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禁酒法時代に入った中小企業金融、サラ金。これからは闇金が跋扈する?

Photo 「返済猶予制度」原案固まる 亀井氏「追加融資もさせる」

亀井静香金融・郵政改革担当相がぶち上げた「返済猶予(モラトリアム)法案」が国会に提出されることがほぼ確実になった。政府の検討チームがまとめた原案は亀井担当相の当初のアイデアに沿うものとみられ、同担当相も「これで中小企業に元気を出してもらえる」と上機嫌だ。.(J-CASTニュースより).. ...

亀井金融大臣の中小企業に対する「返済モラトリアム」が物議を呼んでいる。
金融の専門家筋は、亀井がいうようにモラトリアムを実施すれば、回収が困難になると考える銀行が、ますます融資のハードルを高くし、結果としては貸し渋りや貸し剥がしを助長することになると警告している。

しかし、亀井の提案を真っ向から批判できないのは、中小企業をめぐる金融がどうしようもなく傷んでいる実態があり、その危機的な状況に対して誰も処方箋を提出できそうにないからだ。

危機的状況の中小企業金融

知り合いのITソフト会社のA社長も昨年から金策に走り回ることが多くなった。資金繰りに苦労することは、昔から聞かされていたことだったので、「相変わらず苦労しているんだなあ」とぐらいにしか考えていなかったのだが、先日、その社長とたまたま顔を会わせる機会があったのだが、見るからにゲッソリとしていて、思わず「大丈夫かと」声をかけてしまった。
Aさんいわく、現在の状況は、昔とは全く違うという。銀行がカネを貸さないのは、昔も今も同じだが、それに加え、銀行以外の金融のパイプがどうしようもなく細っているという。
銀行というのは、昔から基本的に不動産担保が無ければカネを貸さない存在だ。数年前から、東京都民銀行や三井住友銀行など一部の大手都市銀行が、中小企業を対象に3年間の決算書を提出するだけで事業内容を数日間で審査し、通れば即融資するという触れ込みのスモールビジネスローンの拡販に乗り出したが、いずれの銀行もかなりの焦げ付きを抱えていて、とても融資拡大に走る状況にない。
この背景にはリーマンショック以降の経済環境の悪化があるが、A社長いわく、商工ローンの事業者を潰したのが大きな原因だという。

商工ローン業者は最期の頼みの綱だった

中小企業相手に事業資金や手形を割り引いたりする商工ローン業者が、融資に際して連帯保証人をとった上で、その連帯保証人も巻き込んで厳しい取り立てをかけていく手口が反社会的だと批判され、経営的に追い込まれたのは、まだ記憶に新しいところだ。
商工ローン業者は、年利で30%を超える貸し出し金利を借り手に課していたことも社会的な批判の対象となった。しかし、A社長によれば、商工ローン業者は、金利は高くとも中小企業の経営者にとって最期の頼みの綱であったという。というのも、A社長が取引している大手の上場IT企業が振り出す手形は、半年後でなければ現金化できず、その間を繋ぐ手段をいつも経営者として算段することが求められてきたからだ。

商工ローン業者やサラ金業者の取り立てが問題視され、消費者、借り手保護の名目のもとで、上限金利が下げられ、いわゆるグレーゾーン金利も撤廃されてしまった。それに加え、過去にこの上限金利を超えて支払った分まで過払い請求を起こせば、返還しなくてはならないという判断を最高裁が下したために、商工ローン各社は多数の過払い請求訴訟を受けることとなり、これが最終的には命取りとなった。

その結果、商工ファンド、日栄といった商工ローン業界、最大手の2社がいずれも倒産して姿を消すという異常な事態となった。国は、中小企業庁の中小企業向け事業融資の枠を広げて、資金需要に対応してきたが、現在は、中小企業金融公庫を吸収した政策投資公庫が銀行の貸し付けに対する保証元となる体制をとっている。ところが、融資の窓口となっているのは銀行なので、商工ローン業者のような厳しい取り立てはできず、結果として焦げ付きが増え、それがさらに銀行の融資姿勢を鈍らせるという悪循環に入っている。

銀行から相手にされないリスクのある企業にカネを貸し込むことでビジネスをやってきた商工ローン業者と、担保をとった商売しか経験のない銀行マンとでは、リスクに対する感覚や対処方法に雲泥の差がある。中小企業の経営者も必死だ。これまでは、自分を追い込んでくる商工ローン業者とギリギリのやりとりをしながら、タイトロープを渡ってきたのだが、そのロープがばっさりと切られてしまった状態だとA社長は天を仰いでうめいた。

サラ金、総量規制が自己破産を急増させる

グレーゾーン金利の撤廃と過払い金利返還訴訟の増加は、アイフル、プロミス、武富士といった業界最大手にも巨額の赤字決算を余儀なくさせており、中堅以下では廃業、倒産が相次いでいる。
さらにサラ金業者たちを震撼させているのが、借り手に対する総量規制の問題である。
過重な返済地獄に陥らないために、借り手の年収の三分の一までしか、融資できないという法律が成立し、その施行が来年2010年に迫っているのだ。
この法律は、一見、借り手保護を目的としているように見えるが、果たしてそうか。
総量規制でサラ金業者からもカネを借りられなくなった人々は、違法な貸金業者、いわゆる「闇金」に走ることは必定だからだ。また、既存のサラ金業者たちは、総量規制の施行を戦々恐々の思いで見つめている。融資金額にキャップが課せられ業績悪化が見込まれるのはもちろん、借り入れができなくなった消費者が次々に自己破産に走る最悪の事態も予想される。自己破産者は一説では60万人に達する見通しだという。自己破産を避けようとしたら、行き着く先はやはり闇金だ。

闇金業者は、禁酒法時代のアルカポネのような存在である。アルコールを製造しても販売してもいけないというクリスチャン的な理想論に基づいて施行された世紀の悪法「禁酒法」によって、酒がギャングたちの資金源となり、闇の勢力を跋扈させる事態を招いた。酒を求める人々は、地下に潜った売人たちの餌食となり、高額な商品や贋酒も横行し、ギャングたちは濡れ手に粟の大儲けをした。

中小企業金融の危機が招く国際競争力低下

「東芝クレジット」「日興コーディアルファンド」「三井住友ファイナンス」・・・

これらはみな、摘発された闇金業者の社名である。要するに、禁酒法時代のギャングのように何をやっても意に介さない連中が、これから金繰りに困窮した中小企業経営者や個人を飲み込んでいくことになる。

リーマンショック後に東北の某中堅企業が民事再生法を申請した。この会社は、薄膜の技術で世界的に評価されるオンリーワン中小企業で、アップルのiPhoneのタッチパネルの部材を一手に引き受けているような技術力のある中小企業だった。過剰な設備投資が祟ったといわれているが、直接的には、銀行が追加融資に手をあげたことが破綻の直接の引き金になった。タイトロープが切られてしまったのだ。
今、こうした形の突然死が、全国の中小企業に急増している。昔のように、不動産投資などで失敗したというのではなく、技術力もあるのに本業で行き詰まるケースが増えているのがいかにも不気味である。
自動車、家電・エレクトロニクスといった外需型の大手企業の国際競争力を底辺で支えているのはこうした要素技術に秀でた中小企業であることを思えば、現在、中小企業を襲っている金融危機は、間違いなく数年先の日本の先端企業の国際競争力の低下という形ではね返ってくるだろう。
 
(カトラー)

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