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郵政民営化の挫折に高笑いする特定郵便局長 ~毒まんじゅうを食った民主党~

Photo 日本郵政の社長、西川善文氏が辞任に追い込まれ、後任に元大蔵事務次官だった斎藤次郎氏が就任する見通しとなった。

辞任を決めた西川氏は、自分が辞めなくてはならない理由を「郵政民営化に関する政府の方針が変わったことで、このまま自分が日本郵政に止まっても大きな隔たりがあり、適切でないと判断したからだ」とだけ説明した。

マスコミは、後任に決まった斎藤次郎氏が、元高級官僚であり、民主党の掲げる「脱官僚」という方針に矛盾すると書き立てているが、問題の本質はそんなところにはない。
第一には、今回の西川氏の実質的な更迭は、日本の金融システムのオープン化・健全化をどう考えるかという郵政民営化の本質に関わることである。郵政民営化が議論されていた前提を思い出してほしい。

かつては、「ゆうちょ」、「かんぽ」に蓄積された200兆円にもおよぶ国民の預貯金が、大蔵官僚のさじ加減ひとつで特定天下り団体や道路財源などへの資金に回されていて、国会などのチェックも受けず、「第二の予算」といわれていた実態があった。現日本郵政の経営陣が安売りしたと批判された「かんぽの宿」にしても、郵貯資金の運用投資先として、そもそも本業と関係のない所で始められた事業である。
結果として年間40億円もの赤字を垂れ流している「かんぽの宿」事業を、そもそも郵政の役人の天下り先として始めたことが大間違いであり、国民の富がこうした非効率な分野に投じられていたこを正すことのほうが先決なのである。

かつての「財政投融資」の復活か?

民主党は、今後の日本郵政の取り扱いについて「これまでの路線は修正するが、国有化路線に戻すつもりはない」というような曖昧な説明をしているが、将来にわたり株式を売却しないとすれば、すなわち国有化・公社化するということであり、集められた資金は、「財政投融資」的に使われていくことになるだろう。今はどうなっているかといえば、8割がたは国債で運用されており、要は国の借金の尻ぬぐいをさせられているのだ。元バンカーの西川氏としては、この資金の運用についてもメスを入れていく構想を持っていただろうが、ゴールドマンサックスのような欧米の金融企業を通じた運用には、大きな抵抗があった。日本国民の富を、ハゲタカ資本主義の連中に売り渡すつもりかというようなナイーブな感情論が根強く、グローバル運用に対しては慎重にならざるを得なかった。
亀井静香、麻生太郎、鳩山邦夫といった連中は、実のところそうした国粋的な心情を背景に郵政民営化に反対しているのであり、だからこそ、西川の日本郵政に対して言いがかりとしかいいようがない対応をとってきた。

国内に適当な投資機会があれば、「ゆうちょ」、「かんぽ」のカネを振り向けることがベストだろうが、「ゆうちょ」についていえば、金融機関として事業者に対して審査・貸し出しを行う能力もないし、仮にそのスキルを身につけ、他の信金信組のように地域の事業者に対する貸し付けなどを始めたとしたら、民業圧迫の誹りを免れないだろう。

従って、日本郵政の巨大な資金は、本来的には諸外国の年金資金のように、海外市場で運用するのが運用のパフォーマンスを考えれば正しい選択なのだが、その将来可能性にもストップがかけられてしまった。日本郵政の膨大なマネーはこのまま国債を抱えたまま塩漬けになる可能性が高くなった。

郵便・宅配事業の改革、健全化も頓挫か?

また、西川氏が、民営化によって最も力をいれて進めていたのは、郵便・宅配事業の改革、健全化である。
Eメールの普及や宅配事業者との競争などによって、郵便物の取り扱い量などは長期低落傾向にある。このままでは郵便事業は構造的に成り立たなく可能性をはらんでいるといっても過言ではない。
この問題に対しては、西川氏は、成長領域である小口物流(宅配便)分野の強化を進め、日本通運(ペリカン便)と宅配便の事業統合を行うという荒技にでた。ところが、今回の辞任に伴って、その事業統合についても白紙撤回される可能性が出てきており、統合に向けて物流拠点の統合や人員の異動に手をつけはじめていた現場は大混乱を呈している。このペリカン便との事業統合のような大胆な事業の枠組みの再構築によってしか郵便事業から将来にわたり収益を生み出していくことは不可能だ。民営化が後退すれば、郵便事業はコストセクターとなり、全国ネットワークの維持を理由に血税が投下されることになるだろう。

郵政民営化を争点にした4年前の衆議院総選挙で惨敗したことへの意趣返しとはいえ、西川氏を辞任に追い込むような理不尽なことを民主党が推進しているのには理由がある。
それは、今回の政権交代選挙で特定郵便局長の組織(全国郵便局長会)と民主党が握ったということが背景にある。今回の政権交代そして、郵政民営化の抜本見直しまでのシナリオを組み立てて、高笑いしているのは、この特定郵便局長の連中である。

特定郵便局長たちの高笑いが聞こえる

特定郵便局長とは、全国に約2万近くあり、郵便局全体の8割を占める。国家公務員並の待遇を受けているが、世襲であり、地方の名士と呼ばれる連中が代々身分を引き継いでいる。その身分的な特徴は以下の通りだ。

1)郵便局の土地、建物は、郵便局長の所有だが、国が、自宅であっても局長に局舎料(月額50~100万円)を払っている。
2)公務員としての待遇が保証されている。
3)公務員としての定年はあるが、妻、子に世襲制的にその地位が受け継がれる。
4)給料とは別に、年数百万円の経費が支給される。
5)売上げの如何に関わらず公務員なので収入が減ることはない

この手厚い身分保証を見れば、特定郵便局長たちが民営化に身を挺して反対するのは明らかであろう。世襲で地位が受け継がれ、収入が保証されることなど、どこまでいっても民営化の理念と合うはずがない。亀井静香や民主党で総務大臣となった原口一博は、「地方の文化や格差の拡大を防ぐ拠点として郵便局が必要だ」ときれい事を並べているが、ちゃんちゃらおかしくて聞いてられない。実態はこうした特定郵便局長の組織的な利権を守っているだけなのだ。

国民新党を介して特定郵便局長の組織を取り込んだ小沢一郎

この特定郵便局長の組織は、私的な団体であるが、小泉政権の郵政民営化路線に反発して、自民党を離党した亀井静香の国民新党の支持を打ち出した。過去の選挙でも全国でこの特定郵便局長が選挙違反で捕まるなど、選挙の集票組織として大きな力を持っていることが知られているが、自民党から離反している点に目をつけた小沢一郎が、政権交代を実現するために国民新党を介して取り込んだのである。
わずか3議席しか持たない国民新党の亀井静香が、民主党をさしおいて、現在、日本郵政問題では傍若無人にやっているように見えるのは、この特定郵便局長の組織をバックにしているからだ。自民党では引退した野中広務が郵政族のドンといわれたが、小泉内閣以降は自民党との関係は微妙なものになっていた。選挙上手の小沢はその弱点をうまく突いた。

亀井静香は郵政問題で小泉政権に反旗を翻した確信犯だから、まだ可愛げもあるが、民主党の原口一博はこうした利権問題に一切口をつぐんで、郵政民営化には「改革利権」が存在し、西川氏があたかもオリックスグループに利益誘導したような発言を行っている。こうした正義派を気取った卑怯なリベラル野郎が一番質が悪い。

はっきりいっておきたいが、特定郵便局長をめぐる北朝鮮のような利権システムを保持させるために、多くの有権者は今回の選挙で民主党に投票したわけではない。

民主党は、今のところ、小泉政権の金看板だった郵政民営化を人身御供に差し出すことで自民党の集票マシーンを取り込んだ気になっているかもしれないが、むしろ毒まんじゅうを食ったというべきだろう。

その毒は下手をすると、この弱った日本の全身に回り、日本郵政を腐らせ、金融という経済の血流を滞らせ、命取りにもなりかねない。

(カトラー)

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