冤罪デパート大阪地検が、次の標的にした羽賀研二
芸能ニュースなどは日頃はほとんど目にしないが、4年前にタレントの羽賀研二が、恐喝と詐欺の容疑で逮捕され、その後の一審では無罪となったことは記憶していた。逮捕が報じられた当時、メディアを通じて私が得た事実の印象とは大凡以下のようなものだった。
「タレントの羽賀研二は、保有していた未公開株を不動産会社社長に不当な高値で売りつけた。その後、その未公開企業が倒産したため、その社長は、生じた損害を賠償してほしいと申し入れた。これに対し羽賀研二は元プロボクサー世界チャンピオン、渡辺二郎と共謀し、示談の話し合いの場に暴力団組員を同席させるなどして恐喝し、4億円に上る賠償額を1千万円という不当に低い金額で示談に持ち込むことで差益3億7千万円を詐取した」
梅宮パパがインタビューに答えて、「俺の目に狂いは無かった。あんな奴に娘を取られなくてよかった」とコメントしていたのを見て、やはり羽賀研二とは、とんでもなく胡散臭い奴だったのねと何の疑いも持たず思い込んでいた。
ところが、驚くべきことに、私のそうした印象は、どうも根本から間違えていたようなのだ。
逮捕の翌年に東京地裁で無罪判決が出て、「あれ?どうして無罪になったのか」と初めてこの事件に疑問らしきものを感じたのだが、それ以上調べたりすることはなかった。亡くなった梨本勝芸能リポーターが当初からこの事件は冤罪であるといっていたことなどを後になって知った。
そしてこの事件は、先々週の6月17日、二審(高裁)の判断が出て、一審の無罪を覆し、恐喝未遂と詐欺罪で有罪、羽賀研二には懲役6年の実刑判決が下された。
先週の23日、私が発起人の一人になっている「健全な法治国家のために声を上げる市民の会」が主催したシンポジウムに彼が急遽参加して驚くべき真実を語った。
都合の悪い証人を偽証罪で起訴する検察
詳しくはその模様を岩上安身氏のユーストリーム放送やニコニコ動画で流しているので是非見ていただきたいが、羽賀研二は被害者とされている不動産会社社長に元値(40万円)を偽って高値(120万円)で売りつけたとされ、そのことが詐欺罪成立の根拠とされていた。しかし、決定的なことは、実はその社長が未公開株の取得価格・元値をあらかじめ知っていたことを証言した証人がいたのだ。この証人は、羽賀研二の知人の歯科医だが、一審ではこの証言が決め手となり、羽賀は無罪となった。
では何故、二審では有罪になったかといえば、検察側がその決め手となった証人を偽証罪で在宅起訴し、その証言の信憑性が崩れたことで結果的に詐欺罪が成立してしまったのだ。
この歯科医の記憶や証言内容に不自然な点が多いとされたのだが、それは糖尿病のため最近になって失明してしまったことが大きな要因だ。
シンポジウムに参加した郷原信郎氏をはじめとしたそうそうたる弁護士の面々も全員が指摘していたが、検察側にとって都合の悪い証言をする証人を検察の権限で片っ端から起訴するとしたら、誰も尻込みして証言などしなくなるだろう。
証言の是非や信憑性は当該の裁判の中で問われるべきで、証言者を別途偽証罪で起訴するというのは、国家権力による恫喝に他ならないし、あってはならない話だ。
そもそも詐欺罪を適用したのが大間違い
また、シンポジウムでは、そもそも未公開株の取得や譲渡に関わる損得の問題は民事案件として取り扱われるべきであり、詐欺罪を適用しようとしたこと自体に大きな間違いがあると指摘されていた。被害者とされた不動産会社社長が損害を被ったのは、当該の未公開企業が倒産したためで、他方で羽賀研二が売り抜けて儲けているなら、相手を騙したという言い分も成立するが、実際には、羽賀研二はその社長に未公開株を譲渡した差益で更に同じ未公開株を買い増して、大損を被っている。
当時、未公開株は、額面の何百倍にもなると考えられていて、羽賀研二もその社長も欲の皮が突っ張っていた点で同じ穴のムジナということはできても、一方的に騙した、騙されたとは、とても言えるような関係ではない。
報道では、暴力団関係者が示談の話し合いの際に同席し、羽賀研二側の代理人として恐喝行為に加わったかのように書かれているが、この暴力団関係者と不動産会社社長は実は知り合いだった。しかも、この示談の後には架空の債権譲渡の覚書をもとに、今度は羽賀研二に対して取り立てをかけたりしている。そもそもどちらが被害者、加害者かもわからない仲間内のどろどろした話なのだ。
暴力的な取り調べを受けた羽賀研二
そして、こうした理不尽な裁判が何故行われているのかと言えば、羽賀研二の事件が、組織暴力(ヤクザ)を取り締まる大阪府警四課によるものだからと、前回のシンポジウムでデビュー?した元暴言検事こと市川寛弁護士が詳細に解説してくれた。
前回のシンポジウムで正に彼が言っていた「ヤクザと外国人には人権が無い」という歪んだ検察の常識を地でいったような事件なのだ。実際、羽賀研二は取り調べの最中に蹴りを入れられたり、髪を掴まれて振り回されるなどの暴力行為を何度も受けたという。
それにしても、無罪の決め手となった弁護側の証人を偽証罪で起訴することまでして、この事件を強引に有罪にしたてようとした検察の姿勢は何に起因しているのだろうか?
それは、この事件の所轄が大阪地検であったからに他ならないだろう。
つまり、村木厚子さんの冤罪事件に続き、羽賀研二のように知名度の高いタレントの裁判で負けて、結果的に強引な立件や操作手法が問題化すれば、東日本大震災の発生で、せっかく検察問題からそれていた世間の目が、再び検察や大阪地検の上に注がれ、元の木阿弥になりかねない、だからこそ、この事件はなりふり構わず何としても有罪にしなくてはならなかったのである。
シンポジウムで羽賀研二は、自分の無実を証明するために証言台に立ち、逆に偽証罪で起訴された歯科医師のことに話がおよんだ時、思わす声を詰まらせ涙ながらに訴えた。
「詐欺や恐喝は断じて行っていないが、結果的に私がこうした立場に追い込まれたのは、一攫千金をねらった罰だと個人的には猛省している。でも、真実を証言してくれた徳永先生(歯科医師)まで罪人の立場においてしまったことは本当に申し訳ないと思っている。私のことはともかく、どうか皆さん徳永先生を救ってください!」
二審では、この徳永歯科医師の証言が偽証ではないことを示す別の証人も証言台に立ち、不動産会社差長が未公開株の元値をあらかじめ知っていたことを裏付ける証言を行ったが、なぜかこの証言が証拠採用され判決に反映されることはなかった。
証言の核心とは関係ない言葉尻を捉えて偽証罪で起訴
しかも、歯科医師が偽証罪に問われたのは、不動産会社社長が未公開株の元値を知っていたという証言の核心にかかわることではなく、羽賀研二との関係を「知人」と述べたことに対して、この医師が羽賀の結婚式などに出席していることなどを持ち出し、知人以上の関係にあったとし、「知人」と証言台で述べたことが偽証とされたのだ。
正に言葉尻を捉えられて無理矢理、偽証罪に仕立て上げられたとしか言いようがない。歯科医師の証言を補強する別の証人がいたにもかかわらず、そのことは顧みられることはなく、この言葉尻を捉えた起訴によって徳永歯科医師は偽証を行ったとされ、証言者としての信憑性を崩されたことにより、羽賀研二も無罪から一転有罪となってしまったのだ。
村木厚子さんの冤罪事件をめぐり、大きな社会的批判を浴びた大阪地検だが、その冤罪をつくりだす体質、やり口は今も何も変わっていない。
(カトラー Twitter: @katoler_genron )
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