とポストのオファーがないからと思ってます。
で思うのですが、あの天声人語的ポジションやスタイルは主張や啓蒙としては歴史的使命を終えたんじゃないかと思います。
ネットの混沌とダイナミズム・自由度と比べてしまえば、新聞・放送などは実態は場が縮小し老人が居座り既得権にしがみついてる業界に思えます。
ですが今日直ちに書き手個人が業界のコードを解体する必要はありません。
ただネットではコードの存在を普通の読み手にも意識して可視化していくべきだと思いますし、コードを自然に文脈上で使うには読み手に同意や認証を求めるべきだし、そうなった経緯や必要性を説かなければ、単に保身と指摘されるだけじゃなく長い目で見れば知的誠実さを疑われると思うんです。
池田信夫さんは判断基準・根拠を提示して自分の意見や判断を発表していますが、何かしら意見やアピールをするならば今後、こういうスタイルがスタンダードになるんじゃないでしょうか?
分かり易くキャッチーなので何事もスローガンは無くならないでしょうが、スローガンの背後では今後はこの様な膨大な発表や意見の交換がリンクされる様になるでしょう。

Posted by: ト | 2008.09.05 at 07:00 AM

(ノ_≦。)☆パキスタン情報部が資金 容疑者供述とアフガン当局 (共同通信)

http://www.47news.jp/CN/200809/CN2008090301000984.html

http://www.asyura2.com/07/news6/msg/580.html

アフガニスタンで非政府組織(NGO)「ペシャワール会」の伊藤和也さん
(31)が殺害された事件で、事件を捜査している同国の情報機関、国家保安局
は3日、隣国パキスタンの情報機関「3軍統合情報部」(ISI)

http://www.asyura.com/sora/war3/msg/195.html

http://en.wikipedia.org/wiki/Inter-Services_Intelligence

が犯行グループに「多額の金銭」を支払ったと容疑者が供述している、と発表した。

(略)

保安局によると、拘束した実行犯の1人、パキスタン人のアディル・シャー容疑
者が、仲間のアフガン人、アフマド容疑者(逃亡中)から「日本人技術者」を拉
致する計画を持ち掛けられたと供述。「ISIが拉致と殺害を計画し、われわれ
のグループに多額の金銭を支払った」と打ち明けられた、と述べたという。保安
局は金額を明らかにしていない。


《関連記事》

☆「パキスタン勢力が依頼」 伊藤さん拉致、140万円で (8月30日の共同
通信)

http://www.47news.jp/CN/200808/CN2008083001000500.html

http://www.asyura2.com/07/news6/msg/576.html

アフガニスタンで非政府組織(NGO)「ペシャワール会」の伊藤和也さん
(31)が拉致、殺害された事件で、アフガン国家保安局は30日、拘束した実
行犯の1人、アディル・シャー容疑者が「パキスタンの武装勢力から拉致を依頼
された」と供述していることを明らかにした。

同局によると、隣国パキスタン北西部で活動するイスラム武装勢力が犯行グルー
プに「ペシャワール会の日本人を拉致して連れてくれば金を払う」と持ちかけ、
100万パキスタンルピー(約143万円)の金額を提示したといい、シャー容
疑者は「金目的だった」と供述しているという。


☆見えてきた911事件の深層 (2003年3月27日の「田中宇の国際
ニュース解説」)

http://tanakanews.com/d0327wtc.htm

マフムード将軍らを頂点とするISIは、もともと組織的にタリバンを支援して
おり、タリバンとアルカイダは一心同体であった。つまり、パキスタン当局であ
るISIは、タリバンを支援していただけでなく、911事件の黒幕でもあった
ことになる。

(略)

アメリカとパキスタンとは、以前からの同盟国である。パキスタンの諜報機関
ISIは、アメリカの諜報機関CIAと昔から親密な関係にあった。ISIはパ
キスタンの国家の諸組織の中でも特に強力な組織である。タイム誌の記事

http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,501020506-233999,00.html

によると、ISIはパキスタンの「影の政府」「政府内政府」であるという。パ
キスタンでは、首相や大統領でさえISIが何をしているか、把握し切れていな
い部分がある。

こうしたISIの強さの源泉は、1980年代にソ連軍がアフガニスタンを占領
し、アフガン人のムジャヘディン・ゲリラ(イスラム聖戦士)たちがゲリラ戦で
これに対抗し、そのゲリラを支援していたのがISIで、その背後にCIAなど
アメリカ当局がいた、ということに起因する。つまり、アメリカがアフガニスタ
ンでの冷戦を通じてISIを強くし、パキスタンの「影の政府」にまで成長させ
たということだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以下重要

●アフガンのイスラムはワシントンが作り上げたーブレジンスキー認める。
http://www.ne.jp/asahi/home/enviro/news/peace/blum-J

●オバマの選挙参謀ブレジンスキー近況

http://www.yorozubp.com/0704/070411.htm


Posted by: tokidoki | 2008.09.05 at 08:34 AM

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