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陸山会事件により露呈、裁判所も認めた特捜検察の犯罪

17日に東京地裁で開かれた陸山会事件をめぐる公判で、大善文男裁判長は、小沢一郎の元経理担当秘書、石川知裕衆議院議員の供述調書の全てを証拠として採用しないことを決定したことが、各方面で大きな波紋を呼んでいる。

全国紙やテレビメディアの多くは、この決定により検察官役の指定弁護士が小沢一郎の有罪を立証する大きな柱を失ったことで、今後小沢グループが勢いづくなど、政局に与える影響などとからめて報じているケースが目につく。しかし、今回の地裁の判断には、司法をめぐるもっと本質的な問題が提起されており、今後の展開次第では、抜本的な司法・検察改革につながる可能性さえ孕んでいる。

特捜の捜査手法に裁判所が違法性認定

そのことは、今回の証拠決定書の中で示された以下のような指摘をみれば、裁判所が特捜検察の捜査方法の在り方に相当な危機感を持ち、異例ともいえる踏み込んだ判断を行っていることが理解できる。

① 田代政弘検事の取り調べの違法性
石川元秘書を取り調べた田代検事の調書の信憑性については、石川氏が取り調べの模様をICリコーダーで録音していたことから、当日の供述内容と異なることが調書にされていることが明るみに出てしまった。
大善裁判長は、証拠決定書の中で、「田代が石川の逮捕段階での調書を基にして、一方的に作成したとうかがえる。違法不当なもので、許容できない」とその違法性を厳しく断じている。
公判での証言で田代検事は供述と捜査報告書の内容の食い違いについて質され「石川元秘書の著作に書かれていた内容と記憶が混同した」と苦しい言い訳を行ったが、このことについても大善裁判長は、「田代は『数日かけて作成し、記憶が混同した』と供述するが、にわかには信用できない」ときっぱりと切り捨てている。

② 取り調べ可視化の必要性
さらに証拠決定書は、「取り調べが真相解明への熱意から行われたとしても、検察官の職責を考えれば、違法性、不当性は減じられない」と続け、「しかも、田代は『録音されてると分かっていれば、このような取り調べはしなかった』と述べており、取り調べの可視化が広くされていれば、できない取り調べであったと自ら認めている」と、取り調べの可視化にまで言及して、田代検事の取り調べの違法性をあらためて糾弾している。

③ 特捜部の組織的な関与
また、今回の問題が田代検事個人の問題にとどまらず、特捜という組織全体の問題であることを次のように指摘している。
「特捜部の副部長が取り調べメモを石川の目前で破ったことや、石川の政策秘書が別の検事から厳しい取り調べを受けたことも認められる。石川に献金の受領や小沢の関与について供述を迫るため、田代とともに特捜部の複数の検事が圧力をかけていたことをうかがわせるもので、田代の取り調べは個人的なものではなく、組織的なものだったと思われる」

私も発起人の一人になっている「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」は、石川元秘書の録音記録から、田代検事の違法な取り調べの実態が明るみになった時点から動きだし、1月12日、最高検に対して、実際の供述と食い違う、虚偽の捜査報告書を作成した田代検事を虚偽有印公文書作成罪およびその行使罪、また、田代検事への違法な取り調べの指示や検察審査会の決定を意図的に誘導しようとした検察の一連の組織的犯罪行為について被告発人を「不詳」としつつ偽計業務妨害罪で告発した。

現在、告発状は受理されて捜査が進行中と考えられるが、今回の東京地裁の決定は、当会の告発に関わる今後の捜査のありかた、起訴の行方についても大きな影響を与えるだろう。

田代検事起訴に向け追いつめられた検察

すなわち、現段階で告発状は受理されているものの、検察が身内の検事および自らの組織を本当に訴追できるかどうかは、わからなかったが、別件の裁判を通じた判断とはいえ、東京地裁が田代検事の取り調べの違法性についてここまで明確に断じたことから、少なくとも田代検事を訴追せず済ますわけにはいかなくなった。
問題は、その動きが、検察組織全体の自浄作用・改革運動につながっていくかどうかだ。当会としては、今回の問題が田代検事個人の問題として矮小化されたり、トカゲの尻尾切りよろしく、田代だけを訴追して終わりという結末だけにはさせたくない。

この点では、
「田代の取り調べは個人的なものではなく、組織的なものだったと思われる」
と指摘している大善裁判長と我々も全く同じ問題意識を持ち合わせているといえよう。

田代政弘検事のことを取材すると、彼は、村木厚子さん事件で証拠のフロッピーデータを改竄した前田元検事と同様、特捜の中ではエース級の検事と目されていたという話が伝わってくる。田代は、特捜という組織の全体意志に忠実に業務を遂行していただけで、本来、問われるべきは、田代個人の違法行為だけではなく、特捜という組織それ自体の在り方そのものである。

政局がらみでしか伝えないメディアの問題

蛇足ながら、念のために言っておくと、私や私が発起人の一人となっている「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」は、小沢一郎氏の支持に回ったことは一度もない。小沢一郎氏に対する特捜部の捜査というものが、常軌を逸したもので、とても法治国家とはいえないような手法がまかり通っていることを糾弾してきただけだ。

そして、今回の東京地裁の判断は、図らずも我々の問題意識と共通したものであり、陸山会事件の立件の前提になっている特捜の捜査手法そのものの問題点を浮き彫りにさせた。

それと同じ意味で、今回の東京地裁の判断を、それによって「小沢が勝つか負けるか」という政局がらみの視点でしか報じていないメディアに対しても猛省を促したい。

全国紙の中でも読売新聞、朝日新聞などは、今回の証拠決定に関し、丁寧な問題整理を行って検察問題への目配りも適切におこなっていた。しかし、他方で「田代調書の証拠不採用で小沢の有罪は遠のいたが、政治家として説明責任を果たしていない」といったステロタイプなメッセージを相変わらず垂れ流すだけで、肝心の検察問題を全くスルーさせている思考停止状態のメディアが多いのも事実だ。

大善裁判長も言及している「取り調べの可視化」などが今後は議論の対象にならざるを得ないだろう。しかし、この問題は、裁判所が可否を判断する性質のものではなく、国民的な議論とコンセンサスが必要となるテーマだ。こうした問題を真正面から提起し、世論を形成していくことにこそマスメディアの真の役割があるのではないか。

(カトラー Twitter:  @katoler_genron ))

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