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GMの連邦破産適用と自動車産業の終わりのはじまり

‘Surgical’ Bankruptcy Possible for G.M.

By MICHELINE MAYNARD and MICHAEL J. de la MERCED
Published: April 12, 2009
DETROIT — The Treasury Department is directing General Motors to lay the groundwork for a bankruptcy filing by a June 1 deadline, despite G.M.’s public contention that it could still reorganize outside court, people with knowledge of the plans said during the weekend.

Gm_segway540 ゼネラル・モーターズ(GM)の破綻が秒読みの段階に入った。
ニューヨークタイムズのネット版が、12日、関係筋からの情報として、米国財務省が6月1日までに外科的な破産(米連邦破産法:Chapter11)の適用申請を準備するよう命じたと伝えている。
数週間前から、こうしたGMの再建を巡るリーク情報が流れてくる。手厚すぎると槍玉に上がっている従業員の年金制度のリストラや債務の大幅圧縮が自力再建の最低条件とされているが、その交渉が困難を極めていることをメディアが報じている。

これは、交渉過程にあるGM労働組合に対する「牽制」とも考えられるが、チャプター11(米連邦破産法)適用に向けた露払いとの見方が強まっている。破産法適用の可能性を事前にある程度アナウンスすることで市場の混乱を最小限にするのが当局のねらいだ。経営再建計画の提出のタイムリミットは6月1日とされているが、もっと早い段階でチャプター11の申請がされる可能性も出てきた。

米国で始動する電気自動車シフト

自動車産業は米国にとって必要だというメッセージをオバマ政権は繰り返し述べてはきたが、自動車産業を単に温存させるのではなく、新たな産業として再生させるもうひとつの戦略が動き始めている。端的にいえば、電気自動車へのシフトである。
GMの経営破綻問題の影に隠れて、日本ではほとんど報道されていないが、この4月7日にGMは米国のベンチャー企業、セグウェイ(Segway)社と共同開発した2人乗り二輪電気自動車「PUMA」の試作モデルを発表した(写真)。日本から見ると、会社自体が沈没しそうな時に、呑気にSFチックな未来自動車をお披露目してどういうつもり?ということになりそうだが、実は、これこそGMの生き残り戦略を象徴的に表したコンセプトモデルなのである。

このことを理解するためには、オバマのグリーンニューディール政策の中核をなす、「スマートグリッド構想」のことを知る必要がある。スマートグリッド構想とは、オバマが大統領選の最中から目玉の政策として主張していたもので、エネルギー(主に電気)の送電ネットワークをインターネット網のようにグリッド化し、エネルギーの利用を偏在させることなく、ネットワーク上で最適効率化していくという構想だ。そして、その構想の中で重要な役割を占めるのが、ネットワークの中でサーバーのような役割を果たす「2次電池(バッテリー)」の存在である。風力や太陽電池などで取り込まれた自然エネルギーをネットワークの中の「2次電池(バッテリー)」にいったん蓄電し、夜間など必要になった時に取り出して使うというものだ。ちょうど電話や通信網がインターネットに置き換えられていったように、電力エネルギーのインフラそのものを抜本的に作りかえていくという壮大な構想だが、オバマは、これを実現することが「アルカイダのようなテログループが米国を経済的に攻撃することを困難にする」とテロ対策に有効であると説明している。

オバマ政権のスマートグリッド構想とEV

すなわち、テロリストが米国経済を麻痺させることを目的に発電所や送電所などを攻撃しても、インターネット網がそうであるように、送電ネットワークがグリッド単位で自立的であることで、システム全体がダウンすることを回避することができる。そして、こうしたスマートグリッドを構築する上で正に要の役割を果たすのが、ネットワーク中に偏在する「2次電池(バッテリー)」すなわち電気自動車(EV)ということになる。
電気自動車のユーザーは、クルマの電池をネットワークに接続させ、昼間は太陽光発電などから取り込んだ電気エネルギーを自動車の電池に蓄電し、夜間にはネットワーク(グリッド)に対して売電することができる。このことをV2G(vehicle-to-grid)という。
V2Gを担う電気自動車へのシフトは、インターネット革命がそうであったように、まず国防上の必要性から構想され、次に技術的なイノベーションを先導することによって米国主導のビジネスモデルに自動車産業それ自体を組み換えてしまうという、周到に構想された米国の国家戦略なのである。

このことは、自動車産業にとってはどのような意味を持つだろうか。
端的にいえば、GMがセグウェイ社との共同開発で見せたように、自動車メーカーは自動車メーカーである必要がなくなるということである。電気自動車は、モーターと蓄電池を組み合わせたプラモデルのようなものなので、極端にいえば誰でも作れる。部品点数はガソリン車に比べて3割も減り、その分だけ故障も減る。ハイブリッド車のような高度な制御技術や故障の少ないものづくりの技術も必要とされなくなってしまう。トヨタを始めとした日本の自動車メーカーが保有している「ものづくり」技術の強みは、そこではほとんど意味をなさなくなってしまうといってよい。

日本の自動車メーカーの強みが失われる!?

現状の電気自動車は、技術的にはまだまだ発展途上段階のものであり、この夏、三菱自動車工業の軽車格の「iMiEV」が、2000台余り国内市場に量産投入されるに過ぎない。30分の充電で150㎞ほど走れるまでに電池の性能は向上しているが、米国など国土が広い地域では、走行距離がまだまだ足りない。当面は、日本メーカーが製造するハイブリッド車などが市場を牽引していくだろう。電気自動車がガソリン車並に普及するには、リチウムなど2次電池に必要とされるレアメタルの製造量もボトルネック要因になる。しかし、これまでのテクノロジーのイノベーションの歴史が教えるように、そうした壁は必ず何らかの手段で乗り越えられてきた。今後、既存の2次電池の性能も飛躍的に向上していくだろうし、レアメタルに依存しない新たな電池材料の開発も急ピッチで進んでいる。

さて、GMの経営破綻の問題に話を戻そう。GMやクライスラーに連邦破産法が適用されるような事態となったら、どうなるだろう。
米国の自動車メーカーが沈む分だけ、トヨタを始めとした日本車メーカーが相対的に浮かびあがり、そのポジションは一見強まるようにも見えるが、既存の自動車産業の枠組みを前提にそのコップの中での浮沈を議論してもほとんど意味をもたない。というのも、これまで見てきたように、その根底ではもっと大きなパラダイムシフトが進行しているからだ。

20世紀型自動車産業の終焉とGMの再生

今のところ見えているのは、自動車産業が巨大な電池産業の中に溶け込んでいき、徐々にその産業としての輪郭を失っていく可能性である。GM,セグウェイ社が共同開発したPUMAに象徴されるように、これからの都市の移動手段は、目的やシーンに応じて多様化がすすむだろう。4年おきにモデルチェンジをして、大量製造、大量販売していくという20世紀型のビジネスモデルが、自動車産業においてもついに終わりを迎えることになることは間違いない。
新たな市場創造機会が生まれているということになれば、当然リスクテイクに積極的なベンチャーの出番である。実際、米国では、かつてのITベンチャーブームの時のように、EVベンチャーが続々と誕生しつつある。インテルのアンドリュー・グローブ元会長が、新たなベンチャー事業として、電気自動車用の電池事業に進出することをインテル社に対して促しているというし、米国の名だたる投資家ウォーレン・パフェットもBYDという中国の電池メーカーに投資したことで話題を呼んだ。自動車産業という巨大な恐竜が正に末期の悲鳴を上げている最中に、進化した「生物」、次世代産業の芽が米国では着実に成長しつつある。
とすれば、現在の自動車産業が直面している苦況は、米国の金融破綻に端を発するものの、重要なのは、今直面しているのが終わりの始まりだということを認識することだ。このトンネルを抜けた後は、元の世界に戻るのではなく、新世界が待っていると認識できるかどうかで全てが変わってくる。米国政府当局や、GMの現経営陣は、このことを明確に意識して、GMという企業の外科手術を果敢に行うだろう。その場合の視点は、まぎれもなく、米国の自動車産業をオバマのグリーンニューディール政策のもとで、エネルギーシステムとの戦略的連携を構築していくことになる。破産法の適用によって、20世紀型産業のしがらみを全て整理させ、環境・エネルギーと自動車を架け橋する21世紀型の企業としてGMは再生する。

脳死状態、判断停止状態の日本

しかし、残念ながら、この国においては、あのトヨタが終わりになるなどとは、誰も考えたくないようであり、自動車産業のパラダイムシフトという議論は一向にどこからも聞こえてこない。要するに口では「100年に一度の」と言っているにも関わらず、どこまでも、今日の延長上に明日があると思いこみたいのだ。

麻生政権は、15兆円にも達する補正予算案を作成した。その中でもエコ・カーの普及支援が目玉の政策のひとつになっている。その政策自体が駄目だとはいわないが、「100年に一度の」という枕詞をひんまがった口であれだけ連発するなら、100年単位のヴィジョンをひとつでも良いから見せてみろといいたくなる。
無脳宰相にとっては、「100年に一度の危機だから」と言うことは、赤字国債を乱発し、目先の選挙をにらんでばらまき政策を行うことの体の良い免罪符になっているだけだ。
一刻も早く、こんな脳死状態の政権は終わりにさせないと、トヨタや自動車産業が沈むだけではない、この国が滅びてしまう。

(カトラー)

関連記事:死んだふり?ビッグスリーが電気自動車で復活する日

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Comments

日本行政府の脳死状態、というコメントに大賛成です。60才を過ぎて、足下のビジネスから多少広く世の中を見るようになって、つくずく感じるのは能力、あらゆる意味での能力を育てる環境にないこの日本をひどく憂うようになりました。自己責任であるべき事象を取り上げて、重箱の隅をつつくメディアには反吐がでます。

麻生政権というか、大お馬鹿集団のビジョンのなさにも反吐がでます。こんな中で自分の子供達が生活する30年50年先を考えるとただただ暗澹するのみ、なんかとてもつらいのです。

Posted by: いのうえ | 2009.04.24 at 08:23 AM

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