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官僚たちの夏の終わり

Photo ブログの更新がすっかり疎かになている間に、世の中では鳩山政権がスタートし、「脱官僚依存」が、次なるキーワードとしてメディアを賑わしている。
多分にパフォーマンスも入っているのだろうが、政治主導を印象づけるやりとりがメディアを通じて流されている。苦笑させられたのは、環境省の着任式で小沢鋭仁新大臣に対する小林事務次官の言葉だ。

小沢大臣「・・・皆さんには私は力が無さそうに見えるかもしれないが、鳩山総理には一番近い存在だと自負している」
小林事務次官「総理の一番の懐刀でもある素晴らしい大臣を迎えられたと、心よりお慕い申し上げております」(マークは筆者の判断で挿入)

小沢大臣が、自分は総理の「虎の威を借る狐」だと、わざわざ言い立てる神経も相当なものだと思ったが、そういう新大臣に向かって「お慕い申し上げております」と臆面もなく全国放送のテレビカメラの前でしっぽを振って見せる小林事務次官の姿にも思わず鳥肌がたってしまった。

小林事務次官は、各省からの寄せ集めの役所である環境省の中にあって初の生え抜きの次官であり、何としても今のポジションを全うしたいのだろう。官僚組織の中で這い上がっていくには、これくらい自分を虚しくして尻尾を振ってみせる姿勢あるいは資質が必要ということだ。

職権をこえて産業振興をおこなった通産官僚

TBSが日曜に放送している「官僚たちの夏」という佐藤浩市主演のドラマが高視聴率を上げている。
原作は城山三郎の小説で、昭和30~40年代にミスター通産省の異名をとった佐橋滋という実在の通産事務次官をモデルにしたものだ。7月から放送が始まり、好評ということは聞いていたが、9月7日(日)の放送で番組を初めて見た。
佐橋滋は、官僚主導型の産業政策の基礎を築いた人物として知られる。私が見た番組の中でも東京オリンピックへと向かう時代、国産旅客機の開発に不可欠なコンピュータを米国から導入するか、日本のコンピュータメーカーを育成するかという綱引きが省内で生じるのだが、主人公は、左遷されて特許庁長官の立場にあるにも関わらず、職権をこえて国産コンピュータメーカーを後押しするために奔走する姿が描かれていた。

城山三郎の小説もこのテレビドラマも佐橋滋をモデルにした主人公「風越信吾」をヒーロー化して描いているが、この主人公を現代に連れてきたら、残念ながらドンキホーテになってしまうだけだろう。このドラマの主人公がやったような個別産業の育成を国(通産省)が後押しする「産業振興策」は、DRAM開発に成功した「超LSI技術研究組合」などを例外とすれば、他は悉く失敗してきたといってもいい。

失敗続きの日の丸産業振興プロジェクト

最近の産業政策の悪しき見本としては、「情報大航海プロジェクト」いわゆる「日の丸検索エンジン」が上げられる。インターネットの検索分野は、世界的にグーグルが寡占状況を作りあげつつあるが、2006年に経済産業省が音頭をとる形で国内IT、エレクトロニクス企業から成るコンソーシアムを形成し、オープンソース型の国産検索エンジンの開発に乗り出した。プロジェクトには既に50億円近い税金が投入され現在も進行中だが、成果らしい成果は何も生まれていない。
そもそも、このプロジェクトは、フランスが自国文化の保護を目的に独自の検索エンジン技術の開発に乗り出したのに倣って計画されたものだが、2008年度の成果報告を見ても要素技術の開発、ビジネスモデルの構想にしても全く手つかずの状態で、将来も含めてとてもグーグルに対抗できるようなシロモノではない。

「情報大航海プロジェクト」というタイトルも当の担当者としては、自慢の作文なのかもしれないが、あまりのセンスのなさと時代錯誤ぶりに呆れてしまった。検索技術のようなイノベーションテクノロジーを国が音頭をとる寄り合い所帯で開発してうまくいくわけがなく、グーグルが米国企業だから、それに対して国産技術が必要という発想自体がどうしようもなく古い。仮に、グーグルの技術やビジネスモデルを凌駕する者が現れるとすれば、それは第二、第三のグーグルのような新興企業である。しかも、現在のようなフラット化した世界においてイノベーションを先導する企業は最初から国境を越えているのであって、もともと日の丸も星条旗も関係ない。

通産が産業をリードした古き良き時代の終わり

ようするに、佐橋らが活躍し、通産省が産業界を牽引した古き良き時代はとうに終わってしまったのだ。当時の官僚が輝いて見えたのは、日本経済の成長分野がはっきりと見えていたのに対し、人、モノ、資本というリソースが圧倒的に不足していたからであり、官僚の主たる使命は限られた国家資源をいかに経済成長に対して効率的に振り分けるかにあった。現在は、成長領域そのものが見えにくい。民主党のマニフェストに成長戦略が欠落しているのもそのせいだろうし、潜在的な成長機会を発掘して事業化するのは、既に官僚のセンスと専門性では無理というもので、民間企業あるいは起業家の仕事として行うべきであることを「情報大航海プロジェクト」など日の丸プロジェクトの失敗は物語っている。

世間のキーワードは、この2週間で「政権交代」から「脱官僚依存」に切り替わったが、過剰な期待を持たない方がいいだろう。「政権交代」にしろ「脱官僚依存」にしろ、政治のプロセスが変わるということだけで、政治や経済の中味が変わるわけではないし、いくら官僚叩きをしてみてもこの国の抱える問題は何も解決しないからだ。

小泉政権が誕生した時に「自民党をぶっ壊す」という言葉に人々は喝采を送ったが、結果残ったのは、自民党が本当に壊れたことだけだった。メディアの論調などを見ていると官僚バッシングに火がつきはじめた気配があるが、「官僚をぶっ壊す」だけでは、単にこの国のガバナンスの根幹を毀損するだけにおわるだろう。全てが相変わらず内向きに進行していることにとても危うさを感じる。

Photo_2 TBSの「官僚達の夏」の番組宣伝ポスターを見ていて気が付いたことがある。

どこかで見たことがあると思っていたのだが、映画「Always 三丁目の夕日」のポスターと同じトーンとテイストで作られている。デザイナーが意図したものかどうかはわからないが、「Always~」が昭和という時代に対するレクイエムだったのと同様に、「官僚たちの夏」は同じ昭和の高度経済成長の時代に輝いて見えた官僚という存在に対する挽歌なのかも知れない。

官僚たちの夏は終わり、霞ヶ関には夕日がかかり、秋風が吹き始めた。

(カトラー)

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コメント


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・・・おかげでちょっと皮がふやけたわwwwwwwwwwww

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投稿: おおおおぉぉぉぉおおお!!!! | 2009.09.26 21:00

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» そうはいっても国にしか出来ないことがあると思う。 [jlogue]
「グリーン革命」トーマス・フリードマン著にあるような、社会的な枠組みによって、良い方向に導く仕掛けに興味があります。 確かに、カトラー:katolerのマーケティング言論の「官僚たちの夏の終わり」の以下の文章にあるような、「潜在的な成長機会を発掘して事業化する」..... [続きを読む]

受信: 2009.09.22 09:05

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