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自民党が死んだ日

Asou_goodby 自民党が結党以来の大敗北を喫して、戦後初めて総選挙によって政権交代が実現した。
前代未聞の解散予告で始まった長い選挙戦は、当初は自民党にとって有利に働くと考えられていたが、結局、選挙戦の終盤には、民主党に地滑り的に支持が集まるという結果になった。(写真:産経ニュースより)

民主党よくやった!とほめるところかも知れないが、どうもそういう気分にはならない。というのも、民主党が圧倒的に支持を集めたというより、自民党が自滅したという印象が強いからだ。思えば、2年前に安倍首相が、ストレスから下痢ピー状態になり政権を投げだしたのがミソの付き始めだった。

安倍政権の後を受けた福田首相もわずか1年で降板し、禅譲に近い形で首相の座に就いた麻生太郎は失言続きで、国民ばかりか党内の人心も離れダッチロール状態に陥り、とても政権を担っていける状況ではなかった。
麻生は今回の総選挙の結果を「有権者の自民党に対する積年の不満やら不安やらが積み重なったものだ」と自分のことは棚にあげてしゃあしゃあと述べていたが、本人もまさかここまで大敗北するとは予想していなかっただろう。落選した自民党の「大物」政治家たちも「見えない風が吹いていた」「地殻変動がおきていた」というような表現で過去の選挙とは手応えが異なっていたと口々に述べていた。

90年代前半には終わっていた自民というシステム

「自民党の消費期限がきれた」といったのは、自民党の選挙対策副委員長だった菅義偉だが、自民党というシステムは、実はバブル経済が崩壊した90年代前半にとうに終わっている。
あまり知られていないことだが、これほど巨大な党組織を持っている政党は共産主義政党を除けば世界中を見渡しても自由民主党しかない。自民党としての政策決定をおこなう政調会は、部会が15~20、調査会が30余、特別委員会が50近くもある。エリート政治家による統治が定着しているフランスなどでは、30名あまりの幹部政治家によって担われているといわれているから、いかに肥大した組織かわかるだろう。

例えば、税制を議論する場合も、政府が主宰する税制調査会とは別に自民党の税制調査会が存在し、自民党の税調、すなわち族議員のチェックを受けなければ、法案として国会に提出することもできない。ことほど左様に、先述した膨大な数の部会、研究会が存在していて、そこで何が行われてきたかといえば、族議員たちによる「調整」という名の談合である。つまり、自民党とは、巨大な利権の談合組織であったために、政府組織と同じ規模の組織が必要となったわけだ。

巨大な利権の談合組織としての自民党

そして、この談合組織は、日本経済が成長している間は極めて効率的に機能していた。法律や政策は、官僚からボトムアップで上げられ、国会に提出される以前に業界の根回しなどが全て終わっている。野党から反対される場合もあるが、それも、ほとんどは予定調和的で落とし所は互いに見えている。また、日本全体の富の分配では、トヨタやソニーのような都会の外需産業が儲けた国富を道路やハコモノにして地方に分配する談合の取り仕切りを自民党が長く担っていた。それによって、都市と農村の経済格差は平準化され、逆に農村は工業労働者を都市に供給し続けた。
しかし、こうした仕組みは、日本経済が高度成長を遂げている間のみ機能できる。現在、高度経済成長を続けている中国の共産党政府が統治力を持っているのと同じ構図であり、いったん経済成長が止まると、全ての歯車が狂い始める。

小泉純一郎は、自民党が既に政党として機能不全に陥っていることを正確に理解していた。だからこそ、「自民党をぶっ壊す」と大見得を切って、郵政、道路族議員たちを「抵抗勢力」と呼んで敵役に仕立てあげ、小泉劇場に無党派層を惹きつけることで党勢を維持した。小泉改革とは、経済システムの改革であると同時に、高度経済成長が終わり、機能不全に陥った自民党の延命策であり、小泉は自民党にとって破壊者であると同時に救世主でもあった。

破壊者でもあり救世主でもあった小泉純一郎

しかし、その間に自由民主党の本質的な構造が変わったかといえば、Noだろう。
小泉改革によって、自民党の談合システムと利権の分配機能が弱まれば弱まるほど、これまでの自民党の支持母体が自民離れを起こし、政党としての足腰は弱体化していった。
国民新党の綿貫や亀井のようなゾンビ政治家たちが、「郵政民営化が自民党や日本をめちゃめちゃにした」とこの期に及んでなお念仏のように恨み節をいっているが、小泉政権が誕生しなかったら、もっと早く自民党は崩壊していたにすぎぬ(その方が日本にとっては良かったという議論もあるが・・・)。

小泉の後継者たちは、誰もが改革路線の継続を言っていたが、それは、小泉人気にあやかろうとしていただけで、麻生太郎に至っては、露骨に郵政民営化の否定を始めた。しかし、その修正路線が結局、命とりになった。麻生は、「自民党が本来の保守に立ち戻り、昔の自民党らしさを取り戻す」ことを主張したが、それは、結局、台頭しつつあった自民党の新しい支持勢力をも離反させただけで、他方で旧来の支持母体との間にできた溝も埋めることはかなわなかった。

ホリエモン潰しで、新興勢力も離反

4年前の衆議院総選挙には、ホリエモンが自民党の推薦を受けて、立候補していたことを思い出してほしい。規制緩和や経済改革によって生まれてくる新興の経済勢力と手を結ぶ可能性がこの時の自民党には生まれていたにも関わらず、ホリエモンを社会的に葬り、カンポの宿の売却問題では規制緩和の旗振り役であったオリックスなども足蹴にすることで、経済成長の芽とそれを担うべき新興勢力との関係を無に帰してしまった。

他方の民主党もほめられたものではない。自民党にはつくづく愛想がつきたというネガティブ感情を背景に大勝ちしただけで、自民党に比べて政党としての戦略性や先見性があるわけではない。そのことは、今回のマニフェストでいえば、成長戦略の欠如という形となって決定的に現れている。

自民党とは、高度経済成長下における富と利権の分配・談合システムであり、バブル崩壊とともにその役割も終わっていたが、今回の敗北でついに命運が尽きた。
政権を奪取した民主党に求められるのは、低成長下における新たな富の分配システムの構築と新たな成長戦略になるはずだが、まだ何も見えていない。

小選挙区で負けた「大物」が比例で復活しゾンビ化

野党として下野することになった自民党の幹部連中は、正に茫然自失状態にある。これまでは利権という接着剤によって繋ぎ止められてきた自民の組織はバラバラに拡散してしまう可能性さえある。政党としての新たな軸を構築して求心力を創出することが迫られているが、小選挙区で負けた古株の「大物」議員が比例でゾンビのように復活してきており、組織として新陳代謝が進むかどうかも微妙だ。少なくとも現在の自民党には、二大政党制を機能させられるだけのポテンシャルはもはや存在していないというべきだろう。

当面は、次の自民党総裁として誰を選び出すかが試金石となるが、巷間言われているように、舛添要一のようなパフォーマンスだけの政治家を選ぶようでは、自民党は本当に崩壊してしまうだろう。

選挙のあった日曜日、カフェで仕事をしていた私の隣の席で、若い女性の2人組が、ノリピーの話や、共通の男友達の悪口などを言ってひとしきり盛り上がっていた。
少なくとも2、3時間はおしゃべりをしていたと思うが、突然、一人の女性が時計を見て、席を立ち上がった。

「あっ、もうこんな時間、選挙にいかなくちゃ」

私は直感した、政治は変わる。自民党の大物政治家が口にしていた「地殻変動」や「見えない風」がここにあった。

政治家よ、この声なき声を懼れよ。

(カトラー)

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Comments

相も変わらず
「自分だけは賢い子ちゃん」口調…
自分がそう思うから、郵政民営化は絶対善?
何に対しても自分だけは正しい、正に上から目線です。

Posted by: | 2009.09.02 at 11:15 AM

多分、今後のマスメディアの注目は、小沢院政に移っていくのでしょうが、自民党のこれからの方が、注目すべきと思っています。

利権を目指して集まっていた集団が、利権なき自民党に、何のアイデンディディーを見出すのか。

カトラー氏のご指摘の様に、自民党は死に、そして解体するのか。それとも、焼け野原から、青臭い書生論が聞こえてくるのか。

もしも未来の自民党から、「東アジア人の大量移民受け入れ」「極小政府」「経団連無視、一次産業優遇」が打ち出されたらと、思ったりもします。

Posted by: あたり前 | 2009.09.02 at 11:43 AM

カトラー氏のみならず、多数の方が「民主党の政策は戦略性や先見性に欠ける」と分析していますが、実際問題、この時代に確かな戦略性や先見性を持つことって可能なんですか?
では、どういう政策ならば「戦略性や先見性がある」と言えるのか、一つでも具体例を上げてくれればいいんですが、みなさんダメ出しされるばかりですね。。。

Posted by: | 2009.09.02 at 12:50 PM

マスコミはあまり指摘しませんが「連合」も世界的にみて巨大な談合組織です。
政権交代しても「連合」が政治を支配するような状態になったら日本はおしまいでしょうね。

Posted by: | 2009.09.02 at 03:37 PM

二言めには「日本はおしまい」とか軽々しく口にするあたり、リアリティがゼロですね。
国籍法騒ぎとか、色々な件でそんな物言いは散々聞きましたが、実際どうかなった事例は知りません。
一体、今までに何回終わってるんだろうな日本。(笑)

連合の問題は、安定成長時代に労使協調・政労協調ですっかり自民党システムと連関し取り込まれたことでしょうね。
今やそういう幸せな時代では既にありませんし、新たな受け皿が必要になってくるでしょう。

Posted by: Gl17 | 2009.09.03 at 11:05 PM

でも、得票率では、実は、自民と民主の大差ないんだよなw

って、民主支持者の俺の兄貴がいってた。

小選挙区では負けたけど、実際得票率は、あんま変わらないんよな

Posted by: べジータ | 2009.11.26 at 06:47 AM

京都府の片平を自殺させた、娘は攻められる事を恐れてと有る。現首天皇家の部隊は過去帳を血筋を手繰って暗殺を始めた。昭和後記から既に過去の人物や人間が殺されて生存が無い。土地を資産を財産を予算を略奪する部隊を配備した天皇家は比叡山から宗教法人に至るありとあらゆる欲望を金で買い取って放送局を片腕に日本人に戦いを挑んでいる。敗戦国、敗戦者天皇家を日本国から国家からどう絶滅させるか民主を踏まえた日本国に重大な今後を迎える。現首天皇家に使える宮内庁や皇族をどうやって暗殺するかが政界や政党が考えなければならない課題だ。

Posted by: 片平 | 2011.12.07 at 10:54 PM

昭和時代に国の明治維新の明治天皇の機密情報を由緒を逸話を持参してテレビ局に現れた存在がいました。殺害から始まった昭和時代、数々の方々が殺されています。仕返しする為に東京都が各地が世界百六十数カ国へ宇宙全域に感知出来る今世紀の機密情報を発信して末代永劫に由緒やえにしが無いように計画しています。

Posted by: 隼人 | 2012.03.11 at 06:58 AM

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