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第3のビールブームが告げるビール成長神話の終わり

Photo_4 近所にあるスーパー、イオンの店頭に「麦の薫り」というビール風味飲料・第3のビールが山積みセールされていた。

よく見るとイオングループのプライベートブランド「トップバリュー」の商品として売られている。350ml缶が100円という低価格もさることながら、驚かされたのは、サントリーとのダブルブランドになっていたことだ(写真)。
大手流通のPBをナショナルブランドのメーカーが製造するケースはこれまでにもあったが、PB商品のパッケージにサントリーのような大手メーカーのブランドマークが並記されることはまずなかった。

同じマーチャンダイジングを、サントリーは、セブン&アイ・ホールディングスとも行っており、全国のイトーヨーカドー、セブンイレブンの店頭には、「SUNTORY」のロゴが明記された、1缶100円のPBビール風飲料「THE BREW」が並んだ。

流通PBとのダブルブランドを売り出したサントリー

Photo_6 サントリーは、なぜ大手流通と組んで第3のビールの新商品を展開しはじめたのか。
そこからはサントリーがビール市場に対する戦略を根本的に転換しつつあることが見て取れる。

ビール市場は、94年の725万klをピークに現在に至るまで縮退を続け、長期低落傾向にある。人口減少と急速な高齢化に直面している国内市場の中にあって、これまでビール各社は、毎シーズン新製品を投入し熾烈なシェア競走を続けてきたが、実態は消耗戦といってよいものだった。ビールに対して高率の酒税が課せられているという日本市場の特殊な事情もあるが、価格志向を強める消費者のニーズに対応すべく、各社とも発泡酒、第三のビールという、ビールの「まがい物品」のジャンルまでつくって、大量の広告宣伝を投下してきた。

しかし、結果的に見れば15年が経過して、国内出荷数量は611万klにまで落ちこみ、市場は約16%縮退した。
何のことはない、その間、儲かったのは、ビールメーカー各社が投下した大量の広告宣伝の受け皿となった電通やテレビ局だけということになる。

減少し続けるビール市場と第3のビールの登場

Photo 現在、急速に売上げを伸ばしているのが、いわゆる「第3のビール」だが、この「第3のビール」というネーミングは、ビールメーカーを大スポンサーにしている大マスコミが、市場を囃し立てるために作りだしたジャンル名であり、あからさまに言ってしまえば、ビールの「まがい物」、フェイク商品のことである。大豆ペプチドやトウモロコシなどを醸造して得られたアルコールにビールエキスと称する<香料>をまぶしただけのシロモノで、こんなものを「ビール」と変わらないと思いながら文句もいわず飲んでいる日本の消費者がつくづく可哀想に思えてくる。世界の中でも最も進んだ消費大国といわれるこの国に暮らして、何の因果でわれわれは、こんな「まがい物」ビールを飲まされなければならないのだろう。

日本の食品・飲料メーカーの香料技術は、人間が感じるありとあらゆる味覚を再現できるまで、高度に進歩しているといわれるが、ビールメーカーが、その技術力をビールまがい商品の開発・製造に向けている現状は、どう考えても市場の「頽廃」としかいいようがない。要するにビール市場が94年に成長から縮退に転じてしまい、苦し紛れの策として生まれてきたのが「発泡酒」や「第3のビール」というジャンルなのであり、そのこと自体が市場の頽廃を体現している。

しかし、思い起こせば、サントリーという企業は、もとからビールメーカーであったわけではなく、戦後の物資が欠乏した時代に、醸造アルコールに色をつけただけと揶揄されたこともある安物ウィスキー「トリスウィスキー」を巧みな広告宣伝で爆発的なヒットへと導いたことが企業としての原点だ。だとすれば、こうした企業遺伝子を持つサントリーが、第3のビールに入れ込むのは、むしろ当然なのかも知れない。

第3のビールに入れ込むサントリーの企業遺伝子

第3のビールは、ここしばらくは売れていくかもしれないが、一方でビール市場全体の縮退は相変わらず続いていくことだろう。
日本のビールメーカーは、高度成長期には、次々と新製品を投入し、大量のマス広告を展開することで売上げを伸ばしてきた。しかし、成長を止めてしまった国内市場に対して、巨額の広告費を投下して「ナショナルブランド(NB)」を育てる意味は、既にもう喪われている。椅子取りゲームの椅子はもう無くなってしまったのだ。市場がもう成長しないとすれば、ビールメーカーにとっては、現在生き残っているブランドを守ること以外にやるべきことはなくなる。それでも「第3のビール」のような新ジャンルが成長することがあったとしても、その新ジャンルが伸びた分だけ、もともとのビール市場が蚕食されてしまうだけだろう。

こうした市場の成熟状況の中にあって、サントリーはPBとの連携という戦略転換をいち早く打ち出してきたといえるだろう。
イオンやイトーヨーカドといった圧倒的な販売力を持つ流通との連携によって宣伝・マーケティングコストを削減し、更なる低価格化を実現することで、第3のビール市場を押さえることを狙っている。
サントリーが「第3のビール」の分野で粛々と進めている流通との提携戦略は、裏返せば成熟市場下における「脱ブランド、脱広告」への戦略転換でもある。

国内よりも国外市場に目を向け始めたビールメーカー

もうひとつ、ビール業界を揺るがせているのは、キリンとサントリーの経営統合の動きである。
同族経営であるサントリーのような企業とキリンのような企業が果たしてひとつの企業体になれるのかと業界マスコミが騒ぎ立てているが、その根底にあるのは、国内市場に対する深刻な危機感である。サントリーがビール市場に売ってでたのも、ウィスキーに依存していた経営構造の下では将来の成長が無いと考えたからだ。当時のビール市場は安定的な成長が見込まれていた。

そのビール市場の成長が止まり、縮退に転じ、キリンとサントリーの海外市場開拓に向けた思惑が一致したことが、今回の経営統合の動きに繋がっている。彼らの目は、もう国内ではなく海外、特に中国に代表される新興国市場に向けられている。

あと数年したら、毎年、メディアを賑わせていたビールの新製品のCMなどは全く見られなくなるだろう。なんとなく寂しい気もするが、まがい物のビールを並べられて、飲め飲めと囃し立てられている現状を思えば、よほどせいせいする。世界中を見渡しても、日本ほど手を変え品を変え、目まぐるしく新製品が登場してくる市場はない。なかでもビール市場はその典型だったが、見方を変えれば、やっと落ち着いた普通の市場になるのだ。それは、つまりは日本の消費市場が成熟したということを意味する。

戦後60年を経て、日本の消費市場も大人になった。そのことに、まずは乾杯しよう、もちろん本物のビールで。

(カトラー)

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